業務改善、3つの場をつくっていく【妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」第19回】

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妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」

学校の“働き方改革”進んでいますか? 変えなきゃいけないとはわかっていても、なかなか変われないのが学校という組織。だからこそ、教員一人ひとりのちょっとした意識づけ、習慣づけが大事になります。この連載では、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた妹尾昌俊さんが、「半径3m」の範囲からできる“働き方改革”のポイントを解説します。

執筆/教育研究家・一般社団法人ライフ&ワーク代表理事・妹尾昌俊

アイデアはそれなりに出るが

私は全国各地で、働き方改革について講演・研修をしているが、その中では、改善アイデアを出してもらうワークを行うことが多い。業務改善を進めた事例をいくつか紹介しながら、「あなたの学校の活動や業務について、ちょっとストレスや違和感があるものについて、仕分けをしてみよう。①やめる ②減らす、時短する ③やり方を変えるなどして、質を上げる」と呼びかける。

すると、わずか数分でもかなりの数のアイデアが出てくる。学校行事の見直し、職員会議のペーパーレス化、教材の共有、通知表の所見の簡素化(毎学期書いているが、年1回にできないか)、採点でのICT活用など。

問題意識があることはいいことだ。映画・ドラマの「踊る大捜査線」の人気セリフにあるように、事件は会議室で起きているのではない、現場で起きているのである。現場での気づきはとても大切なことだと思う。

だが、問題はここからだ。研修等ではこう呼びかける。「みなさん、研修会の場ではけっこうアイデア出るじゃないですか。でも、職場ではどうですか。こういう場はありましたか?」 おそらく、多くの学校には3つの場が足りていない。

①アイデアを出す場
②行動することを決める場
③フォローアップする場(進捗状況を確認して、軌道修正する場)

考えるだけではダメだ

①アイデアを出す場は、職員会議でも、校内研修でも、衛生委員会(労働安全衛生法上は50人以上の職場は必須、50人未満では義務ではないが、設置してもよい)などでもよいし、アンケートなどでもよいと思う。アイデアを出すときには、いくつか事例を共有して、アタマをやわらかくして考えてほしいこと、前例やこれまでの当たり前を一度疑ってみてほしいことなども伝えると、より効果的だろう。

だが、①をやっても、そのまま放置、という学校も少なくないのではないか。研修のときにはワイワイ、それなりには盛り上がるのだが、付箋をたくさん貼った模造紙が学校の倉庫で眠ったまま、なんて光景だから、②行動することを決める場が必要だ。ここでは、いわゆる5W1Hを協議して、決めていく。そうしないと、多くの人は日常が忙しいなかで、改善に動こうとはしない。考えることと、行動することとの間には大きな溝がある。

しかも、多くの学校は、①で20個、30個のアイデアが出ても、それほど多くを変えていけるエネルギーと時間は残っていない。変えるのにも労力はかかる。そのため、いくつかにアイデアを絞っていく、優先順位を考えていくプロセスが必要となる。

②では決めるということが大事になる。学校では、一部の反対意見があると、決めることを躊躇する校長等がいるようだが、あなたの学校はどうだろうか。50人いて、50人ともに納得、賛成してくれるアイデアなど、ほとんどない。そんなものがあれば、とっくの昔にやっているはずだ。賛否があるものも、ときには果敢に進めていくことが必要だ。あるいは、試行してみて、検証していけばよい(だから③の場も重要だ)。①、②の場を進めていくうえで、たとえば、図のように、アイデアを整理してみると、考えやすいのではないかと思う。

横軸は、法令や学習指導要領でマストかどうかで分けている。実は、マストではないこと、つまり学校や教育委員会の裁量で変えていけることは多い。縦軸は、時間をかけていく(もしくは時間は現状のままで、質を上げていく)か、減らしていくか。働き方改革は時短一辺倒ではない。むしろ、上のほうの時間をかけていくことに、ウェイトをおけるようにするためにも、減らすことをしっかり考えて進めていきたい。

ほかの整理の仕方もあるが、詳しくは拙著などもご覧いただきたい。いずれにしても、アイデアを整理し、抜けている領域や観点がないか、チェックしてほしい。そのうえで、たとえば、「時間を生み出す効果が大きいものを選んでいこう」「難易度の高いものから1つ、低いものから2つ選ぼう」といった感じで、一定の基準を設けて優先順位を考えていくとよいだろう。

『総合教育技術』2019年10月号に加筆

野村総合研究所を経て独立。教職員向け研修などを手がけ、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた。主な著書に『変わる学校、変わらない学校』『学校をおもしろくする思考法』(以上、学事出版)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、最新著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP研究所)がある。

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