ページの本文です

【小学校理科】「みんな同じ実験」をやめてみる〜結果の“ズレ”が生む、子ども同士の自然な対話|小4「もののあたたまり方」【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】シリーズタイトルバナー

理科の授業では、観察や実験の後に子どもたち同士で対話する場面が多くあります。しかし、せっかく話合いの時間を設けても、意見がなかなか出てこなかったり、表面的なやり取りで終わってしまったりと、対話を深めることの難しさを感じている先生も多いのではないでしょうか。「もっと子どもたち同士でつながってほしい」――そんな願いを、授業のデザインそのものに組み込むことができたらどうでしょう? 今回は、子どもが自然と話したくなる、聞きに行きたくなる授業づくりの工夫を紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/京都府公立小学校教諭・川口順平
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

自然と“結果の交流”が生まれる実験を、「デザイン」する

「では、結果について話し合ってみましょう」――そう声をかけても、教室がしんと静まりかえってしまう。そんな経験はないでしょうか。

全員が同じ器具で、同じ手順の実験をしていれば、結果もほとんど同じになります。似たような結果を並べても、そこから生まれる対話はあまり多くありません。子どもたちは「うん、そうだよね」とうなずき合うだけで、それ以上話が広がっていかないのです。

こういうとき、私たちはつい「話し合いなさい」「気づいたことを伝え合いましょう」と、対話そのものを促そうとします。けれど、対話は指示すれば生まれるものではありません。実は、対話が生まれるかどうかは、“話し合う前”の実験のデザインの段階で、すでに決まっていることが多いのです。

今回は、子どもたちの間に「結果の交流」が生まれる実践をご紹介します。

小4理科もののあたたまり方実験風景

実験の方法を、子どもに選ばせる

4年『もののあたたまり方』の授業では、水を温める実験で使う器具を、試験管・ビーカー・フラスコの中から、子どもたち自身に選ばせました。さらに、水の動きが目で見えるように、入れる物も、しおんインク・ゆずこしょう・えのぐの中から選択制にしています。

「試験管にする? それともビーカー?」
「色をつけるなら、しおんインクとゆずこしょう、どっちが見やすいと思う?」

こうした小さな問いかけを重ねながら、器具と材料を子ども自身に決めさせていきます。教師があらかじめ「今日はこれを使います」と決めてしまえば準備は簡単ですが、それでは全員が同じ条件で実験することになり、結果も似通ってしまいます。

一方、器具や材料を子どもに委ねると、当然ながら実験の条件は少しずつ違ってきます。試験管を選んだ子と、フラスコを選んだ子とでは、同じ「水の温まり方」を調べていても、目に見える現象の見え方が変わってくるのです。これは、実験を“甘くする”ということではありません。むしろ、条件を子どもに委ねること自体が、このあとの対話を生み出すための「仕掛け」になっています。

実際、同じ「水の温まり方」を調べていても、子どもたちの記録はこれだけ違ってきます。

記録例1:試験管×ゆずこしょうを選んだ子の記録

記録例1:試験管×ゆずこしょうを選んだ子の記録

記録例2:フラスコ×ゆずこしょうを選んだ子の記録

記録例2:フラスコ×ゆずこしょうを選んだ子の記録

記録例3:ビーカー×しおんインクを選んだ子の記録

記録例3:ビーカー×しおんインクを選んだ子の記録

記録例4:ビーカー×ゆずこしょうを選んだ子の記録

記録例4:ビーカー×ゆずこしょうを選んだ子の記録

記録例5:試験管×えのぐを選んだ子の記録

記録例5:試験管×えのぐを選んだ子の記録

同じ「水の温まり方」という現象を見ていても、選んだ器具や入れたものによって、目に映る動きも、それを言い表す言葉も、これだけ違ってきます。「ぐるぐる回る」「上に行ってグルグル回る」「温めたところから温まる」――どれも間違いではなく、同じ現象を、それぞれの子が自分の言葉で捉えた結果です。この記録の違いが、次の対話の材料になっていきます。

結果の“ズレ”が、対話の入り口になる

この記事をシェアしよう!

フッターです。