「クラス全体型」討論の勝敗を、AIと一緒にジャッジ!|「個」も「集団」も育つ 学級経営&授業アイデア #6

AIなどを取り入れたデジタルの可能性とアナログならではのよさを融合させながら、唯一無二の実践を蓄積する鈴木優太先生の連載。「個」も「集団」も育てる学級づくり、授業づくりのアイデアを提案します。今回は生成AIを、討論学習における「ジャッジ」のサポート役として活用してみよう、という提案です。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
全体型の討論学習にチャレンジ
「討論学習は難しそう」――そんなイメージが、カードゲームを用いた入り口と少人数型の討論学習でがらりと変わりました。連載第5回「討論学習の合言葉は、「入り口にカードゲーム、出口に生成AI」の記事に、たくさんの反響をいただきました。
少人数型の討論学習は、次々と対戦相手を変えながら取り組むことで「場数」を経験できます。短い時間で何度も立論・反論・ジャッジを経験することで、子供たちの中に討論の「型」が染みこんでいきます。
今回は、少人数型の討論学習の場数を踏んで鍛えた型の力をさらに広げる、「全体型の討論学習」について提案します。全体型のおもしろさは、一人一人の発言が「チームの発言」になっていくことです。仲間が調べた情報に自分の情報がつながり、「個」の学びが「集団」の学びへと編み上がっていくことが、全体型の醍醐味です。
出口に生成AI
教科で取り組んだ討論学習での学びは、生成AIの活用によって、より深いものになります。
具体的には、討論の最後に生成AIをもう1人のジャッジ役として加えるのです。そうすることによって、討論が「勝った」「負けた」だけで後味悪く終わることなく、「深い学び」へと変わっていきます。こうした出口(着地点)までの道のりが見えれば、討論学習はもう難しくありません。
全体型のルールは、少人数型の討論学習と大きくは変わりません。
【進め方】
①学習上の立場に分かれ、それぞれの立場が優れていると言える根拠となる情報を調べる。
②調べた情報を基に、自分の学習上の立場が、相手の立場よりも優れていることをアピール(立論と反論)する。
※これを交互に行う(人数や残り時間によって3回、4回と重ねる)
③ジャッジ役が、より優れていると感じた方を「勝ち」とジャッジ。その判断の決め手となった意見を発表する。
国語や道徳や社会は、討論学習と相性がとてもよい教科です。討論のテーマは、前回紹介したように生成AIと壁打ちすることによって抽出してもよいでしょう。
「全体型の討論学習」の実践例
調べ学習にもつながる、社会科での実践を紹介します。
5年社会科の討論「低い土地と高い土地、より工夫して暮らしているのはどっち?」にチャレンジしました。
子供たちは学習上の立場に分かれ、討論の日までに調べ学習を進めてきました(本来は低い土地の暮らしか、高い土地の暮らしか、どちらかを選択して学習する単元です。勤務校では低い土地のくらしが選択単元だったため、高い土地を担当するグループの方が学習時間は少なくやや不利だということも共有した上で、学習上の立場を選びました)。
討論では、お互いに中央を向き、向かい合って座ります(下イラスト参照)。この「向かい合う」座席が、教室の空気を討論モードへと切り替えるスイッチになります。

1回目は立論です。
低い土地チームが、1人につき1つずつ、輪番で意見を述べます。
(低い土地チーム)海津市にはパイプラインがあります。低い土地でも稲作ができるようにした、先人の知恵の結晶です。
(低い土地チーム)教科書27ページを見てください。大きな水害は1976年が最後と書いてあります。パイプラインだけでなく、排水機場も整えて、長年の悩みを解決したんです。
(低い土地チーム)水屋を知っていますか。母屋より高い石垣の上に建てられていて、万が一家が水につかっても、食べ物や水や布団が準備してあります。2人が話した水害を防ぐ工夫に、さらに命を守る備えの工夫までしているのが海津市です。
低い土地チームは赤色、高い土地チームは黄色などと色分けをしておき、教師は赤色のチョークで意見を番号とともに板書していきます。
1 パイプラインで稲作しやすい。
2 水害の悩みを解決した。
3 水屋で水害対策。
高い土地チームは、反論をメモしながら意見を聞きます。このときに、立論を全て書き写すのではなく、番号を書き、それに対応する反論を書きます。
次は黄色の高い土地チームに交代です。夏でも涼しい気候を生かした高原野菜づくり、キャベツの生産量日本一、スキー場などの観光……等々、黄色のチョークで書かれた意見が並んでいきます。

2回目は反論です。
赤色の低い土地チームが、1人1つずつ輪番で反論を述べます。
(低い土地チーム)5番に反論です。資料集13ページを見てください。キャベツの旬は6月~11月と書いてあります。それ以外の時期に作物を育てることは難しい土地だと言えます。
(低い土地チーム)6番に反論です。夏に涼しいのは分かります。しかし、冬はとてつもなく寒いのが高い土地です。雪が解けないと農業ができない、その点を工夫で乗り越えることはできていないのではないですか?
(低い土地チーム)私も6番に反論です。2人の意見をつなげると、つまり、高い土地は「作物を育てられる時期が限られている」ということですよね。その点、低い土地は、最初に話したパイプラインのおかげで、1年を通して安定して水を送り、稲作や野菜作りができます。私が調べた海津市の収穫カレンダーが、その証拠です。
教師は、反論が述べられた意見から矢印を伸ばし、立論時と同じ番号を書いてから、反論を赤色のチョークで書き加えます。板書がそのまま討論の実況中継になっていくようなイメージです。発言が色と番号で見える化されていますから、どの子も議論の流れを見失いません。
次は黄色の高い土地チームに交代して反論をします。
学級の人数や残り時間にもよりますが、この反論を交代しながら3回、4回と重ねます。
最後はいよいよジャッジタイムです。
ジャッジ役が、より優れていると感じたチームのカードを挙げます。赤カードは低い土地チーム、黄色カードは高い土地チームへの支持を示すカードです。

そしてジャッジは、勝敗の「決め手」になった発言を振り返って話します。この時間こそが、討論の学習効果を高める上で最も重要な時間です。勝敗の「決め手」になった発言に、学習の要点や、私たちが幸せに生きていくためのヒントが詰まっているからです。
私はこれを、討論学習の「納得解」と呼んでいます。
(ジャッジ役)赤の低い土地の勝ちです。決め手は、水屋には、万が一家が流されてしまっても食べ物や水や布団が準備してあることです。なぜなら、災害に備え、命を守るくらしの工夫が特に大切だと私は思ったからです。その点をアピールできた低い土地チームの方が、どちらかというと優勢だったと思います。
(ジャッジ役)黄色の高い土地の勝ちです。決め手は、「雪が溶けないと農業ができない」という反論への、さらなる反論です。私たちが食べて生きていくために農業は欠かせません。日本には四季があります。季節とうまく付き合いながら、高原野菜の生産量日本一になっている高い土地の工夫が見事でした。農業が難しい時期は、スキーなど、高い土地ならではの観光もアピールできました。
板書上では、ジャッジが決め手として選んだ意見と納得解を白色のチョークで囲んだり、書き足したりしていきます。赤と黄色の議論の中から、白い「納得解」が浮かび上がる板書の完成です。

