ページの本文です

47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#37  ここは、さいたま

関連タグ

北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。毎週公開します。今回の執筆者は、埼玉県戸田市の紺野  悟先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/紺野 悟(埼玉県戸田市立新曽北小学校教諭)

1・はじめに

こんにちは、埼玉県戸田市で小学校教員をしております、紺野悟です。普段連載させていただいている「学級経営」の分野(↓)を飛び越えて、藤原友和先生にお声がけいただき、地域を題材とした道徳授業の実践を提案させていただきます。

筆者の連載・「失敗しない学級経営」リンク
https://kyoiku.sho.jp/special/359787/

2・教材について

突然ですが、皆さんは埼玉県に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
埼玉県って聞いてもあまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。先日、北海道の先生との懇親会で、埼玉県のことが話題になりました。そこで、「埼玉県民って、埼玉県のことを自虐的に言うって聞いていたんですけど、本当なんですね!」と参加された方がおっしゃっていました。

……そうなんです。

「埼玉県は魅力的なところ」

「イイところっていってもなあ。」

と、なかなか思い浮かばない人が多いようです。

ブランド総合研究所が発表している魅力度ランキング(2025年)(↓)では、埼玉県が最下位を記録しました。(2024年は46位)

参考資料:地域ブランド調査2025 都道府県魅力度等調査結果 https://news.tiiki.jp/articles/4975

また、たまにテレビ番組で埼玉県を取り上げていただくのですが、それらは次のような話題がほとんどです。

・北部はほぼ群馬問題 
・千葉は永遠のライバル
・「浦和 vs 大宮」のインタビュー

見ておわかりのように、埼玉の魅力を実感できるようなものとは、程遠いのが多いのが現状です。どこか自虐的に埼玉を面白くしてくれているのですが、何とも悲しい気持ちもあります。

そんな埼玉県で育った子どもたち、どのように過ごすのでしょうか。土日は東京へ買い物に行きます。振替休日があれば、千葉のディズニーランドへ行きます。

はい、埼玉県では過ごさないんです。だから、埼玉県に魅力を感じることが少ないのかもしれません。一方で、この連載の過去記事、駒井康弘先生のご実践にあるように、地域産業の衰退が目で見えてわかるわけではありません。

全国的に人口が減り続ける中、総務省統計局によると2024年、埼玉県と東京都だけは人口が増え続けています。
【参考資料 https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2024np/index.html】

この連載の過去記事、千葉貴大先生のご実践にあるような、鮭が上る川があるわけではありません。(正確には、利根川で見られるようですが、それが産業として盛んではありません。)

一言で言うならば、全てにおいてほどほどな地域なのです。そんな埼玉県に、少しでも誇りと愛着を持つことはできないのか、と考え授業にすることにしました。

3・授業の実際

教材名:埼玉の誇り
対象学年:埼玉県の小学校高学年
内容項目:国や郷土を愛する態度 

【表紙スライド添付】

「埼玉の誇り」と題して埼玉県全域と流れる主な河川を示したスライド

授業の流れ

①「埼玉県のうた」を聞く

「埼玉県のうた」は、映画「翔んで埼玉」のテーマソングです。この曲の1番を流します。以下、歌詞を一部引用して掲載します。

〈歌詞引用〉

ダンダンダンダダンダンダン
ダンダンダンダダンダンダン
ダンダンダンダダンダンダン
ダンダダさいたま
どんなに歩いても 海がない 海だけならまだしも 空港ない
名所もないさらに郷土愛もない だけどアジアーでかい 団地がある!
団団団ンダ団団団 団ンダダさいたま
埼玉の人はなぜかわからないが 東京の人よりも東京に詳しい
アルタの下だとか 上野のアメ横でメロン食ってるヤツらみんな埼玉人
ダンダンダンダダンダンダンダンダダさいたま
埼玉の自慢と言えば 快晴日数が日本一
せっかく晴れても お出かけスポットがない
埼玉の人におすすめのスポットを聞いたら 鉄道博物館 まさかの屋内
ダンダンダンダダンダンダンダンダダさいたま

(作詞・作曲 はなわ/編曲 小林俊太郎/2019年/ビクターエンタテインメント)

PVで曲を映像とともに聞いた後、歌詞を提示します。すると、海がないこと、空港がないこと等、埼玉県にないものを取り上げていることがわかります。次に、「ダさいたま」の部分だけを赤く強調して提示します。

