学習指導案の書き方:簡略化フォーマットで教師の苦痛を軽減!

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追手門学院小学校講師

多賀一郎

指導案を書くのがつらいと感じたことがある。

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今年度は新型コロナの影響でこれまでにない対応を迫られる中、人手不足で多忙を極める教師の仕事内容そのものの合理化も議論されています。
多くの学校で「指導案」に苦しむ教師たちを見てきたという多賀一郎先生が、現代の事情に合ったカタチの新しい指導案のフォーマットを提案してくれました。

執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

研究授業へのハードルが下がる!学習指導案の簡略化の提案
写真AC

OJTが成り立たなくてもできることを考える

今、学校現場では時間がありません。教師には余裕がありません。いくつかの現場では、研究授業の学習指導案を書くことそのものが億劫になっているようです。

もちろん意欲的に指導案に取り組み、それが楽しくてやりがいとなっている教師もいます。学習指導案の教材観、児童観、指導観をしっかりと書くことで、授業の質を高め、授業力を向上することができるのですから。

しかし、指導案が苦痛だからと、研究授業を避けようとする教師たちもたくさんいるのが実態です。

さらに、今の現場は中堅教師が少なく、若手ばかりの年齢構成となっています。半分以上が30代前半までという学校も珍しくありません。それではOJTが成り立たず、若手に学習指導案を指導できません。

一部の学校では、教材観や児童観などを簡略化した指導案を使い始めています。しかし、その内容をよく見ると、五年生でこれまでに学んできた教材を羅列したり、指導書からそのままコピペしたりしたようなものが見かけられます。それでは、子ども理解や教材への解釈を深めたりすることなど、到底及びもつかないのです。

簡略にしても意味のある指導案を

様式は簡略化していても、その作成を通して子ども理解が深まり、教材の見方も広がるような指導案の書き方があればよいのではないでしょうか。そうすれば、現場の研究授業へのハードルも下がり、小さなステップではあっても、研究授業をする意味が高まるだろうと考えて、雛型を作ってみました。

練り込んだ学習指導案がよいことは間違いありません。
しかし、現状から考えて、負担が少なくて実のあがる指導案を模索するという考え方もあってよいのではないでしょうか。

ここでは、国語の学習指導案を例にして、児童観、教材観、指導観が少しステップアップできる、簡略指導案というものを提言したいと思います。

学習指導案に書く基本的な項目

指導案に書かれる基本的な項目について今一度考え方を整理してみます。

①学年、教科

②単元名、教材名

③実施日時、授業者

これらは、当然必要ですね。

④目標

目標は一点に絞り、たくさん並べないようにします。一つの授業には一つの目標だけでよいのです。

⑤単元の評価規準

「書くだけ」になるのなら、思い切ってなしにしても良いでしょう。

⑥児童観

目標に対する今の児童の状態を書きます。細かい学級の状態や、明るいクラス・元気なクラスなどといった教科の目標に関係ないクラスの状態は書かないようにします。

「書いてまとめる」ことがめあての場合
3分間で140字ほど(ツイッター程度)の文章を書ける子どもの割合を調べて、書きます。

「対話、話合い」が主な学習活動の場合
「グループで対話する時の子どもたちの様子が融和的かそうでないか」「学年のレベル(学習指導要領)に対してどの程度だと考えるか」を書きます。

「読む」ことがめあての場合
「〇〇という教材を読んできた」などという既習教材の羅列はいりません。既習教材名をあげても、子どもに力がついてきているのかは定かではないからです。テストでの読解力の正答率を書くとか、教材文を音読する力がどの程度かを書きます(発声、速度など)。

その他
・常にめあてに対する子どもの姿を書きます。
・箇条書きでもOKです。

⑦教材観

物語文なら
・あらすじはいりません。
・この教材の値打ちはここにあるという一点について考えを書きます。
・自分のクラスの子どもにとって本文が難解かどうか、なぜそう思うかを書きます。

