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美しい日本の伝統・切り紙に隠された探究学習への扉|都市編⑤【地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種】

連載
地域と生活の科学~見つけよう!身の回りの探究学習の種~

四天王寺大学教育学部准教授

仲野 純章
地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種 バナー
イラスト/坂齊諒一

7月は七夕の季節です。商店街や駅前、学校の廊下など、町の中にも色とりどりの七夕飾りを見かけます(図1)。この記事が掲載される頃には季節は少し進んでいるかもしれませんが、今回は七夕飾りでもおなじみの「切り紙」に着目してみたいと思います。見た目には素朴でやわらかな紙の飾りですが、その背後には、意外にも複雑な仕組みが潜んでいます。

七夕飾り
図1

執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章

日本に古くからある「切り紙」という文化

江戸時代、庶民の間で楽しまれていた遊びの一つに「切り紙」があります。紙を折ってはさみで切り、開いたときに現れる模様を楽しむ「紋切り」、紙を折らずに図柄を切り出す「切り絵」、そして上下左右対称に規則的な切れ込みを入れ、引き伸ばすと網目状の模様が現れる「網」など、さまざまな種類があります。

今回、この「網」に見られる切れ込みの形態に注目しますが、こうした構造を「切り紙構造」と呼びます。切れ込みの入れ方次第で、引き伸ばしたときに大きく形を変えながら伸びるという特徴をもっています。七夕飾りに見られる、引っ張るとひらりと広がるあの形は、まさにその代表例です。

一見すると単純な細工に見えますが、そこには大きな可能性と奥深さが潜んでいます。

切り紙構造の可能性

「伝統的」「古風」なイメージのある切り紙構造ですが、工学的な観点からも注目されています。

切り紙構造に力が加わると、切れ込みの部分が開いたり角度が変わったりして、全体の形が変化します。この変化の仕方を利用すれば、「どのくらいの重さがかかったか」などといったことも知ることができます。実際に、そうした観点から簡易型の重量センサーとして応用する研究や、変形を測る部品を組み合わせて重量計として活用することなども検討されています。

また、「日本」を超えて、海外でも研究が進められています。たとえば、太陽電池への応用が検討されています(1)。切り紙構造を伸ばすと、切れ込みの部分が開き、面全体が少しずつ傾いていきます。研究ではこの性質を利用して、太陽電池そのものの向きを自動的に変える仕組みが提案されています。つまり、別の機械で太陽を追いかけるのではなく、材料自体が「力を受けて切り紙構造が開閉・変形することで、太陽電池の向きが変化し、太陽光を受けやすい角度に近づく」ように設計されているのです。これにより、構造を軽く・薄くしたまま、発電効率を高めることができます。

切り紙

あるいは、これも海外における研究の事例ですが、切り紙構造を「メタマテリアル(材料そのものではなく、その“形や構造”によって性質が変わるように作られた材料)」としてとらえ、力を加えることで性質そのものが変化する仕組みも提案されています(2)。たとえば、切れ込みの入ったシートを引っぱると、単に伸びるだけでなく、構造全体がねじれたり、曲がったり、さらには体積が大きく変化するように設計できます。これにより、同じ材料でも“状況に応じて動き方が変わる”といった、従来の材料にはない性質を持たせることができます。

このように、切り紙構造は、身近な紙の遊びにとどまらず、工学的応用を含めて、まだまだ多くの可能性を秘めた存在だといえるでしょう。

切り紙構造の複雑な変形挙動(3)

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