子どもが集中して取り組み、技能を高めるにはどうすればいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #18】
#10、#11、#12、#13、#14、#15、#16に紹介されている短なわ跳びや長なわ跳び(以下、なわ跳び)は、仲間と関わり合いながら学びが深められ、短い時間で運動量を確保できる価値の高い教材です。しかし、その運動量の多さから、45分間なわ跳びを取り組ませると、疲れて集中力が途切れてしまいます。またほとんどの運動教材の学習で、できるようになるためのポイントを理解しても、すぐにできる子どもは多くありません。できない時間が長く続くと、子どもたちの意欲は低減します。
そこで今回は、子どもの集中力を保ちつつ活動量を確保することで技能を高め、リズムよく授業運営ができる「1時間2教材の授業」について紹介します。
執筆/学校法人 明星学苑 明星小学校教諭
東京私立初等学校協会 体育研究部主任・風間啓介
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
Ⅰ.1時間2教材の授業とは
45分間の授業で1つの教材を扱う授業があります。これに対し、ここで紹介する1時間2教材の授業は、1回の授業で2つ以上の教材を組み合わせます。
例えば、我々は鉄棒運動と長なわ跳びの「連続跳び」。マット運動と短なわ跳びの「30秒跳び」、「あや跳び」「交差跳び」といった教材を組み合わせています。組み合わせる際には、気温が低くなければ、みんなで盛り上がれる運動や躍動的な運動を後にすると、「盛り上がった」「楽しかった」というイメージで終われます。ボール運動やリレー、長なわ跳びなどは、後半に扱うことをおすすめします。
45分の中ほどで教材を切り替えることが多いのですが、単元のはじめは、場の設定や運動の方法、ルールなどを説明するために、半分以上の時間を使うことがあります。
Ⅱ.1時間2教材のよさ
1.運動の頻度が高まり、運動感覚・技能が身に付く
1つの教材で、1回20分~25分程度授業を行うと、単元全体の構成が下表のようになります。
運動ができたり、上手になったりするためには、運動に触れる回数を多くする必要があります。表のように、1単元を5時間扱いとして計画すると、1時間1教材の場合は2週間で終わってしまいます。2週間の学習で子どもの運動技能が高まる可能性は高くありません。そうかといって、単元を大きくすると、他の領域・教材の時間にしわ寄せがいってしまいます。一方、1時間2教材で計画を立てると、同じ5時間で、単元の運動に4週間程度取り組むことになります。期間が長い分、単元の運動に接する機会が増えるため、運動の頻度が高まり、運動感覚・技能が身に付きやすくなります。
2.メインの感覚をもって全力で取り組める
1時間2教材で扱う2つの教材は、どちらもメインの教材として捉えています。「メイン」というのは、どちらかが補助教材ということではなく、子どもがどちらも十分に楽しめる挑戦的な課題のある教材という捉え方です。「〇〇の練習のための運動」という捉えは、できるだけ避けたいものです。
3.集中して取り組むことができる
なわ跳びや走る運動などは、全力で取り組むと疲れてしまい、45分集中し続けることはできません。また、鉄棒運動やマット運動などでは、長い時間取り組むことでマメができたり、膝裏が痛くなったり、目が回ってしまったりすることがあります。これも集中力を欠いてしまう原因となります。
1時間2教材の授業では、子どもの実態に合わせて、20分を目安に教材を切り替えることで授業にリズムが生まれ、集中力を保ちながら授業を進めることができます。
4.小学生の発達段階にぴったり
小学生は、新しいこと(課題、教材など)に興味を持ち、積極的に取り組もうとする特徴があります。この傾向は、低学年ほど顕著です。一方で、1つのことに集中できる時間が短いという特性もあります。ここで紹介する1時間2教材の授業は、こんな小学生の発達段階にはぴったりな授業スタイルです。
Ⅲ.1時間2教材を行うポイント
1.学習の場をシンプルにする
2.体育の学習班をつくる
3.素早く集合・移動ができるようにする
4.学習の方法を簡単にする
学習の場をシンプルにすることで、準備の時間が少なくなり活動量が増えます。また、年度のはじめに学習班をつくることも重要で、効率よく集合・整列することができます。素早い集合・移動の方法については、以前の記事をご覧ください。そして、学習の方法を簡単にすることで、子どもたちはすぐに取り組むことができます。学習の方法を簡単にするとは、以前に学習した方法を活用するということです。
上記の4つのポイントはこれまでの連載の中で紹介していますので、ご覧ください。
Ⅳ.最後に
これからブラッシュアップ体育授業で紹介をする運動教材は、どれもシンプルで1時間2教材として扱えるものばかりです。ぜひ、ここで紹介する運動教材を取り入れて、1時間2教材を試してみてください。教師自身の授業マネジメント能力が向上し、子どもの技能もぐんぐん伸びていくのを実感すること、間違いなしです。
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執筆
風間 啓介
学校法人明星学苑明星小学校 教諭
東京私立初等学校協会 体育研究部主任
1982年 新潟県上越市生まれ。体育授業を通して「できた」を味わい、「できた」ことをみんなで共感し合える授業づくりを目指し研鑽中。また、実践を広げるためにオンラインで研修会を行っている。「『資質・能力』を育成する体育科授業モデル」(共著)
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。
イラスト/佐藤道子