学習指導案の書き方:児童観・教材観・指導観の具体例

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追手門学院小学校講師

多賀一郎

みんなの教育技術内のアンケートでは、97%の先生が「指導案を書くのがつらいと感じたことがある」と回答。そこで、学習指導案について多賀一郎先生が「児童観・教材観・指導観」の具体的な書き方を例に詳しく解説してくれました。

執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

学習指導案の書き方:児童観・教材観・指導観の具体例
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児童観・教材観・指導観

子どもの姿、目標、指導、教材の図

授業では、目標から見た子どもの姿(児童観)があり、その子どもたちを目標に到達させるための教材があります。

教材について、それが子どもたちにとってどのようなものなのか、ポイントは何なのかというようなことを考えます。教材を通して子どもの姿を見るということです(教材観)。

そして、その教材を使ってどのような授業をしたら目標に到達するために最も良いのかを考えるのが、指導観です。

これが、基本的な授業の仕組み、構成です。

※編集部注:この記事は、多賀先生が提案する簡略指導案をもとに解説しています。自治体、学校によって使われる言葉が違う場合があります。

児童観…子どもの姿をとらえる

この子どもの姿というのは、前述したように、目標から見ての子どもの姿です。児童観と言います。

算数の学習指導案の児童観に「本クラスの児童は、とても活発で……」とか、「話合いに積極的に参加して……」というような表現を目にすることがあります。

理科の指導案の児童観で、「友だちに対する言葉が少しきつくて、やさしさをうまく表現できない子どもが多くて……」というのも、見たことがあります。

こういう表現に僕は引っかかります。

「この先生は、道徳の授業をするのかな?」と、思ってしまいます。

校内の研究授業の事前研であれば、このような児童観は訂正するように指導してきました。

「確かにそういったことも児童の実態でしょう。授業を行っていくためには、重要視すべきことだと思います。しかし、今回の学習のめあてと、どのような関係があるのでしょう。授業者がクラスの実態を全ての面に渡って把握しておくことは当たり前のことですが、教科の目標とは、直接、関係がありません」

このように言ってきました。

研究授業では、特に、目標から俯瞰した子どもたちの実態を見ていかなければなりません。

算数の「三角形の定理を理解する」という目標に関しては、図形というものに対する子どもたちの既習内容とその定着度はどのくらいか? 三角形を日常生活で子どもたちがどのようにとらえているのか? このようなことが児童観です。
児童の活発さや話合い活動の様子等は、算数には関係がありません。

理科の「昆虫とは何かを知る」という目標に対しては、子どもたちの実生活での昆虫との付き合い(飼育経験の有無、男女差、身の回りの昆虫とどう遊んでいるか)等の実態が、児童観になります。
友達に対する優しさは、学級づくりや人間形成には大切なことであっても、理科には関係がありません。

子どもの姿をとらえるときは、日常の学級づくりにおける子どもの姿と、授業の教科目標から見たときの子どもの姿とを、分けて考えなければいけないのです。

その上で、いま一度指導案を簡略化することについて言及するならば、一つの目標に対してだけの子どもたちの実態を書けばよいということをお伝えしたいと思います。

たくさん書く必要はありません。長い文章にするとつながりが難しいので、箇条書きで書くのもありです。

また、「三年生になって、『〇〇〇』や『□□□』の教材で、△△や◇◇について学習してきた」というような既習教材の羅列も必要ありません。

例えば、

  • 対話的な活動を通して意見を交流する経験を積んできている。自分の考えを伝えられる児童が多い。
  • 短くまとめて伝えるのは苦手な児童が多いようである。
  • 相手の意見を聴き終える前に話し出す児童が何人もいる。
  • 内容のまとめについては、まだまだまとめ方を理解していない。