説明文なら
・説明文の題材と子どもたちとの関連を書きます(親しみの持てる題材か? 興味関心が持てるものか? 出てくる用語は身近なものなのか? 等々)。
・めあてが段落相互の関係を考えるというのなら、その視点だけで書きます。目標から見た説明文の特徴を書きます。
・説明文のいろいろな特徴を書く必要はありません。

⑧指導観

ともかくシンプルに。自分のアイデアや調べたことを全て書く必要はありません。最も主張したい一点だけを短くまとめます。5、6行でよいでしょう。

⑨学校の研究に関わること

学校に応じて考えることではありますが、思い切ってカットしてよいと思います。そうすれば縛りが解けます。

「研究のための指導案か、若手にチャレンジさせるための指導案か」によって考えればよいのです。新任の公開授業などでは敬遠するべきです。

⑩単元指導計画

本来は必要なことですが、細かく書かないと授業の全体像はつかめません。簡略の主旨から考えると、目標か学習活動を一行だけで書けばよいでしょう。

⑪本時

Ⓐ本時のめあて…必要
Ⓑ本時の展開…必要(形式は自由)
Ⓒ板書計画…個人で準備すればよく、指導案に載せる必要はない。載せるとそれに縛られてしまいがちです。現物は授業で見られるのだから、写真を撮って話し合えばよく、評価は事後研で取り上げればよいのです。

簡略学習指導案の具体例

各項目について上記のように考えた結果、以下のような形が現状に合っていると考えています。国語科の学習指導案を例に実際に書いた例を紹介します。

①学年、教科
五学年 国語科学習指導案

②単元、教材名
「説明文のタイトルを読み取ろう」/『想像力のスイッチを入れよう』(光村五年下)

③実施日時、授業者
2020年6月30日 ◯◯小学校 多賀一郎

④目標
事例と意見の自分との関係を読み取り考えをまとめる。

⑥児童観
・メディアの特性について友達と話し合うという経験はほとんどない。
・普段使っているメディアへの関心を高めたい。
・短い時間でさっとまとめる力は半分以上がまだ身についていない。

⑦教材観
・筆者のあげる事例と自分の知識経験とを関連付けながら読み取り、自分の考えをまとめる単元である。
・教材文は五年生には少し難しい。
・自分に関連づけて読むことも慣れていない。
・最終的なめあては「自分の考えをまとめる」ことにあるので、大体を読んでいきながら自分との関連を考えていけばよいだろう。

⑧指導観
・友達と考えを聞きあうことで、経験の薄さを補い合う。
・主体的対話的で深い学びの一例として、冊子を渡して授業の見通しを持たせて、友達と聞き合いながら自分で進めていける形をとりたい。

⑩単元指導計画
⑴タイトル読みを通して、文章の見通しを持つ。
⑵すらすらと音読できるようにする。
⑶知っておきたい言葉を確かめる。
⑷本文から読み取ったことと考えたことをまとめる。
⑸体験や知識と意見を中心に文章をまとめる。
⑹グループで見せ合って意見をもらい、自分の文章をまとめ直す。

⑪本時
Ⓐ本時の目的
説明文のタイトルを読むことの意味を考えることができる。
Ⓑ本時の展開

Ⓑ本時の展開
クリックすると別ウィンドウで開きます

簡略学習指導案の具体例 ダウンロード用

下の画像をクリックするとPDFがダウンロードできます。A4用紙2枚に、充分な内容が簡潔にわかりやすくまとめられていることを実感してみてください。
(学校で指導案のフォーマットを提案する場合等にはコピー配付も可能です)

クリックするとダウンロードできます。

みなさん、ぜひ一緒に、今の時代に合った、現場のためになる指導案の形を一緒に考えていきませんか? この簡略指導案を使ってみてのご感想、新しい指導案の形についてのご提案は、以下のフォームからお寄せください。
(メールアドレスだけで簡単に投稿できます)。よろしくお願いします!

多賀一郎

●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

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