本気の遊び体験「水鉄砲合戦」を実現しよう|「個」も「集団」も育つ 学級経営&授業アイデア #4

AIなどを取り入れたデジタルの可能性とアナログならではのよさを融合させながら唯一無二の実践を続ける鈴木優太先生の連載です。学級経営や授業づくりについて、個々の子供も学級集団もどちらも育つような実践アイデアを、毎月1本紹介します。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
「本気の遊び体験」は、かけがえのない思い出になる!

とにかく水をかけ合う!
ルールを極限まで削ぎ落としたシンプルな「水鉄砲合戦」を学級や学年で楽しみましょう。安全さえ確保できていれば、複雑な作戦やルールに焦点化する必要はありません。
子供たちの心のストッパーを外すのは「本気の遊び体験」です。
クラブ活動や地域イベントでも役立つ、水鉄砲合戦を大成功に導く秘訣を伝授します。
「バケツ」-給水スポットの充実が鍵
学級経営において計り知れないプラスの効果をもたらすものは、季節限定の特別な体験です。
水鉄砲合戦とか、楽しそうかも。
そんなこと、やってもいいんですか!?
夏休み前後のお楽しみ会に向けた話合い活動。経験したことがないアイデアは、子供たちからはなかなか出てくるものではありません。ですから、時には教師が惜しまずアイデアの種蒔きをすることも大切です。
やりたいです。水鉄砲合戦!
どうやったらできそうだろうね?
管理職に相談しておくことのほかにも、この究極にシンプルな遊びの成否を分ける重要な要素が存在します。
水鉄砲合戦において、子供たちにとって最大のストレスは「水が切れること」です。水道に長蛇の列ができたり、限られた水の奪い合いでトラブルが起きたりしては、せっかくの解放感が台無しです。
給水スポットの充実
特別な機材を購入する必要はありません。最大限に駆使するのは「学校にある物」です。
清掃用具入れにある「バケツ」を学校中からかき集めます。子供たちは喜んで校内を駆け回ります。自分たちで交渉し、必要な道具を集めてくる。このプロセスが、もうすでにイベントの始まりです。
2組さん、バケツを貸してください!
3つも借りられた! そういえば倉庫にたくさんあったような……行ってみようか。
水鉄砲合戦当日は、集めた数十個のバケツに水をたっぷりと張り、グラウンドのあちこちに配置しておきます。これだけで、立派な給水スポットの完成です。

配置するバケツの数は、「ちょっと多すぎるかな?」と感じるくらい、多ければ多いほうが充実します。子供たちが水切れを心配せず、思いっきり打ち合える環境が重要です。

バケツの配置や水汲み、そして終わった後の片付けに至るまで、すべて子供たちの手で行うことができます。「ここは私がやるよ!」「僕たちに任せて!」と、自発的に動く姿が見られるようになるのも、シンプルな目的を共有しているからです。
・バケツを集める
・業間や昼休みに準備をして、3時間目か5時間目に実施
・水鉄砲は持参
はじめての水鉄砲合戦は、バケツだけでも十分です。子供たちは間違いなく大喜びです。バケツの数が10個ほどでも、数分に1回バケツの水補充タイムを設ければ、楽しめます。「物足りないな」と感じれば、この後に示すような工夫が可能です。
「ホースリール」-補給基地が安心感を生む
さらに、あると大活躍するのが「ホースリール」です。花壇の水やりなどに使う、あの巻き取り式のホースのことです。

屋外水道からホースリールを限界まで伸ばし、グラウンドまで水を届けます。学校にある大きなポリバケツやたらいがあれば、ここに水をたっぷりと溜めておきましょう。

こうすることで、水鉄砲合戦における最大の補給基地になります。
よし、今のうちに満タンにしておこう!
1回、打つのはなしね!
ホースリールの周りでは、一時休戦して水を補給する子供たちの姿が見られます。このちょっとしたオアシスのような空間も、水鉄砲合戦の醍醐味の1つです。
事前に管理職や用務員さんに「水鉄砲合戦をやるので、ホースリールを使わせてください」と一声かけておくと、気持ちよく協力してもらえます。「子供たちのために」という思いは、学校で働く大人みんなの共通言語です。
「一輪車」-機動型給水スポットに
しかし、ホースリールにも限界があります。グラウンドの端のほうまでは、どうしてもホースが届きません。そこで登場するのが、「一輪車」です。

