討論学習の合言葉は、「入り口にカードゲーム、出口に生成AI」!|「個」も「集団」も育つ 学級経営&授業アイデア #5

AIなどを取り入れたデジタルの可能性とアナログならではのよさを融合させながら、唯一無二の実践を蓄積し続けている鈴木優太先生の連載です。学級経営や授業づくりについて、個々の子供も学級集団もどちらも育つ実践アイデアを、毎月1本紹介します。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
討論学習にチャレンジ
「討論学習って、そもそもどうやったらいいの?」――難しそうというイメージから、実は一度も実践したことがないという先生が少なくないのではないでしょうか。
討論学習をする際に、
入り口にカードゲーム。出口に生成AI
を活用してみましょう。
入り口は、カードゲームで遊ぶだけ。子供たちはみるみる討論の面白さを味わっていきます。
勝ち負けや相手を論破することを超えて、幸せに生きていくための価値に気付くことができるのが討論学習の魅力です。重くて硬い討論のイメージが、驚くほど軽くなるはずです。
さあ、一緒に新しい扉を開きましょう。
カードゲーム「ペチャリブレ」
私のおすすめのカードゲームを1つご紹介します。
個性を武器にペチャクチャ戦う言葉のプロレス「ペチャリブレ」です。
「ペチャリブレ 新装版」
ゲームデザイン:秋口ぎぐる(川上亮) イラスト:本田佳世/幻冬舎 価格:1,760円(税込)

【ルール】
①それぞれが、キャラクターカード1枚、特徴カード2枚を引く。
②自分のキャラクターが、相手のキャラクターよりも強い理由をアピールする。
※特徴カードも使う。20秒~30秒程度で、交互に2回行う。
③対戦者以外が、より強いと感じた方をジャッジ。決め手になった発言を話す。
こちらから、ルール解説動画を視聴できます。動画を視聴したら、実際にやってみることがルールを理解する最短ルートです。

まず、1セットが教室にあれば、次のように全員で楽しむこともできます。
4人班で取り組みます。班の中で、プレイヤー2人とジャッジ役2人に分かれます。
プレイヤーは先行と後攻に分かれます。
教師が代表して、先行のキャラクターカード1枚、特徴カード2枚を引きます。次に後攻のカードを引きます。導入では教師が進行役を務めると、教科学習で全員で討論に取り組む際のイメージを、子供も教師もつかむことができます。以下のように進めます。
それでは先行1回目です。「私の方が強いです。」どうぞ!
私の方が強いです。私はスパイです。しかも、ドリルを持っています。相手が気付かない間に、このドリルで密かに落とし穴を掘って、相手を落とします。
(タイマーを見て)時間です。後攻1回目です。「私の方が強いです。」どうぞ!
私の方が強いです。私はおかんです。ただのおかんではありません。実は…この(先攻のドリルを持った)スパイのおかんなのです! 誰でも、実の母親にはかないませんよね? しかも、ヘリコプターに乗ったおかんなので、どこにでも駆けつけます。
時間です。先行2回目です。「いえいえ、私の方が強いです。」どうぞ!
いえいえ、私の方が強いです。スパイは特殊訓練を受けているので、実の母親も怖くありません。見てください、巨大化できます。ドリルで空けた落とし穴に落として、踏みつぶして、圧勝です!
時間です。後攻2回目です。「いえいえ、私の方が強いです。」どうぞ!
いえいえ、私の方が強いです。おかんはヘリコプターに乗っているので、落とし穴には落ちません。さらに、なんと分身の術を使えます。ヘリで駆けつけ、分身の術を使ったおかんがスパイが子供だった頃の恥ずかしい話を一斉に浴びせます。スパイはそんな攻撃に対する訓練は受けたことがありませんよね? さすがにかないません! おかんこそ、最強です!
そこまで。ジャッジ役はどちらがより強いと感じたか判定します。決め手も伝えます。
おかんです。決め手は、「恥ずかしい話を分身しながら大量に言うこと」です。
私の決め手は、実はスパイの母親だった設定。おかんです。
ありがとうございました。それではプレイヤーとジャッジを交代します。

