小3 国語科「すがたをかえる大豆」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「すがたをかえる大豆」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小三 国語科 教材名:すがたをかえる大豆(光村図書・国語 三下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都練馬区立大泉学園小学校・浅沼由香里

※教科書の配列では、本教材に続く「食べ物のひみつを教えます」とともに「れいの書き方」を生かして「読むこと」と「書くこと」との連続した扱いとなっていますが、この記事では、「読むこと」の指導事項の指導の在り方について提言するため、「読むこと」領域単独の単元として示しています

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元の教材文「すがたをかえる大豆」は、第1段落で、「大豆はいろいろな食品にすがたをかえていることが多いので気付かれないのです。」と結論ともいえる文が示されています。
最後の段落には、改めて「…昔の人々のちえにおどろかされます。」と筆者の考えが示されています。第3学年の児童にとって、このような構造をもつ文章に接するのは初めてであることが想像されます。
また、第2段落以降は、事例が紹介されていますが、植物のダイズかその種である大豆か、食品にする工夫の違い、工夫の複雑さの違いなど、様々な観点から事例を示す順序が考えられて示されています。
このような筆者の表現の工夫を、事例を比較したり分類したりして整理しながら、段落相互の関係に着目して読み進め、筆者の考えとそれを支える理由や事例との関係について捉えることができるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、「説明の『くふう』をたくさん発見しよう」という学習課題を設定し、段落相互の関係に着目しながら読み、説明されている事例の順序や、写真との関連のさせ方など、表現や文章構成の工夫を見つけていきます。
そのために、「文章分析シート」を作り、文章を視覚的に整理して考えるという言語活動を設定します。作成を予定している「文章分析シート」は次のようなものです。

【 文章分析シートのイメージ 】

文章分析シートのイメージ

児童がこれまで学習してきた説明的な文章には「はじめ」「中」「終わり」の構造をもち、「はじめ」に「問い」の文があり、その問いに答える形で、「中」の具体例などが書かれていましたが、今回学習する「すがたをかえる大豆」には「問い」の文はありません。
文章分析シートで整理し、「すがたをかえる大豆」の「はじめ」の文章は、話題を提供して次の事例の紹介につなげていることを確認していきます。
また、文章分析シートで文章全体を見渡して、それぞれ紹介されている事例を比べ、事例が一般的なものから例外的なものへ、簡単で分かりやすいものから複雑で手順の多いものへという順序となっている説明の工夫があることを見つけていきます。

本単元では、これらの活動を通して、筆者の考えとそれを支える理由や事例との関係などについて捉えていくことを目指します。
単元の最後では、学校図書館等を活用して、表現の工夫に着目しながら幅広いジャンルの様々な説明的な文章を読むことにつなげていきます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 これまでの学習を生かして課題を設定し意欲を高める

3年生の説明的な文章では、教科書上巻p48「言葉で遊ぼう」と教科書上巻p50「こまを楽しむ」で、「はじめ」の部分で示されている問いに対して、「中」で具体的な事例に基づいて答えにいたることが示され、「終わり」でまとめがある文章の構成について学習してきました。
そのつもりで「すがたをかえる大豆」を読むと、問いが見つかりません。
「あれ?」と思いながら読み進める児童が多いでしょう。このことを生かし、「これまで触れてきた文章とは違う表現の工夫がされているようだ」との捉えから、この文章の「説明のくふうを見つけよう」という学習課題を設定し、文章の秘密に迫ろうとする意欲を高めていきます。
本単元では、説明の工夫を見つけるために、ペアでの対話を活用します。文章分析シートを使って対話し、ペアで見つけた工夫を、自分が見つけた工夫として扱っていきます。友達とペアで語らいながら、説明の工夫を探すことで、さらなる学習意欲を喚起していきます。