ポリバケツやたらいを一輪車に載せ、その状態で水を溜めます。これで、グラウンドのどこへでも移動できる機動型給水スポットの完成です。
前線の水が足りない!一輪車部隊、出動!
子供たちが数人がかりで、水がこぼれないようにバランスを取りながら一輪車を押して走る姿は、まるで映画のワンシーンのようです。ホースが届かない場所も、このアイデアでばっちりカバーできます。

実は、これらの工夫は、子供たちとの話合い活動を通して生まれてきたアイデアです。
どうしたら水切れを起こさず、思いっきり遊べるかな?
このように子供たちに問いかけてみましょう。子供たちが動き出します。
水鉄砲は家庭から持ち寄ろう
水鉄砲は、基本的には家庭から各自で持参します。100円ショップなどで手に入る水鉄砲を持っている子もいますが、そうでない家庭もあります。ですから、手作り水鉄砲も推奨します。例えば、飲み終わったペットボトルのキャップに穴を開けてあげれば、立派な水鉄砲になります。 使い終わった洗剤の容器を綺麗に洗ったものなど、廃材を再利用しましょう。
ペットボトルは一気に水が出るから、接近戦に強いよ。
マヨネーズの容器、意外と水圧強くて飛ぶんだぜ!
自分たちで作った道具で楽しむのも一興です。あえて、手作りの水鉄砲限定で実施したこともあるほどです。

子供たちが「家にあるどの容器が一番飛ぶか」を真剣に検証する姿は、立派なものづくりの学びそのものでした。
My竹水鉄砲プロジェクト
手作りの水鉄砲と言えば、私の教員生活の中で、決して忘れられない思い出があります。最初の1回でここまでやる必要は決してありませんが、壮大なプロジェクトとして実施することもできます。
それは、地域の竹林から竹を切り出し、1人1本の「My竹水鉄砲」を手作りしたことです。

きっかけは、「水鉄砲合戦を、手作り水鉄砲でやりたい!」という子供の声でした。管理職に相談したところ、とてもおもしろがってくれました。地域の方々にも協力を仰ぎ、竹の切り出しから加工までを体験する一大プロジェクトへと発展していったのです。地域の方々にとっても、「学校の子供たちのために自分の知恵を活かせる」というのは大きな喜びです。「うちの裏庭の竹を使っていいよ」「竹細工も教えに行くよ」と、温かい言葉が次々と返ってきました。
ノコギリはこうやって、力を抜いて引かないと固い竹は切れないな。
隙間ができないように、布の巻き方を工夫しないと水がうまく飛ばないぞ。
子供たちは真剣な表情で竹と格闘しました。青々とした竹の匂い。ノコギリの音。指先に伝わる竹の硬さ。そして、完成したときの歓声。地域の方々や、当時の同僚の温かい眼差しと協力があってこそ実現した、本当に贅沢な時間でした。学年で実践した次年度からは、クラブ活動でも行いました。