限られた時間でジャッジ役に納得してもらうために、理由づけ・例え・表現の工夫が自然と鍛えられます。楽しく学べ、討論学習の入り口として最適なカードゲームです。
あっという間に子供たちはやり方を覚え、自分たちで進められるようになります。雨の日の休み時間にも大人気で、1セットを2グループ、3グループに分けて取り組む姿も見られるほどです。

少人数の型討論学習にチャレンジ
「ペチャリブレ」のキャラクターカードを「学習上の立場」に、特徴カードを「調べた情報」に置き換えます。すると、「ペチャリブレ」とほぼ同じルールで、教科学習における討論に取り組むことができてしまいます。調べ学習にもつながる社会科での活用例を見てみましょう。

カードサイズに裁断した厚紙に調べた情報を書きこみ、それらを集めると、オリジナルカードゲームのような趣で、楽しく討論を行うことができます。

調べたことをまとめたノートをそのまま使えば、もう本格的な討論学習です。

4人班で取り組み、班の中でプレイヤー2人とジャッジ役2人に分かれます。調べた情報を駆使し、相手よりも優れている理由を20秒~30秒程度で、交互に2回聞き合います。
少人数での討論学習
短い時間で決着するので、メンバーを次々と変えて、場数を経験できます。以下のようなワークシートを準備すると、「たくさんの人と戦えた!」と満足感が増大します。

討論のテーマはAIに生成させ、そこから選ぼう
社会科や国語科、道徳科などは、討論学習と非常に相性がよい教科です。しかし、「いざ実践しようと思っても、どのようなテーマが討論にふさわしいのか迷ってしまう」と、ここで立ち止まってしまう先生方が少なくありません。
そこで活躍するのが、生成AIです。アイデア出しは生成AIの十八番です。
【プロンプト例】
小学3年生社会科「工場の仕事」の討論テーマを10生成してください。
このような簡潔な指示で、討論のテーマ案を簡単に出力することができます。しかし、AIの回答が一般的すぎて、実際の授業では使いにくいと感じることもあるでしょう。
そこで、確実に「目の前の教科書の学習内容」と結び付いたアイデアを得るための、ちょっとした工夫があります。
年間指導計画作成資料をアップロード
教科書会社のWebサイトからダウンロードできる年間指導計画(PDF形式など)を、プロンプトと一緒に読み込ませるのです。これだけで、AIが教科書の文脈をしっかりと理解するため、出力結果の精度が著しく向上します。