〈対話的な学び〉 対話で気付きを伝え合い、一人では気付かなかった新たな気付きへ

本単元では、文章分析シートで文書全体を整理することができたら、友達とペアを作り、対話をしながら、説明の工夫を見つける活動を行っていきます。対話の中で友達が気付いたことに納得がいったり、得心したりしたことは、自分たちで見つけた説明の工夫としてシートに書き込ませていきます。
一人で読むことも大切ですが、一人では気付くことができなかった事柄が対話を通して加味され、新たな気付きとして児童に蓄積されていきます。児童が友達との対話により、自身の気付きが新たに広がっていくよさに気付くことができるようになっていくことを目指します。

〈深い学び〉 説明の工夫を見つけて、幅広い読書へ

本単元では、説明的な文章で示されている表現の工夫を見つけていきます。本単元で児童が見つけ、学んででいく表現の工夫は、読むことの学習にとどまらず、書くことの学習や読書活動への広がりを期待できるものです。
そこで、本単元の最後では、児童が見つけてきた説明の工夫の使い方を考える場を設定します。このことにより、他の文章ではどのような工夫がされているか、書くときにはどう使うか、話すときにはどうかと児童の意識を広げ、次への学びの意欲や活用への意欲につなげていきます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)スプレッドシートで文章分析シートを作成する

本単元では、文章分析シートをスプレッドシート等の表計算アプリを使用して作成します。
表計算アプリは表の作成が簡単にできることに加え、教科書の挿絵や画像を1人1台端末で撮影して簡単に貼り付けることができます。
文章分析シートは、児童の出席番号などをタブに示しておき、一つのファイルで管理できるようにしておくと保存や共有が簡単にできて便利です。準備する時間がある場合は、タブに児童の名前を入れておくと、児童が誤って友達のシートで作業してしまうなどの誤操作を減らすことができます。

第5時では、作成した文章分析シートに画像を貼りながら、文章の説明の工夫を考える場面を設定しています。本単元の教材文で挿入されている画像は、児童が説明の工夫を考える際の手がかりとして、思い思いの大きさで画像を比べたり、並べ替えたりしながら考えることができるため、1人1台端末は効果的です。
学習の中で友達と対話する場面でも、互いの端末画面を見合いながら、気付いたことを伝え合ったり、新たな気付きを書き加えたりして使用していきます。

6. 単元の展開(7時間扱い)

 単元名: すがたをかえる大豆

【主な学習活動】
第一次1時2時学習の見通しをもち、学習課題を作る。
第1時
・教科書p41の扉に示されている題名から、大豆がどのように姿を変えているのかを想像し、本文と出合う。

第2時
・本文の特徴を確かめ、学習課題を作る。

第二次3時4時5時6時7時
第3時
・①、②、③、④段落を読み、文章分析シートを作成することにより、段落相互の関係などを確かめる。

第4時
・⑤、⑥、⑦、⑧段落を読み、文章分析シートを作成することにより、段落相互の関係や文章全体の構成などを確かめる。

第5時
・ペアで文章分析シートに画像を貼りながら、説明の工夫を見つける。

第6時
・第5時で見つけた工夫を発表し、学級全体で説明の工夫を整理する。

第7時
・学習を振り返り、考えたことや感想をまとめる。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

教科書p41の扉に示されている題名から大豆がどのように姿を変えているのかを想像し、本文と出合う時間です。

「主体的な学び」のために

まず単元扉の大豆の写真を見て、大豆であることを確かめてから、大豆と自分の日常での関わりについて思い出していきます。
3年生の児童にとっては、「大豆」という言葉は知っていても、意外と具体例は挙げられないことなどを確かめながら、「すがたをかえる大豆」という題名に着目して、児童の興味や関心を引き出していきます。
そして、これまでの学習を振り返り、学んだことを生かしながら、自分たちで読み進めていこうとする意欲を高めていきます。

今日から新しい単元の学習が始まりますね。これまで学んだ力を生かしながら、新しい力を身に付けていきましょう。
(扉の写真に注目させて)これは何か知っていますか。

豆です。

大豆です。

「大豆」という名前は、みんな聞いたことがあると思いますが、みなさんは大豆を食べたことがありますか。

節分のときに食べている豆は大豆だったかな? 年齢の数だけ食べられる?

