小1算数「たすのかな、ひくのかな」指導アイデア《たし算やひき算の演算》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小1算数「たすのかな、ひくのかな」指導アイデア タイトル

執筆/新潟県新潟市立南万代小学校教諭・渡邉祐美
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、新潟市立新津第一小学校・新津第一幼稚園 校園長・間嶋哲

年間指導計画 たすのかな、ひくのかな

単元の展開

第1時 たし算やひき算の演算決定

第2時(本時)習熟問題

本時のねらい

順序数を含む場面を式に表したり、図に表したりすることを通して、順序数の場面を数量の関係に着目し、計算の意味や計算の仕方を考えることができる。

評価規準

  • 加法、減法の場面をより一層理解し、順序数、集合数に関連した加減法の計算の意味やその方法を理解することができる。また、どの演算を用いればよいかを判断し、立式して答えを求めることができる。(知識・技能)
  • 加法、減法が用いられる場面を、具体物や図などを用いて考え、演算決定する力を養う。(思考・判断・表現)
  • 図や具体物などを用いて表すなどして、具体的な方法で演算を判断しようとする態度を養う。(主体的に学習に取り組む態度)

本時の展開

(校外学習で行った動物園の写真を見せて)これはどこでしょう。

動物園です

この前、校外学習で行ったところです。

何をしているところですか。

アルパカを見ているね。

今日は、動物園での問題に挑戦しましょう。

問題
10人で アルパカを 見ています。みつきさんは 左から 4ばん目です。みつきさんの 右には なん人いますか。

あれ、今日はキーワードがない……。

どんなキーワードがないのですか。

「みんなで」「ぜんぶで」「のこりは」「あわせて」、何もありません。

たし算かな、ひき算かな。

分からないな。

見通し

では、実際に並んでみましょう。

※子供たちを並ばせる。

ポイント
学級の実態に合わせて、実際に子供たちを並べてみるとよいでしょう。問題場面のていねいな把握はとても大切です。子供たちに問題場面の具体的なイメージをもたせ、問い(学習のねらい)につなげます。

みつきさんと同じ場所に並んでいるのはどの子ですか。

左から4番目だから、〇〇さんです。

(数え出す子もいる。)〇〇さんの右には、1、2、3……。

6人だよ。6人が答えだね。

答えは6人なのでしょうか。では、何算で答えが求められそうですか。

答えはすぐ分かったけど、どんな式にすればいいかな。

学習のねらい
どのように考えたら、式が分かるかな。

見通し

何を使って考えますか。

この前、図を使って考えたから、図をかいて考えたい。

僕は、ブロックを使って考えよう。

自力解決の様子

A つまずいている子
・図はかけるが、何を求めればよいか理解できていない。
 例 式6+4=10 答え 10人
・図やブロックを活用して、答えは導き出せる。


B 素朴に解いている子
・図やブロックを活用して、式を導き出し、答えを求めることができる。


C ねらい通り解いている子
・図やブロックを活用して式と答えを導き出し、演算決定の理由を説明することができる。

学び合いの計画

単元計画は2時間扱いの短い単元ですが、これまで学習してきた加法、減法をふまえて、順序数を含む加法、減法、異種のものの数量を含む加法や減法、求大、求小といったさまざまな計算について学習します。

習熟のためにワークシートを解かせたり、多くの問題に取り組んだりする活動も必要ですが、学級の実態に合わせて、本実践のように子供がつまずきがちな問題を通して、ていねいに問題場面を把握したり、図の必要性を学ばせたりすることも大切だと考えます。

自力解決の際は、図やブロックなどの具体物を用いて問題場面を表させ、それを基に考えをまとめさせます。ただ、どうしても考えをまとめるまでに差が生まれます。

そこで、困っている子供は、早い段階で友達から助言をもらったり、子供どうしで考えを伝え合ったりすることができる環境を保障します。

早々に自分の考えがまとまった子供は、困っている友達の手助けだけでなく、友達に自分の考えを説明することで、自分の考えに自信をもったり、間違いに気付き修正したりすることができます。

