小4国語科「ヤドカリとイソギンチャク」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「ヤドカリとイソギンチャク」(東京書籍)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小四 国語科 教材名:ヤドカリとイソギンチャク(東京書籍・新しい国語 四上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/愛知県西尾市立佐久島しおさい学校・宮川 周

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、子供たちが段落同士のつながりを理解し、まとまりを意識して文章の構成を捉える力を身に付けられるようにします。また、筆者がそのように文章を組み立てたことによるよさなどを話し合い、捉えられるようにします。

教材文である「ヤドカリとイソギンチャク」は、「はじめ」「中」「終わり」という説明的な文章の基本的な構成をとっています。
「中」が三つの「問い」とそれに対する「答え」という形で展開されており、段落同士のまとまりが捉えやすくなっています。
また、接続する語句や指示する語句に着目することで、段落同士のつながりが捉えやすいというのも、本教材の特徴の一つです。

このような教材文の特徴をいかした学習活動を通して、子供たちが、筆者は伝えたいことや考えを読み手に伝えるために、どのように文章を組み立てているのか、そのよさはどのようなところにあるのかを捉えられるようにします。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、「段落同士のまとまりを捉え、表や『生き物ひみつカード』にまとめたり、文章の組み立てについて話し合ったりする」という言語活動を設定します。

本教材の特徴をいかし、具体的には、
①「言葉の力」(教科書の各単元の冒頭に示されている、単元において重点となる指導事項を子供と共有できる表現で表したもの)の観点から既習の学習内容を振り返り、本単元の学習課題を立てる(第1時)、
②段落ごとに切り分けられた教材文を、もとの文章になるように並び替え、段落のまとまりについて考える(第2・3時)、
③表やカードに整理しながら、大きなまとまりごとに書かれた内容を捉える(第4~7時)、
④文章の組み立てや筆者の説明の仕方のよさについて話し合う(第8時)
ことに取り組みます。

活動においては、子供たちが各段落に書かれている内容を捉えるとともに、段落同士のつながりやまとまりに着目しながら、筆者によってどのように文章が組み立てられ、それにはどのようなよさがあるのかという見方・考え方を働かせて文章を読んでいけるようにします。
そうすることで、子供たちは段落同士のつながりを理解し、まとまりを意識して文章の組み立てを捉えられるようになります。さらに、筆者の伝えたいことや考えを捉え、それを伝えるための筆者の説明の仕方のよさについて考える力を高めていくこともできます。

4. 指導のアイデア

(1)文章の内容と形式の両面に着目し、主体的に学習に取り組めるようにする

説明的な文章を教材とする学習では、子供たちが内容面だけでなく、文章の構成や説明の仕方など、形式面にも着目しながら文章を意欲的に読み、各単元の「言葉の力」を主体的に身に付け、高められるようにすることが大切です。
そのために、①「言葉の力」の観点から既習の学習内容を振り返り、本単元の学習課題を立てる(第1時)、②「生き物ひみつカード」に整理しながら、大きなまとまりごとに書かれた内容を捉える(第4~7時)ことに取り組みます。

本単元は、4年生で最初の説明的な文章を教材とする学習です。そこで、子供たちが前学年の学習とのつながりを意識することができるように、第1時では3年生での学習を振り返る場を設定します。本単元では、3年「自然のかくし絵」で学んだ「言葉の力」である「だんらくの内ようをとらえる」を発展させ、「だん落どうしのまとまりをとらえる」という力を身に付けられるようにしていくことを子供たちと共有します。

共有するにあたり、教科書上、3年生最後の説明文教材として位置付けられている「人をつつむ形-世界の家めぐり」を活用してみてはどうでしょうか(本原稿では、対象としている4年生が令和2年度版の教科書を使用していることを想定しています)。
「人をつつむ形-世界の家めぐり」は、「はじめ」「中」「終わり」という文章構成をとってはいませんが、モンゴルやチュニジア、セネガルの家の工夫について、教科書の見開き1ページごとに説明されており、文章のまとまりが視覚的にも捉えやすいという特徴があります。
また、写真や図、「大草原の白い家-モンゴル」のような見出しなどを用いて、読み手に分かりやすく説明しているのも特徴の一つです。