これにより、学習者に埼玉県について学習で取り扱うこと、埼玉県が「ダさいたま」と言われている悲しい現実があることを理解させ、学習の姿勢を作っていきます。

②埼玉県が「ダさいたま」と言われる所以

ここで、「あなたは、どう思いますか?」と学習者それぞれの見解を問い掛けたいところですが、もう少し情報を追加します。学習者それぞれが生活の中で得ている情報には偏りがあります。ですので、一定の情報を与えることで、考える材料を得ることができ、対話しやすくなります。

特に情報もなく、「ダサいたま、って言われているらしいよ。どう思う?」であれば、感情的に回答してしまいますが、ある程度情報を知ることで、意見や理由を考えられるようになります。

  • 1980年頃初頭、竹の子族という若者たちのファッションが流行した。
  • そのほとんどが埼玉や千葉から来た若者達だったらしい。
  • 「森田一義アワー 笑っていいとも!」 にて、タモリさんが発信したことを契機に1984年の流行語となった。(諸説あり)
  • 同義語にド埼玉がある。
  • これが広く普及して埼玉県のイメージを表すこととなった。 
  • また、これまた一説によれば「ダサい」という言葉は「だってさいたまだもん」の略という情報もある。

    (注)『森田一義アワー 笑っていいとも!』は、フジテレビ系列で1982年10月4日から2014年3月31日まで、毎週月曜日から金曜日の12:00から生放送されていた帯バラエティ番組。

この情報により、なぜ「ダさいたま」という言葉が生まれたのか理解することができます。そして、埼玉県に対する悲観的な心情に同化し、「いやそんなことない!」という思いを生み出していきます。

③埼玉県人の声

ここで埼玉県民の声を取り上げます。学習者も埼玉県民です。自分たちの気持ちを代弁してくれるものはあるのだろうか、関心を向けながら聞いてくれるはずです。

「埼玉県民はどう思っているでしょうか。」を示したスライド
*【埼玉県ホームページ】(ページの最後にリンクを掲載)と埼玉県出身の友人へのインタビューを元に作成

結構、諦めているというか、悲観的な意見ばかりです。「なんだそんな感じか。」と、学習者は思いを抱きます。

つまり、埼玉県民はどう思っていますか?

このように問いかけ、ここまでの情報を整理して認識を確かめる時間を取ります。

④埼玉県成り立ち

ここで、埼玉県がどのようにしてできたかを、参考資料を示しながら説明します。

  • 元々この地域は「さきたま」と言う。
  • 万葉集に前玉と記されている。
  • 地図で見るとわかるが、多摩地域の先にあったから、さきたまと呼ばれるようになった。
  • 江戸時代は武蔵国。東京と埼玉は同じ地域。
  • 明治政府が成立して廃藩置県の後、初めは「崎玉」と書きました。
  • でも「山ないじゃん!」となり、土へんに変更されてしまったそうです。
  • その後、秩父の山々も合併し、今の埼玉県の形が作られました。
  • 今は山があるのですが、そのまま埼玉と書きます。

ここからわかるように、埼玉県は名前の由来を見ても、ちょっと悲しい出来事があったことがわかります。

⑤色々と悲しい埼玉県

さらに、続けます。

  • NHKの朝の連続ドラマ小説は日本の様々な地域を舞台にして制作されています。ちなみに、1992年「おんなは度胸」が47回目なのですが、この時点で埼玉県はまだ出てきません。
  • 2008年79回目「だんだん」(島根)が放送されて、まだ登場していないのは埼玉県のみになりました。
  • 2009年80回目「つばさ」(埼玉/川越)が放送。これにより、47都道府県一巡しました。
  • しかし、平均視聴率が13.3%で当時歴代最低を記録してしまいました。
  • ご当地キティが「ダジャレ」

    *サイの着ぐるみを来たキティがボール(玉)に乗っているもの
「埼玉県の実際」と題されたスライド

これらを聞いて、交流します。

「埼玉って、本当悲しいね」

「なんか、何もないのかな」

ここまでで、悲しいエピソードはおわりですので、感じたことを交流します。

⑥埼玉だって一番なものもある

世間から見られるイメージや実際の記録、ランキングで埼玉の状況を見てきましたが、ここからは「でも、埼玉っていいよね!」を見つけています。4年生の社会科で学習したことがある地域の生産品や消費量のデータです。

「日本一だってないわけじゃない」と題されたスライド

これらを資料とともに提示します。
学習者は、「埼玉だって1位があるじゃん」と、少しホッとするか、「なんだ、そんなことか」と埼玉のことをますます悲観的に見つめます。

