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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#32 「バターのいとこ」から考える

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、栃木県宇都宮市の松元光昭先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/松元光昭(栃木県公立中学校教諭)

はじめに

栃木県で中学校の教員をしています、松元光昭と申します。「地域の魅力」を入口にして、生徒が社会との関わりを考える道徳授業に関心をもち、これまでもいくつか実践を重ねてきました。

今回取り上げたのは、栃木県那須発のお菓子「バターのいとこ」です。地域の素材、人、仕事をつなぎながら、持続可能な地域づくりを目指して生まれた商品です。「食べること」が好きな私自身にとっても、商品の向こう側にある人々の思いや地域の課題に出会い、生徒とともに考えてみたい教材でした。

本時では、「バターのいとこ」を開発した宮本吾一さんたちの生き方を知ることを通して、持続可能なまちづくりについて考え、人とのつながりを大切にして生きていこうとする態度を育てることを目標としました。

「社会参画」という言葉は、生徒にとって大きく、抽象的に響くことがあります。社会をよりよくすることや地域に関わることを、特別な活動に参加することだと受け取る生徒も少なくありません。そこで今回は、身近な「お菓子」を入口にしました。一つの商品を通して、地域の人、自然、仕事、そして消費者の選択がどのようにつながっているのかを考えることをねらいとしました。

授業の実際

対象:中学2年
主題:「もったいないをできるだけ減らしたい! 人気スイーツから考える人と地域のつながり」
内容項目:C12「社会参画、公共の精神」 

導入では、実際の商品パッケージの空き箱を、2、3人に一つずつ配りました。食べたことがある生徒は数人でしたが、名前を知っている生徒は多く、「あ、知ってる」「おいしいやつ」といった声も聞かれました。

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まず、「この商品がたくさん売れている理由は何だろう」と問いかけました。
生徒たちは箱を手に取り、次のような特徴を見つけていきました。

「デザインがかわいい」

「おしゃれで、高級感がある」

「英語と数字が書いてある」

「箱が硬くて、さわり心地がよい」

「色や種類がいろいろある」

「名前が個性的で、気になる」

「iPhoneの箱みたいでシンプル」

「那須限定、季節限定という言葉に惹かれる」

「お土産にちょうどよい大きさだと思う」

中身を見せず、空き箱だけを渡したことで、生徒たちは素材、手触り、デザイン、言葉の選び方に自然と目を向けました。「食べていいんですか」と期待していた生徒も、空き箱だと気付くと笑いながら、近くの生徒と意見を交わしていました。

もちろん、「おいしいから」という理由も考えられます。しかし、世の中にはおいしいお菓子がたくさんあります。その中で、なぜ「バターのいとこ」は多くの人に選ばれているのでしょうか。見た目や味だけでは説明しきれない魅力があるのではないかと考えさせたかったのです。

次に、「食べたことがある人はまた食べたいですか。食べたことがない人は食べてみたいですか」と尋ねました。乳製品のアレルギーがあるため食べられないという生徒を除き、多くの生徒が、「食べてみたい」「また食べたい」と答えました。「箱を見ていたら気になって食べたくなった」「おいしかったからまた食べたい」という意見が出た一方で、「値段による」という声もありました。

そこで、「1箱3枚入りで、いくらだと思いますかと予想させました。500円、600円、800円、900円、1400円など、さまざまな金額が挙がりました。授業で扱った商品の価格が税込972円であることを伝えると、教室に驚きの声が広がりました。

「1箱3枚入り972円をどう思いますか。高いですか、安いですか、それとも妥当ですか」

こう尋ねると、大多数の生徒が「高い」と答えました。
「薄いし、3枚でこの値段は高い」「その値段なら別のお菓子を探したい」という率直な意見が聞かれました。一方で、「おいしいなら妥当だと思う」「牧場から直送で新鮮だから高いのかな」と、価格の背景を想像する生徒もいました。
「高い」と感じる判断も大切にしました。もちろん、全員が「買いたい」と考えることを求めるわけではありません。背景を知った上で、自分なりの理由をもって選択できることを大切にしました。 

商品の向こう側にある課題とつながり

ここで、「バターのいとこ」が生まれた背景を紹介しました。

牛乳からバターをつくる過程では、多くの無脂肪乳(スキムミルク)が生まれます。パッケージには、バター4%、バターミルク6%、スキムミルク90%という数字がデザインとして示されています。バターになる部分はごくわずかで、大量に生じる無脂肪乳をどのように活用するかが、課題の一つでした。 

森林ノ牧場の山川将弘さんから相談を受けた宮本さんは、このスキムミルクを活用できれば、バター生産を安定させるとともに、「もったいない」を減らせるのではないかと考えました。そして、そのスキムミルクを使ったお菓子として開発されたのが「バターのいとこ」です。


説明を聞いた生徒の一人が、「箱にも数字が書いてある」と発言しました。生徒たちは改めて箱を眺め、先ほどは単に「おしゃれ」と感じていたデザインの中にも、商品の物語が隠されていることに気付き始めました。

「話を聞いた今、皆さんなら買いたいと思いますか」と再度尋ねると、「買いたい」とする生徒が増えました。意見交換している姿から「高い。でも食べてみたい」「そのお金が、捨てられるかもしれなかったものを生かすことにつながるなら、意味があるかもしれない」といった感覚が生まれてきたように感じました。

商品の背景を知ることは、価格が高いことを無条件に正当化することではありません。むしろ、私たちが日頃、値段や見た目だけで商品を判断していることに目を向ける機会になります。一つの商品の背景には、原材料を育てる人、商品を考える人、製造する人、販売する人など、多くの人の仕事や思いがあります。生徒たちは、商品を「買う側」だけではなく、それを生み出す人々の側からも見つめるようになっていきました。