というような書き方にするとよいでしょう。

教材観…教材を吟味する

目標に対する子どもの実態が分かったら、その子どもたちを目標に到達させるための手立てを考えます。

教科書の教材は、そのための一つのアイテムですが、「教科書を教える」という発想ではいけません。ほかにもっと子どもたちを目標に導きやすい教材があるかも知れませんから。

とは言っても、若い先生方は、「教科書を教える」ことで精いっぱいでしょう。とりあえずは、教材の差し替えは考えなくてよいと思います。教科書の教材をそのまま使っていきましょう。

教科書は、基本的に、子どもの成長レベルや語彙力、精神年齢などを考慮して教材を選んでいます。教科書と教材を差し替えるには、説得力のある根拠が必要で、それなりの豊富な経験と学問の積み重ねが必要なのです。若手のうちは、教科書教材でどんな授業を仕組んでいくかを考えていきましょう。

さて、教科書教材を読み解いて教材研究をすればするほど、書きたいことがたくさん出てくるでしょう。
しかし、あくまで、指導案では「本時、本単元の目標に到達するためにどうなのか」という点に絞って述べます。

例えば、次のような書き方です。

  • 登場人物の年齢と近いために、同化して読み取りやすく、考え方にも共感しやすい教材である。
  • 難しい語句が少なく、すんなりと読み取りに入っていけるだろう。
  • 情景描写が優れていて、人物の心情を情景から読み取るのに適した教材である。

指導観…手立て(方法)こそが授業

国語の読み取り学習で考えてみましょう。

国語では、教材を使って、子どもたちに人物の心情の読み取り方を指導します。もし、その教材文における人物の心情さえ理解すればよいとするならば、教師はそれを説明してあげるだけでよいことになります。そして、テストでは丸暗記をした答えを書けたら合格とする…。そんな授業も、ときどき見かけます。

しかしこれでは、授業をしている意味がありません。国語の読み取りの授業になっているとは言えません。

文章の読み取り方、言葉の役割などを考えないことには、文章を読み取るための力はつかないからです。

教師は、読み取り学習をするときに、教材文の特徴に合わせて、さまざまな「手立て」を打ちます。

高学年では人物の心の変化を追いかけるために心情曲線を使ったり、低学年では人物の心情を想像させるために吹き出しを使ったりと、あれこれ工夫して、子どもたちを目標に到達させるのです。

この「手立て」こそが授業の本質だと、僕は思っています。

指導案には、その手立てをはっきりと書くことが重要なのです。

例えば、

  • 情景描写だと思われる表現を抜き出して、その表現に表された人物の心情を考えさせたい。
  • 友だちと考えを聞き合うことで、自分の考えを振り返って深めさせたい。
  • 人物の心情の変化を心情曲線を使って考えさせたい。

といった感じです。

「本時の展開」の書き方

児童の活動〔学習活動〕

主語は児童にして書きます。「……する」、「……について考える」というような具体的な子どもの姿や予想される発言について、子どもを主語にして書くことで、子どもたちの動きを想像することができます。

指導上の留意点

主語は教師です。「……させる」「考えさせたい」「……という教材を取り出す」などの言い方で、具体的に、何をどうするのかを書きます。

「読み広げさせる」や「主題に迫らせたい」といった、具体的でない表現にならないように気を付けましょう。

その他の注意点

その他、指導案を書くときのポイントや注意点を次にまとめます。

①「次」は意味段落、「時」は形式段落のことと考えるとわかりやすい

②単元と教材は違うと心得る

③難しい語句は使わない
分かっていない教師ほど、難しい語句を使おうとします。具体性のない「広義の……」「狭義の……」「……的」「……性」「児童の理解度が飛躍的に向上……」というような表現は、できるだけ使わない方が良いでしょう。

④一文は短くする
一文が長すぎると、理解しづらく読みにくくなってしまいます。


以上、基本的な指導案の書き方から、簡略化のアイデアまで述べさせていただきました。ぜひ参考にしてみてください。

多賀一郎

●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

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