このような特徴をもつ「人をつつむ形-世界の家めぐり」と本教材を比較して提示することで、「『ヤドカリとイソギンチャク』は、内容ごとに文章が分けられていないね」「それぞれの写真やイラストも、どこの段落のことを説明しているのだろう」「自分たちでまとまりを見つけながら読むと分かりやすいかもしれない。見出しもつけてみたらどうだろう」といった意識や雰囲気を子供たちや教室全体に生み出せるでしょう。そのような意識や雰囲気が子供たちの主体的な学びにつながります。

その後、教科書にある写真や動画資料を活用したり、題名や問いかけの文から内容を予想する活動を取り入れたりして、教材文の内容への興味・関心や読むことへの意欲を高めます。
そして、一読後に子供たちが抱いた感想や疑問、これから学んでいきたいことなどを伝え合ったうえで、文章の形式面に焦点を当てた学習課題を子供たちと設定します。こうすることで、子供たちは文章の内容と形式の両面に着目しながら文章を読み、主体的に学習に取り組むことができます。

(2)「生き物ひみつカード」を作り、文章の形式面への理解を促す

第4~7時では、「生き物ひみつカード」に整理しながら、大きなまとまりごとに書かれた内容を捉えていきます。

カードは教材文の構成に応じて、「はじめ」の1枚、「中」の大きなまとまりごとに1枚ずつ(計3枚)、「終わり」の1枚の計5枚で1セットとします。「中」のカードについては、表面に「問い」、裏面に「答え」と「事実」や「事例」に関する内容をまとめます。

「生き物ひみつカード」

このように、目には見えない段落同士のつながりやまとまり、文章の組み立てを具体物にして整理し、まとめることで、文章には段落同士のつながりやまとまりがあること、「問い」と「答え」の段落によって、「中」にもいくつかの大きなまとまりがあることなど、文章の形式面への理解を促しやすくなります。

また、カードを活用し、「このカードとこのカードの順番は、入れ替えてもいいのではないでしょうか」などと発問することで、子供たちが筆者の説明の仕方やその効果について、考えやすくもなります。
さらに、時間に余裕があれば、教科書の「こんな本もいっしょに」に取り上げられている本を活用し、個々で興味のある生き物に関する文章を読み、「生き物ひみつカード」を作る学習に発展させてもよいでしょう。

(3)対話を通して学習内容の理解を図り、考えを広げ、深められるようにする

本単元では、主に、①段落のまとまりについて考える(第2・3時)、②大きなまとまりごとに小見出しをつける(第4~6時)、③筆者が最も伝えたいことについて考える(第7時)、④文章の組み立てや筆者の説明の仕方のよさについて考える(第8時)場面において、ペアやグループでの協働的な活動や話合いをします。

各場面において、子供たちが自分の考えをもったうえで、目的を明確にしたペアやグループでの活動を取り入れ、対話を引き出します。そうすることで、子供たちが学習内容の理解を確かなものにすることに加え、自分の考えに友達の考えを取り入れたり、自分の考えと友達の考えを比較したりしながら、考えを広げられるようになります。
特に、本単元の終末にあたる第8時では、話合いを通して、子供たちが自分だけでは気付かなかった説明の仕方やその効果に気付けるようにして、説明の仕方や表現の工夫に関する見方・考え方を広げ、学びを深められるようにします。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

本単元では、教材文を読んで捉えた内容を「生き物ひみつカード」にまとめる場面と文章の組み立てや筆者の説明の仕方のよさについて考え、話し合う場面において、1人1台端末の活用を位置付けています。ここでは、「Keynote」や「SKYMENU Cloud」の活用を想定し、指導の際のポイントを説明します。ただし、いずれの場面においても1人1台端末を使用しなくても学習を進めることはできます。
重要なのは指導事項を実現することです。端末を使うことが学習の目的となってしまわないように気を付けていきましょう。

(1)文章を読んで捉えた内容を「生き物ひみつカード」まとめる場面

第3時において、教材文を五つの大きなまとまりに分けた後、第4時~第7時では、意味段落の内容を「生き物ひみつカード」にまとめていきます。その際、「Keynote」を活用してカードを作成してみてはどうでしょうか。

「Keynote」を使って子供たちと「生き物ひみつカード」のテンプレートを作成し、大きなまとまりごとに捉えた内容やグループで話し合った内容などを入力していきます。子供たちが端末を活用することで、カードにイラストを取り入れたり、図形などを用いたりして、教材文を読んで捉えた内容を整理し、工夫して分かりやすくまとめることが可能になります。
また、修正や保存が容易にできるというよさもあります。