節分では食べるだけではなく、「鬼は外!福は内!」と言いながら、まくこともあります。

その他に大豆を食べたことがありますか?

たしか、お豆腐は大豆から作られていると聞いたことがあるような気がするけれど…?

今日から学習する文章の題名を読んでみましょう。

「すがたをかえる大豆」

大豆が姿をかえるって、どのように姿がかわるのでしょうね。本文を読んで確かめていきましょう。

(初読後)

題名の「すがたをかえる大豆」の意味が分かりましたか。大豆を使った食べ物は、私たちの身近にたくさんあるのですね。文章を読んで、初めて知ったことや、もっとよく知りたいと思ったことはありますか?

醤油が大豆からできていたなんて、知らなかった。

大豆とダイズと表現が二つあったけれど、何が違うのかな? もう一度読めば何か分かりそうだけど。

たくさん食べ物が紹介されていたけれど、順番は何かあるのかな? ちょっと難しそうだ。

詳しく読んでいくと、何か分かるかもしれませんね。それでは、…。

読み終えると、児童は「大豆」と「ダイズ」という表現が使われていることに気付きます。
②段落の1文目を読み、「大豆」は「ダイズ」という植物の種のことであることを確認します。ここで、動植物を表記する際はカタカナを用いることが一般的であることを確かめておきます。

児童に学習計画を示して、共有したら、「すがたをかえる大豆」を読んで、知りたいことについて発表し、板書していきます。

次の時間で、板書で示した知りたいことを確かめていくことを予告し、学習の見通しをもちます。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

本文の特徴を確かめ、学習課題を作る時間です。

まず、1時間目で出された「すがたをかえる大豆」を読んで、知りたいことについて確かめて学習を始めます。

次に、知りたいことを調べるために、①段落を読みます。すると、すがたをかえることは、他の食品になることと書かれていることが分かります。

ここで、これまでの学習を想起させ、これまで学んできた「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」を振り返り、それらとは文の様子が異なることを見つけていきます。

①段落を読んで、何か分かりましたか?

最後の文に「大豆はいろいろな食品にすがたをかえている」と書かれています。

姿をかえるというのは、いろんな食品になるということか。

昨日知りたかったことが一つ分かったね。

みなさん、①段落だけでも分かったことがありましたね。では、気付いたことはありますか?

気付いたこと?

えーと、「なんだか分かりますか。それは、大豆です。」って書いてある。

あれ?「それは、大豆です。」って答えかな?

どうもこれまで読んできた文章と説明の様子が違うみたいですね。これまで学習してきた「こまを楽しむ」はどうなっていましたか?

「はじめ」「中」「終わり」になっていて

「はじめ」に問いがあって…。

あれ?「すがたをかえる大豆」は①段落に、問いと答えの文がある。

やはり、これまでとは説明の様子が違うようですね。何か、工夫されていたり、隠されていたりするのかな?

分からないけど、これまでと違う説明の工夫があるんだ。

説明の仕方を気にして読んだら、昨日知りたかった紹介の順序のことも分かるかも。

説明の工夫を見つければいいんだ。

なるほど。それでは、これまでの学習で使われていた説明の工夫を確かめて、それと比べながら読んでいきましょう。

「こまを楽しむ」を振り返り、「はじめ」「中」「終わり」の構成になっていたことや、「はじめ」には問いが示されていたことなどを確かめ、「すがたをかえる大豆」では、どのように書かれているのか、比べながら全文を読んでいきます。

読むときには、1回目は、段落番号を付けながら、範読を聞きます。

2回目は、文章の「はじめ」「中」「終わり」はどこかを考えながら自分で読みます。

読み終えたら、「こまを楽しむ」の「はじめ」「中」「終わり」と「すがたをかえる大豆」を比べ、気付いたことを出し合います。

最後に、これまでの学習と比べながら説明の工夫を見つけていくことを確認し、終えます。


【3時間目の板書例 】

3時間目の板書例

イラスト/横井智美

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