【生成されたテーマ案(明太子工場の仕事について)】
1. 機械と手作業、どっちが大切?
テーマ:工場の仕事は、これから全部機械におまかせしたほうがいい? それとも、手作業も残したほうがいい?
ねらい:工場では「人の手と機械を有効に使って」仕事をしていることに気づき、それぞれのよさを考える。
2.明太子の材料はどこから持ってくる?
テーマ:明太子の材料は、外国(ロシアやアメリカなど)から買うのと、日本で獲れたものを使うの、どちらがいいと思う?
ねらい:明太子の原料の大部分が「ロシアとアメリカで獲れたもの」であることから、外国との関わりや値段、手に入りやすさなどについて考える。
3.たくさん作る ? 安全に作る?
テーマ:工場で働く人にとって、「速く、たくさん作ること」と「安全で清潔に(衛生に気をつけて)作ること」は、どちらがより大切だと思う?
ねらい:「温度管理や衛生面に気をつけながら仕事をしている」ことを振り返り、消費者に安全なものを届けるための工夫について話し合う。
4.どこで売るのがいい?
テーマ:「工場で作った名物は、自分たちのまち(県内)の店だけで売るのがいい? それとも、インターネットなどで全国に売るのがいい?
ねらい:商品が「県内を中心とした販売店で売られている」ことや「電話やアプリで注文されたものは、宅配便で全国へ送られる」ことから、地域のよさを広めることや売上向上の方法について考える。
5.新しい味と昔からの味
テーマ:たくさんの人に買ってもらうには、「昔からずっと同じ味」を作り続けることと、「新しい味(商品)」をどんどん作ること、どちらが大切だと思う?
ねらい:お客さんのために「新しい商品を作ってきた」ことに着目し、消費者の願いに応える工夫について考える。
6.工場見学のひみつ
テーマ:みんなが工場見学に行くとしたら、「作っているところをガラスごしに見る」のと「実際に工場の中に入って手伝ってみる』の、どちらがいい? また、工場の人にとってはどうだろう?
ねらい:手を35秒かけて洗うなど「衛生面に気をつけ」ていることを踏まえ、食品を扱う工場の厳しさや安全管理について、消費者の立場から考える。
7.まちの名物の役割
テーマ:明太子のような「まちの名物」があることは、そのまちに住んでいる人にとって、どんなよいことがあると思う?
ねらい:明太子を通して「福岡市のよさをたくさんの人に広めようとしている」ことや、明太子関連サ産業が「地域の人々の生活と密接な関わりがある」ことについて考える。
8.働く人の「思い」
テーマ:工場で働く人が毎日同じ作業を繰り返すときに、一番心の中で思っている(気をつけている)ことは何だろう?
ねらい: 見学などで学んだ「愛情をこめて明太子を作っていた」ことを振り返り、働く人のやりがいや責任感に想像を膨らませる。
9.キャッチコピー会議
テーマ:工場で作ったものをたくさんの人に食べてもらうために、一番よい「キャッチコピー」はどれだろう?(クラスで出た案から選ぶ)
ねらい:宣伝シールを作る活動を発展させ、どの言葉がお客さんの心を一番つかむか、理由とともに話し合う。
10.未来の工場
テーマ:ずっと先の未来、工場で働く人は、人間からロボットだけになると思う? それは良いことだと思う?
ねらい: 工場で「少ない人数でもつくれるように、新しい機械を使い始めた」ことから、これからの産業の発展や働き方の変化について自由に考えを巡らせる。
さらに、出力された討論テーマの中で「これは面白い!」と思ったものを具体例としてプロンプトに盛り込むと、より自分好みの、あるいは目の前の子供たちの実態に合った回答を得ることができます。
あとは、出力されたたくさんの候補の中から、目の前の子供たちの実態に合ったものを1つ選ぶだけです。生成AIは、アイデアをいくつでも嫌な顔一つせずに出してくれますし、納得がいくまで何度でもやり直すことが可能です。
テーマをひねり出す苦労はAIに任せ、私たち教師は、提案されたアイデアの中から子供たちの顔を思い浮かべて「選ぶ」だけ。これなら、明日の授業からすぐにでも討論学習に挑戦できる気がしませんか。
実は、ここでお伝えしたAI活用は、まだまだ入り口に過ぎません。
出口に生成AI
教科学習での討論がしっかりと着地できるように、生成AIが力強くサポートしてくれる――そんな心強い活用法については、次回の連載で詳しくお伝えします。
難しそうと思っていた討論学習も、カードゲームを入り口にすることで、こんなにも手軽に取り組めるのです。「これならやれそう!」そう感じていただけたなら、もう大丈夫です。
さあ、一緒に、まずはカードゲームからチャレンジしてみましょう!

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア56』『教室ギア55』(共に東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
参照/鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)、鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、鈴木優太『クラス全員が「聞ける」「話せる」! ペア活動図鑑100』(学陽書房)、多賀一郎監修・鈴木優太編・チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク』(明治図書出版)、鈴木優太編・チーム・ロケットスタート著『小学6年の学級づくり&授業づくり 12か月の仕事術』(明治図書出版)
【鈴木優太先生 連載】
・子供たちが前のめりになる学級経営&授業アイデア(全12回)
・子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア(全12回)
・自治的な学級をつくる12か月のアイデア(全12回)
・子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
・どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)
【鈴木優太先生 ご著書】
クラス全員が「聞ける」「話せる」! ペア活動図鑑100(学陽書房)
教室ギア56(東洋館出版社)
教室ギア55(東洋館出版社)
「日常アレンジ」大全(明治図書出版)
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(明治図書出版)
小学6年の学級づくり&授業づくり 12か月の仕事術(明治図書出版)