(2)文章の組み立てや筆者の説明の仕方のよさについて考え、話し合う場面

第6時や第7時では、子供たちが文章の組み立てや筆者の説明の仕方などについて目を向けて、考えをもつことができるように、それらに関わる選択型の発問をします。その際、「SKYMENU Cloud」の「ポジショニング」機能を活用してみてはどうでしょうか。
二つの立場のうち、どちらを選択するか、子供たちがマーカーを移動させて立場を明確にするとともに、そのように考える理由をコメント欄に書き込むことができます。友達がどちらの立場を選んだのか、それはどのような理由からなのか、容易に共有することが可能であり、教師が意図的に指名する際にも役立ちます。

「SKYMENU Cloud」の「ポジショニング」機能画面

第8時では、文章の組み立てや筆者の説明のよさについて考え、話し合います。その際は、「SKYMENU Cloud」の「発表ノート」を活用することができます。

「文章の組み立て・説明の仕方」と、その「よさ・こう果」について書き込むことができる表を「発表ノート」で作成し、子供たちに配付します(下のキャプチャ画面参照)。
端末の「SKYMENU Cloud」を活用することで、子供たちが個々で考えを書き込んだ後、グループで話し合う際に、「グループワーク」機能を活用し、同じグループの友達の考えを効率的に共有しながら話し合うことができるというよさがあります。
また、話合いを終えて、自分の「発表ノート」に考えを書き加えたり、修正を加えたりして、考えを整理し、まとめることも容易にできます。

「SKYMENU Cloud」の「発表ノート」画面

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: ヤドカリとイソギンチャク ~文章の組み立てや筆者のくふうをとらえよう~

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 教材文を読んで感想を伝え合い、学習課題を立てる。

・第二次(2時3時4時5時6時7時
②③ 文章に書かれているおおよその内容を確かめ、段落のまとまりについて考える。
④~⑥ 小見出しをつけたり、表や「生き物ひみつカード」に整理したりしながら、大きなまとまりごとに書かれた内容を捉える。
⑦ 筆者が最も伝えたいことについて話し合い、図やイラストに整理してまとめる。

・第三次(8時
⑧ 文章の組み立てや筆者の説明のよさについて考え、話し合う。また、単元を通して学んだことを振り返る。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
1時間目のワークシート例
1時間目のワークシート例
「主体的な学び」のために

第一次(1時)では、子供たちが本単元の学習への興味・関心を高めるとともに、学習への見通しや課題意識をもち、主体的に学習に取り組むことができるようにします。
そこで、文章の内容と形式の両面に焦点をあて、教科書の扉の写真や文、QRコードで掲載されている動画資料から感じたことや、本文を一読した感想を伝え合い、学習課題を立てていきます。

学習課題を立てるにあたり、教材文を一読した後、感想を書いて伝え合います。
感想には、内容面については特に印象に残ったことや、予想に対して実際はどうだったか分かったことなどを、形式面については、段落同士のつながりや筆者の説明の仕方で気付いたこと、これから学習していきたいことなどを書くようにします。
これらのことを、教師の範読前に子供たちに伝えておくことで、子供たちは視点をもって教材文を読むことができ、感想も書きやすくなるでしょう。
また、子供たちが感想を書く際に教師が机間指導をして考えを把握し、個別に「筆者の説明の仕方で、分かりやすいなと思ったところがあるかな」などと対話をすることで、文章の形式面に着目した感想を詳しく引き出すことができます。そして、説明文の形式面に関する感想に焦点をあてて、本単元で身に付けたい「言葉の力」に沿った学習課題を子供たちと練り上げていくことにつなげられます。

【説明文の形式面についての感想を伝え合い、学習課題を立てる場面】

では、段落同士のつながりや筆者の説明の仕方で気付いたことや、これから学習していきたいことなど、感想を伝え合いましょう。

「なぜ…でしょうか」っていう「問い」の文がたくさんありました。

私も似ていて、「問い」のある段落が三つありました。

三つ? 二つしか見つからなかったよ。

2段落と7段落と10段落の三つだよ。

あ、本当だ。

みんなも同じかな? 続けてどうですか?

イラスト/横井智美

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