⑧「ニュー咲き誇れ埼玉」を聞く

この曲のPVには、埼玉県の様々な名産品がでてきます。そして、楽しそうに踊っている様子が映っています。見ているだけで、埼玉もいいところじゃん。そんな気持ちにさせてくれます。また、歌詞を紹介すると、「咲いて、咲いて、咲きほこれさいたま」という歌詞があります。はじめに聞いた「ダさいたま」の歌詞とは、対局のような歌詞であり、「いろいろ言われるけれど、いいところもあるんじゃないか?」という気持ちにさせてくれます。

⑨埼玉県をネタにしたTシャツ

そんな、埼玉県を題材にしたTシャツブランドがあります。ジモトイズムというブランドです。埼玉県に関するものを63種類程度販売しています。

「人々が持つ地元愛や懐かしさを、形にする。」

このことをビジョンに埼玉県の魅力を発信しているアパレルブランドです。ここまで提示してきたスライドでデザインが出てきていますので紹介します。

「埼玉県民はどう思っているでしょうか」と題したスライド再掲

(デザイナー カナメクトの思い)
埼玉県には、海がありません。そのことを書いたTシャツです。「海なし県」と言われますが、海がないことはそんなに悪いことではありません。だって、海がないところで育っているからこそ、海があることに喜べるんですよ。お台場の海を見て、ちょっとテンションが上がることは恥ずかしいことではなく、それでも喜べるって素敵なことでしょう。

「海なし県」だからこそ感じることができるって素敵な事じゃないですか?

「埼玉県の実際」と題したスライド
(デザイナー カナメクトの思い)

このTシャツは、2025年に全国魅力度ランキングが最下位になったことをデザインしたものです。「魅力度ランキング最下位だって〜」と、埼玉県民は、47位になったことをどこか自虐ネタにして楽しんでいませんか? それは、余裕があるっていうことです。生きる希望や余裕がない場合、この結果を楽しむことはできません。でも、電車もまあまああって、都内にもすぐ行けて、お店もそこそこあって、人もたくさんいる。生活に不自由がなくて、余裕があり、日々楽しく過ごしているから、最下位すらも楽しめるのではないでしょうか。

「日本一だってないわけじゃない」と題したスライド

(デザイナー カナメクトの思い)
2025年、熊谷で記録した最高気温をデザインしました。埼玉県外の人でも「熊谷って、あの暑いところ?」と実は知名度がある熊谷市。暑いってことは、嫌なことではあるけど、ちょっと誇りというか、知られている嬉しさがあります。何より、このTシャツをきっかけに、熊谷のことを話すきっかけになればいいなと思っています。

デザイナー、カナメクトの写真

この人がデザイナーのカナメクト(もちろん埼玉県出身)です。彼は語ります。

「僕たちは、地元の良さを伝えたい。だから、ジモトイズムのTシャツを着ていたら、地元の会話になるって素敵なことだなあって思っています。先日、『スーパーに着て行ったら、それってどこのTシャツ?」と話題になった』という声が送られてきました。このように、自虐でもいいから話題にすることで、埼玉県のことを話し、埼玉県に好感が持てたら素敵だなと思っています。

最後に問い掛けます。

決してないわけじゃない。見ていないだけ。
あなたは、どんなところが埼玉県の魅力だと思いますか?

もう一度、「ニュー咲き誇れ埼玉」を、PVではなく音楽だけで流します。音量は絞り目にして、学習を通して思ったことを書き、授業を終えます。

4・おわりに

いかがでしたか。本授業は、この連載企画のリーダーである藤原友和が企画する青函道徳の企画で模擬授業をさせていただいた時に考えたものです。数年前に総合的な学習の時間で「埼玉の魅力アップ大作戦」と言うテーマで活動をしたことがあります。その時、埼玉の魅力を発信することよりも、探すことに苦労していました。埼玉県には魅力がない和池ではありません。魅力を感じることができなかったのです。それもそのはず、それだけ私を含め大人達が、埼玉県の魅力を実感していないのですから。

「埼玉って住みやすいし、イイよねえ。」

「埼玉ってちょうどイイよね。」

これでもいいと思うんです。この感覚って、もしかすると埼玉だから感じられることかもしれない、と思うのです。


編集委員・藤原友和先生による共著・編著、好評発売中です。

単行本「オリジナル地域教材でつくる!「本気!」の道徳授業」カバー
この記事をシェアしよう!

フッターです。