宮本さんたちの生き方から考える

後半では、宮本さんの歩みや、地域の人々がそれぞれの売り物を持ち寄るマルシェでの活動について紹介しました。

宮本さんは、那須に移住してすぐに順調だったわけではありません。コーヒー屋台やハンバーガー専門店など、試行錯誤を重ねながら、地域の人々と出会い、少しずつ活動を形にしてきました。地域の生産者と出会う場として始めたマルシェは、地域の人々が顔を合わせ、互いの思いや困り感を知る場にもなりました。山川さんとの出会いも、そうした地域での関わりの積み重ねから生まれたのです。 

宮本さんにとって「バターのいとこ」は、商品を売ること自体が最終目標ではありません。地域にある資源、人、仕事をつなぎ直し、持続可能な地域をつくるための一つの手段です。GOOD NEWSは、観光・農業・福祉を結び、多様な雇用の創出にも取り組んでいます。

資料を読んだ生徒からは、次のような声が聞かれました。

「行動力がすごい」

「仕事なのに、楽しそう」

「いろいろ工夫している」

「つくっている人の想いが伝わってくる」

「持続可能な街づくりに共感する」

生徒たちは、商品の背景を知るにつれ、「それだけの価値があるのではないか」と捉え直していきました。生産者の困り感を地域の魅力に変えようとする人々の姿に触れたからだと考えます。 

宮本さんたちが行っているのは、慈善事業ではありません。企業として商品をつくり、販売し、利益を上げる経済活動です。だからこそ、地域の課題をただ「気の毒な問題」として扱うのではなく、仕事や商品として継続できる形にしている点に大きな意味があります。

経済活動の中で、地域の雇用に向き合い、地域の素材や人を生かし、互いに利益を生み出していく。
そこには、単なる利害関係を越えた信頼があるように感じます。おいしさやデザインに加え、活動への共感も、商品を選ぶ理由になるのではないでしょうか。商品の背景にある物語もSNSなどを通じて広がり、「共感の連鎖」を生んでいるのかもしれません。 

生徒の振り返り

授業の最後には、「宮本さんたちの取組の、どんなところがよいと思いますか。また、どう感じますか」と問いかけました。

生徒からは、次のような振り返りがありました。

「地域で関わる人のみんなが楽しいと感じる平和な街づくりだと思う」

「チャレンジに失敗してもポジティブでい続けることが大切だと思いました」

「自然環境に気をつけつつ、自分が楽しいと思うことをやっていきたい」

「宮本さんの、『他の人が喜ぶことが自分の幸せ』という言葉が心に残った」

これらの言葉から、生徒たちが「社会参画」を、自分たちの生活や生き方と結び付けて捉え始めていることがうかがえました。

どこに、どのようにつなげるか

(1)家庭科「消費」の分野

商品の購入とその価値について考えることは、生きていくうえで欠かせない行動です。価格、品質、デザインだけでなく、誰がどのように生産し、どのような課題の解決を目指している商品なのかを知ることは、消費者としての学びにつながります。

「商品の選択が、価値ある取組への応援につながることがある」という視点は、エシカル消費や消費者の責任について考える際にも生かせます。

(2)道徳科の他の内容項目との関連

GOOD NEWSでは、病気や障がいなどにより一般就労が難しい人に、就労の機会や訓練の場を提供しています。また、1分単位で給与を支払うタイムカードの導入など、働く人の事情に配慮した仕組みも取り入れられています。

こうした雇用のあり方に焦点を当てることで、B「相互理解、寛容」やC「勤労」の内容と関連付けて考えることができます。また、牛の命、酪農家の営み、牛乳という恵みをどのように生かすかに焦点化すれば、D「生命の尊さ」へと発展させることも可能です。

(3)総合的な学習の時間

「バターのいとこ」を取り上げることは、地域産業としての酪農や、一次産業を取り巻く課題への理解を深めるきっかけにもなります。担い手の高齢化、原材料の活用、観光との連携など、地域によって抱える課題は異なります。

自分たちの地域にはどのような産業があり、どのような困り感や可能性があるのかを調べる探究へとつなげることで、本教材はより身近な社会参画の学びになります。

おわりに

社会をよりよくするというと、私たちはつい「誰かのために何かをすること」を思い浮かべます。しかし、宮本さんたちの活動から見えてくるのは、それだけではありません。自分自身が楽しいと思えることに挑戦すること。仕事としてきちんと利益を生み出すこと。その一方で、地域の人々とつながり、誰かの喜びや幸せにもつながっていくこと。そうした営みもまた、社会に関わる一つの姿なのではないでしょうか。

「他の人が喜ぶことが自分の幸せ」という宮本さんの言葉が、数人の生徒の心に残りました。誰かの幸せと自分の幸せは、必ずしも別々のものではありません。自分が楽しみながら挑戦する。その活動によって誰かが喜ぶ。その喜びがまた次の人へ伝わっていく。そんな循環が、よりよい地域をつくっていくのかもしれません。

「バターのいとこ」という一つのお菓子を入口に、生徒たちは、商品の向こう側にいる人々や地域、そしてそこに生まれるつながりについて考えることができました。私自身も、「社会に参画する」とは、自分の仕事や楽しみ、周囲の人との関わりの中で、よりよい関係を少しずつ紡いでいくことなのかもしれないと考える機会になりました。 今後も、生徒が身近な地域の魅力や課題に目を向け、自分なりに社会との関わり方を考えられる道徳授業づくりに、楽しみながら取り組んでいきたいと思います。


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