業務改善に向けて、効果のある会議の仕方【妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」第20回】

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妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」

学校の“働き方改革”進んでいますか? 変えなきゃいけないとはわかっていても、なかなか変われないのが学校という組織。だからこそ、教員一人一人のちょっとした意識づけ、習慣づけが大事になります。この連載では、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた妹尾昌俊さんが、「半径3m」の範囲からできる“働き方改革”のポイントを解説します。

執筆/教育研究家・一般社団法人ライフ&ワーク代表理事・妹尾昌俊

外部の視点も入れながら、アイデアを出す

前回、学校の業務改善には3つの場が必要という話をした。

①アイデアを出す場
②行動することを決める場
③フォローアップする場(進捗状況を確認して、軌道修正する場)

①②③の場を大切にしている事例として、私も支援に関わってきた埼玉県伊奈町を紹介したい。2017年度は小室小・小針中の2校をモデル校に、株式会社ワーク・ライフバランスの協力を得て「カエル会議」を開催。18年度からはこの取り組みを町内全校に広げている。

「カエル会議」とは教職員の代表(この事例では各校で6、7名ほど)が集まり、働き方の見直しをする場だ。「早くカエル」「仕事のやり方をカエル」「人生をカエル」という3つの意味を込めて、こう呼んでいる。 まずは、どんな学校にしたいのかというビジョンについてのアイデアを出し、共有したうえで、学校の課題について議論。そのビジョンと課題を踏まえて、次の仕事を洗い出す。

  • 捨てる仕事
  • 協力することで時間を短くできる仕事
  • やり方を変えることで成果の質を上げられる仕事

この3点について、カエル会議では解決策のアイデアを出していく。

たとえば、伊奈町では校務支援システムの導入ができていないため、通知表、指導要録、出席簿等の諸表簿の電子化が遅れていた。いきなりシステム予算化まではできないが、表計算ソフトを用いて効率化することにした。また、日直の教員が1人で30分以上かけていた校内の見回りは、手分けして行うようにした。

さらに、カエル会議のメンバーは、教職員にアンケート調査を実施し、そこから出てきた課題についても検討した。たとえば、行事や研究授業の提案資料、学習指導案の作成などで時間を費やす若手教員が多いことが分かったため、過去の関連資料を共有フォルダ上にまとめて、参照しやすいようにした。 こうしたアイデア出しの場は、教職員だけでも十分可能だ。だが、外部の視点が入ると、視野が広がったり、そもそもの原点を再確認しながら進めたりしやすくなる。カエル会議に参加したある教頭(当時)はこう述べている。

当初は半信半疑でした。と言うのも、教職員の中には、働き方改革や業務改善と言われても「現場だけでは難しい。きっと無理」と、あきらめモードな気持ちもあったからです。しかし、外部コンサルタントの方が入ってくださることで、私たち現場の気持ちやアイデアを教育行政にも橋渡ししてくれました。 また、「留守番電話など、できっこない」と思っていましたが、他地域の事例を紹介していただいたことで「うちの学校でもできるかも」という気持ちに変わっていきました。「本気の改善の風」を吹かせてくれたと思います。

もちろん、全国各地で外部専門家を雇うほどの余裕も人材もいないだろう(ぜひ予算化してほしいが)。理想的には、教職員のなかで、職場内コンサルタント、あるいはファシリテーターができる人材を育てていくことが重要だと思う。また、書籍やネット記事なども参考にできるものはたくさんある。

翌月までに、誰が、何を行うか

カエル会議の優れているところは、アイデアを出して終わりではないところだ。必ず、その日の会議のうちに「翌月までに」「誰が」「何を行うか」を確認する。そして、月に1回のペースで続ける。つまり、冒頭で述べた②、③の機能を大切にしているわけだ。

このごくごく地道なことが、大変重要だ。しかも、外部の専門家が同席するので、その都度アドバイスが得られて改善が進みやすくなるし、緊張感もある。できない理由ばかり並べて“なあなあ”で済ませてしまう会議にはならない。

馬を連れて行くことはできても

この事例では「外部の専門家が助けてくれていいな」と思った読者もいるかもしれない。だが、ひとつ注意が必要だ。余所者は助けにはなるが、当事者にはなれない。イギリスのことわざで、「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」というのがある。

学校の働き方改革では、校長はもちろんのこと、教職員の納得感と本気度が高まらなければ、いくらアイデアを出しても、アドバイスをもらっても、そのうちトーンダウンしてしまう。

そもそも、ちょっとやそっとで、簡単に時間を生み出せるなら、誰も苦労はしていない。持続可能な学校づくりに向けて、①②③の場を大切にしながら、粘り強く取り組むことを大切にしたい。

※本稿は、藤原文雄編著『「学校における働き方改革」の先進事例と改革モデルの提案』(学事出版)のうち、妹尾担当箇所を加筆修正して掲載しました。関連する解説は拙著『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)にも掲載しています。

『総合教育技術』2019年11月号に加筆

野村総合研究所を経て独立。教職員向け研修などを手がけ、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた。主な著書に『変わる学校、変わらない学校』『学校をおもしろくする思考法』(以上、学事出版)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、最新著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP研究所)がある。

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