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セミの抜け殻から見える地域の特性|自然編⑥【地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種】

連載
地域と生活の科学~見つけよう!身の回りの探究学習の種~

四天王寺大学教育学部准教授

仲野 純章
地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種 バナー
イラスト/坂齊諒一

夏の盛りになると、公園や街路樹、学校の校庭などからセミの鳴き声が響き渡ります。しかし、鳴き声は聞こえても、成虫は高い木の上にいることが多く、その姿をじっくり観察するのは意外と難しいものです。また、鳴くのはオスだけであり、メスは鳴きません。そのため、「よく鳴いているからセミがたくさんいる」とは限らず、鳴き声だけで地域のセミの様子を正確に知ることは容易ではありません。その一方で、セミが羽化した後に残す「抜け殻」は、その場にとどまり、比較的簡単に見つけることができます。実は、この小さな抜け殻には、その地域の自然環境を読み解くためのさまざまな情報が詰まっています。今回は、セミの抜け殻から見えてくる地域の特性について考えてみたいと思います。

執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章

「動かない」資料である抜け殻

私たちの身近には、さまざまな種類のセミが生息しています。

たとえば、茶色い翅(はね)をもつアブラゼミ(図1)をはじめ、やや小型で高い声で鳴くニイニイゼミ、夏の終わり頃に姿を見せるツクツクボウシなどが代表的です。また、近年は、大型のクマゼミ(図2)も非常に多く見られるようになってきました。

成虫は自由に飛び回るため、ある場所で見つけたセミが、その場所で育ったとは限りません。また、時間帯や天候によって活動の様子も変化します。そのため、成虫だけを観察して地域に生息する種類や個体数を把握することは、それほど簡単ではありません。

一方、抜け殻は羽化した場所にそのまま残ります(しかも、多くは手の届く高さにあるため、子どもたちでも安全に観察することができます)。つまり、抜け殻は、その場所で実際に羽化したことを示す、いわば「動かない資料」です。

抜け殻を調べることで、「この場所ではどのような種類のセミが羽化しているのか」「種類ごとの割合はどうなっているのか」といったことを知ることができます。さらに、複数の場所で調査を行えば、学校林と公園、市街地と里山など、環境の違いによるセミの種類や個体数の構成(セミ相)の違いも見えてくるかもしれません。

アブラゼミ
図1
クマゼミ
図2

抜け殻から分かること

セミの幼虫は、種類によって異なりますが、数年間を地中で過ごします。そして羽化の時期になると地面から出てきて、近くの木や草、場合によっては建物の構造物によじ登り、羽化します。

梅雨明け頃になると、木の根元付近の地面に小さな穴が見られることがあります(図3)。これは幼虫が地中から出てきた跡です。そして、その周辺を探してみると、抜け殻が見つかることがよくあります(図4)。運が良ければ、まだ羽化前の幼虫に出会えることもあるでしょう(図5)。

木の根元付近の地面の小さな穴
図3
木の根元付近の地面の小さな穴
セミの抜け殻
図4
羽化前のセミの幼虫
図5

当然ながら、セミの種類ごとに、抜け殻にも特徴があります。たとえば、アブラゼミは比較的大型で、触角の一部が長いことなどが特徴です(図6右)。クマゼミはさらに大型でがっしりとした印象があります(図6左)。一方、ニイニイゼミは小型で、抜け殻には土が付着していることが多く見られます(図7)。

アブラゼミとクマゼミの抜け殻
図6
ニイニイゼミの抜け殻
図7

抜け殻からはオスとメスを見分けることもできます。抜け殻を裏返して腹部の先端を観察すると、メスでは産卵管の名残があるため、お尻の先端に2つの突起が見られます。一方、オスでは突起が1つだけです。この違いを確かめることで、比較的簡単にオスとメスを見分けることができます。

このように、抜け殻を調べるだけでも、「どの種類がどれくらいいるのか」「オスとメスの割合はどうか」といった情報を得ることができます。

各地で行われている「抜け殻調査」

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