自分たちの手で苦労して作り上げた道具だからこそ、そこから得られる喜びもひとしおです。手作りの水鉄砲で繋がり、心から笑い合う。それは、学校という空間だからこそ生み出せる、かけがえのない貴重な体験かもしれません。成人して再会した当時の教え子たちと、このときの思い出話に花が咲きました。まさに、大人になっても忘れられない思い出だったのです。全身で水を浴び、あの日のグラウンドに響き渡った笑い声。水しぶき越しに見た子供たちの無邪気な笑顔は、私の心にも深く焼き付いています。
子供の「やってみたい」という声を、そのまま管理職や地域の方々に相談してみる。まずは、そこからです。対話が始まり、思いもよらない協働が生まれていきます。子供の言葉ほど、大人を動かす力をもつものはありません。
準備と片付けに見る集団の成熟
楽しい時間はあっという間に過ぎ去ります。ずぶ濡れになりながらも、子供たちの表情は達成感に満ち溢れています。しかし、実践はここで終わりではありません。
さあ、みんなで片付けよう!
子供たちは一斉に動き出します。自分たちでグラウンド中に配置したバケツを回収し、水を捨てて綺麗に洗い、乾かして元の場所に戻します。
準備を自分たちで行ったから、片付けも自分たちの責任で主体的に行える
子供たちが連携して動く姿を見ると、この単純な水遊びがいかに集団を成長させるかを実感します。
学校中から集めたバケツに水を汲んではせっせと運ぶ姿。
ホースリールの前で順番を譲り合う姿。
一輪車を一緒に押す姿。
手作りの水鉄砲の不具合を直し合う姿。
言葉の壁や、普段の教室での立ち位置を超えて、ただ純粋に「共に楽しむ」という目的のもとで結び付くゆるやかな関係性。まさに、多様性を包摂する温かい集団の基盤だと私は考えます。
水鉄砲合戦という圧倒的な体験を共有したクラスは、翌日からの日常風景が少しだけ変わって見えます。今まであまり話さなかった子同士が笑い合っていたり、助け合いが自然に生まれたりするのです。遊びを通して得られた一体感は、この後以降の日々の学習活動や行事において、大きな力となってクラスを支えてくれます。
失敗しないための3つのチェックポイント
「やってみたい」と心が動いた先生のために、最後に失敗しないための3つのチェックポイントをお伝えします。これさえ押さえておけば、初めての挑戦でも、水鉄砲合戦は驚くほどスムーズに、そして安全に運営できます。
①管理職・学年への「事前相談」
水鉄砲合戦は、とても目立つ活動です。「何のためにやるのか」「どのようにやるのか」「保護者にはどう伝えるのか」を整理した上で、必ず事前に管理職と学年に相談しましょう。「学校という場所で、子供時代にしかできない経験を子供たちと!」と思いを伝えると、先生方は知恵を貸してくれるはずです。「学年みんなでやろう!」と、ベテランの先生も若い先生も、みんなで童心にかえるのも、この仕事の醍醐味です。
②「目をねらわない」は共有する
ルールは極限までシンプルに、と書きました。それでも、「目をねらわない」ことは共有します。眼鏡をかけている子も、水が苦手な子もいます。「目に水が入ると痛いし、危ない」ということだけは、全員で確認してから始めます。ここがブレなければ、他はどれだけ自由でも大丈夫です。目に水が入らないように、ゴーグルを着用してもかまいません。
③「セーフティゾーン」をつくっておく
水をかけられたくないタイミングは、誰にでもあります。「ここに来ている人にはかけない」というセーフティゾーンを、グラウンドの片隅に決めておくのもよいでしょう。逃げ場のつくり方は、場所だけではありません。かっぱ着用OKというルールも、立派な逃げ場の1つです。子供たちとの「やりたい!」という気持ちと、話合い活動を大切にしてください。

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア56』『教室ギア55』(共に東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
参照/鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)、鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、鈴木優太『クラス全員が「聞ける」「話せる」! ペア活動図鑑100』(学陽書房)、多賀一郎監修・鈴木優太編・チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク』(明治図書出版)、鈴木優太編・チーム・ロケットスタート著『小学6年の学級づくり&授業づくり 12か月の仕事術』(明治図書出版)
【鈴木優太先生 連載】
・子供たちが前のめりになる学級経営&授業アイデア(全12回)
・子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア(全12回)
・自治的な学級をつくる12か月のアイデア(全12回)
・子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
・どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)
【鈴木優太先生 ご著書】
クラス全員が「聞ける」「話せる」! ペア活動図鑑100(学陽書房)
教室ギア56(東洋館出版社)
教室ギア55(東洋館出版社)
「日常アレンジ」大全(明治図書出版)
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(明治図書出版)
小学6年の学級づくり&授業づくり 12か月の仕事術(明治図書出版)