多くの子供が考えをまとめた段階で、ペアで互いの考えを紹介する時間をとります。その際、「どうして〇〇算にしたの? 図やブロックを使って教えてください」と尋ね合うよう促します。書いた図やブロックなどの操作を根拠に、加法や減法を確実に判断できるようにするためです。

1人1台端末活用アイデア

1年生は、自分の考えを文章化することが難しい子供が多いです。

ノートに考えをまとめることは難しくても、タブレットの録音機能を活用して、自分の考えを説明させることができます。加えて、みんなの前で考えを伝えることが苦手な子供の考えも、テレビにミラーリングして全体で共有することもできます。

また、いざみんなの前で説明する場面になると、緊張などで固まってしまったり、ノートにまとめていた考えと異なる内容を発表したりしてしまうのも1年生の特徴です。そんなとき、タブレットの記録機能は大いに活用できます。

それぞれの子供たちに合った表現の仕方を選択させます。

ノート例

ノート例

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

みんなの考えを確認していきましょう。まず、先生の考えを聞いてください。先生は図をかいて考えました。みつきさんは、左から4番目で☆マークにしました。ここからここまで4人です。みつきさんの右には6人いるから、合わせて10人です。式は、6+4=10。だから、答えは10人です。

図表1

ポイント
4+6=10という考えを取り上げて、なぜ違うのか全体で共有するとよいでしょう。その際、改めてこの問題では何を求める必要があるのか、問題文に着目させ理解を促します。

先生、違います。確かにアルパカを見ていたのは10人だけど、それは答えじゃないです。

どうして10人では間違いなのでしょう。

だって、問題を見ると、「みつきさんの みぎには、なん人いますか」と聞かれています。

先生の答えだと、みつきさんの右に10人いることになるから変です。

先生の考えを図にするとこうなります。だから、アルパカを見ていたのは10人じゃなくて、14人になってしまいます。       

図表2

本当ですね。だから、6+4=10。答え10人は間違いですね。みなさんの考えはどうなりましたか。

私は、ブロックを使って考えました。10人でアルパカを見ているので、ブロックを10個並べます。みつきさんは、左から4番目なので、このブロックを白に変えました。みつきさんの右にいる人を知りたいので、数えると6です。だから、答えは6人です。 

図表3

答えは分かったけれど、式を使って求められませんか。      

付け足しできます。僕は図にかいて考えました。みつきさんは左から4番目です。10人でアルパカを見ているから、10-4=6で6人です。

もっと言えます。みつきさんの右側にいる人を知りたいから、図のこの4人を引けば答えが出てきます。

図表4

では、確認します。10-4の10は、図のどこにありますか。

ここ全部です。全部で10人の「10」です。

10-4の4は、図のどこにありますか。

4番目の「4」のことです。

4番目までの「4人」のことだね。

4番目のみつきさんだけひき算してもダメだね。

そうですね。だから、4番目のみつきさんまでの4人を引くといいのですね。

ポイント
順序数を集合数と見ることで、減法で演算できることをおさえ、価値付けます。

図にかいたり、ブロックを使ったりして考えると、たし算かひき算か決められるね。

※図は思考力・判断力・表現力の育成には欠かせない力です。場面を図に表すことで、どの場面も同じ加法や減法に適用されることを、図を根拠に理解できるようにすることが大切です。また、図を基に演算決定できた際は大いに価値付け、図の有用性を子供たちに実感させます。

学習のまとめ
図をかいたりブロックを使ったりして考えると式が分かる。

評価問題

ひとみさんは まえから 6ばん目です。ひとみさんの うしろに 3人います。みんなで なん人 ならんで いるでしょう。

子供に期待する解答の具体例

前 ○○○○○●  ○○○ 後ろ
    6人   3人
式 6+3=9
答え 9人

感想例

文だけだと、よく分からなかったけれど、図にかいてみるとよいことが分かりました。たし算をするか、ひき算をするか迷ったら、まず、図をかいてみようと思いました。

板書例

板書例

イラスト/横井智美、やひろきよみ

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