小6社会「日本国憲法とわたしたちの生活」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修《1人1台端末時代の》教科指導ヒントとアイデア
小六社会タイトル

執筆/豊島区立目白小学校主幹教諭・生沼夏郎
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登、東京都教育庁指導部主任指導主事・秋田博昭

小六社会年間指導計画

目標

日本国憲法について、憲法の基本的な考え方に着目して、見学・調査したり各種の資料で調べたりしてまとめ、我が国の民主政治を捉え、日本国憲法が国民生活に果たす役割や、国会、内閣、裁判所と国民との関わりを考え、表現することを通して、日本国憲法は国家の理想、天皇の地位、国民としての権利及び義務など国家や国民生活の基本を定めていること、現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に基づいていること、立法、行政、司法の三権がそれぞれの役割を果たしていることを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決し、学習したことを基に、国民としての政治への関わり方について、自分の考えをまとめようとする態度を養う。

評価規準

知識・技能
①日本国憲法の基本的な考え方について、見学・調査や各種の資料などで調べて必要な情報を集め、読み取り、我が国の民主政治を理解している。
②調べたことをまとめ、日本国憲法は国家の理想、天皇の地位、国民としての権利及び義務など国家や国民生活の基本を定めていること、現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に基づいていること、立法、行政、司法の三権がそれぞれの役割を果たしていることを理解している。


思考・判断・表現
①日本国憲法の基本的な考え方に着目して、問いを見いだし、我が国の民主政治について考え、表現している。
②日本国憲法の基本的な考え方と私たちの生活を関連付け、日本国憲法が国民生活に果たす役割や、国会、内閣、裁判所と国民との関わりを考えたり、学習したことを基に、国民としての政治への関わり方について、自分の考えをまとめたりして、適切に表現している。


主体的に学習に取り組む態度
①日本国憲法について、予想や学習計画を立てたり、見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。
②学習したことを基に、国民としての政治への関わり方について考えようとしている。

学習の流れ(11時間扱い)

問題をつくる 3時間

  • 生活の中にある法やきまりを見つけ、それらと日本国憲法の関わりを調べる。
  • 資料を基に、私たちの生活と日本国憲法のつながりを調べ、学習問題を設定する。

(学習問題)
私たちの生活は、日本国憲法とどのようにつながっているのだろう。

  • 学習問題に対する予想を基に話し合い、学習計画を立てる。

追究する 6時間

  • 日本国憲法は、いつ、どのようにつくられ、どのような内容なのか調べる。
  • 基本的人権の尊重、国民主権、平和主義と私たちの生活のつながりを調べる。(3時間)
  • 三権相互の関係や役割、我が国の政治の仕組みについて調べる。(2時間)

まとめる 2時間

  • 調べてわかったことを関係図に整理し、日本国憲法が国民生活に果たす役割を考える。
  • 国民としての政治への関わり方について自分の考えをまとめる。

問題をつくる

3枚の写真(小学校の教科書給与の封筒)を基に、私たちの生活と日本国憲法のつながりについて話し合う。(1~3/11時間)

導入のくふう

私たちの生活の中にある法やきまりは、日本国憲法と深く関わっていることを捉えることで、国民生活と日本国憲法の関連に関心をもつことができるようにする。

1時間目 生活の中にある法やきまりを見つけ、それらと日本国憲法の関わりを調べる。

私たち生活の中には、どのような法やきまりがありますか。

赤信号は「止まれ」、車は「左側」などの交通ルール(法律)があります。

ごみのポイ捨てや歩きたばこは、法律や条例などで禁止になっています。

※既習事項から探してもよい。
※ICTを活用して全児童の考えを見えるようにすることで、自分たちの生活がたくさんの法やきまりによって守られていることに気付くようにする。

国や国民生活の基本
すべての法やきまりの基本

私たちの生活の中には、いくつものの法やきまりがあります。私たちがそれらを守ることによって、みんながくらしやすくなっていますね。
こうした法やきまりは、「日本国憲法」の考え方に基づいて、定められています。

2時間目 3枚のイラストを基に、私たちの生活と日本国憲法のつながりについて話し合う。

この3枚のイラストから、どのようなことがわかりますか。

教科書と文部科学省の封筒
①入学式で配られた教科書(左) ②教科書を入れる封筒(中) ③封筒の裏(右)

※②の封筒がある際は、それを資料として示すとよい。
※①と②のイラストを示して考えた後に、③の文を読み取って話し合いを進めていく。

入学式の時にもらった教科書ですね。懐かしいな。
あれ? ②の封筒には、大きく「文部科学省」って書いてあるよ。どうしてかな。

③の文を読むと、教科書は、憲法に掲げる「義務教育無償の精神」を広く実現するものって書いてあるよ。私たちの使っている教科書は、日本国憲法の精神と関係があるのですね。

教科書と日本国憲法に関係があるのは知らなかったです。
他にも、日本国憲法と私たちの生活にはつながりがあるのかな。



私たちの生活は、日本国憲法とどのようにつながっているのだろう。

追究する

日本国憲法の概要や基本的な考え方を捉えてから、憲法と私たちの生活のつながりについて調べる。(4~9/11時間)

見学のくふう

新型コロナウイルス感染症の拡大等により、実際に見学することが難しい場合は、1人1台端末を活用した模擬見学などを行うことで、国会、内閣、裁判所の様子を捉えることができるようにする。

4時間目 日本国憲法は、いつ、どのようにつくられ、どのような内容なのか調べる。

日本国憲法は、どのような憲法なのか調べましょう。

※「あたらしい憲法のはなし」のイラストや憲法前文を調べる活動も考えられる。

日本国憲法には、国の政治の在り方が定めてあるんですね。とても大切なことが書いてあるんですね。

日本国憲法について
(右)日本国憲法の概要 (左)日本国憲法の三原則

8時間目 1人1台端末を活用して、国会の仕組みや働きを調べる。(模擬見学)

国会の仕組みや働きについて、タブレット型端末を使って、調べていきましょう。

参議院のキッズページには、国会の仕組みや法律ができるまでのことが書いてあるね。

参議院 キッズページ
https://www.sangiin.go.jp/japanese/kids/main/side_a/index.html
参議院 トップページ
https://www.sangiin.go.jp/
衆議院 トップページ
https://www.shugiin.go.jp/internet/index.nsf/html/index.htm

国会キッズページ

https://youtu.be/MPoBuhQ2F94
※文科省公式YouTubeチャンネルmextchannel

国会議事堂の様子や役割は、この映像を見るとよくわかりましたよ。みんなも見てみるといいと思います。

※内閣や裁判所についても調べたり、児童がお互いに調べた情報を交換したりするなどして、三権相互の関係や役割、我が国の政治の仕組みを調べる活動を設定することも可能である。

まとめる

日本国憲法の概要や基本的な考え方を捉えてから、憲法と私たちの生活のつながりについて調べる。(10、11/11時間)

多角的に考えるくふう

調べてわかったことを基に、日本国憲法の基本的な考え方と国民生活のつながりを関係図にまとめ、それを基に、国民としての政治への関わり方を多角的に考え、自分の考えをまとめるようにする。

10時間目 調べてわかったことを関係図にまとめ、憲法が国民生活に果たす役割を考える。

〈関係図の例〉

ぼくは、日本国憲法の三原則が、国民生活とどのように関わっているかを図に整理しました。

日本国憲法の三原則

私は、国会、内閣、裁判所の役割と、国民との関係をまとめました。

国会、内閣、裁判所の関係

※ノートに書く、グループでまとめる、Jamboardなどのデジタルホワイトボードツールを使ってグループや学級全体でまとめるなど、学級の実態に応じてまとめ方を選択する。

11時間目 関係図を基に、国民としての政治への関わり方を多角的に考え、自分の考えを発表する。

できあがった関係図を見ながら、私たち国民は、どのようにして自分の考えを政治に反映させていくとよいかを考えましょう。

参政権があるので、選挙は必ず投票に行くようにします。

内閣がどのような政治を目指しているのか、常に注目します。

裁判員制度で裁判員に選ばれたら、参加をしてみようと思います。

※スプレッドシートなどに考えを入力し、AIテキストマイニングで単語を抽出すると、子供が使ったキーワードなどを瞬時に示すことができるため、自分の考えをもつことが苦手な子供への有効な支援として活用できる。

考えを書かせるポイント

  • 一人一人で考えを書く前に、日本国憲法の特色や役割、三権と国民との関わりについて話し合い、調べた事実を確認し、学習問題に対する自分の考えをまとめるようにする。
  • その上で、特に自分が大切だと考える国民の関わり方を選び、その根拠や理由を明確にして説明できるようにすることが大切である。

イラスト/高橋正輝、横井智美

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