ピンチはチャンス! 実験結果の“ズレ”を活かして子どもを伸ばす「委ねる」授業の技術|小6「水溶液の性質とはたらき」小5「植物の発芽と成長」【理科の壺】

理科の授業で、班によって予想や実験結果がバラバラになってしまい、焦った経験はないでしょうか。でもその「ズレ」こそが、子どもがぐっと伸びるチャンスなのです! 今回は、教師が「委ねる勇気」をもつことで、ズレが「対話」と「探究」の原動力に変わっていく授業の実践を紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県横浜市公立小学校教諭・刀根息吹
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
「ズレ」はチャンス! 子どもが伸びる「委ねる」授業のワザを紹介します
理科の授業をしていて、
「あれ、班によって予想がバラバラだぞ…⋯」
「結果がそろわない…どうしよう」
と焦ったことはありませんか。
指導書通りに進めたいのに、子どもの考えや結果が一つに収束しない。そんなとき、つい教師がまとめにかかってしまいがちです。
でも実は、その「ズレ」こそが、子どもの学びを深めるチャンスなのです!
予想がバラバラなのは、子どもたちが自分の経験をもとに本気で考えている証拠。
結果がそろわないのは、実験方法を見直す絶好の機会。
今回は、私が日々の授業で大切にしている「委ねる」視点から、ズレを活かす授業づくりについてご紹介します。
①結果がそろわない=方法を見直すチャンス!
実験の結果が班によってバラバラになると、つい焦ってしまい、何とか理由をつけて子どもたちを納得させて先に進めたくなります。しかし、ここで一度立ち止まることで、子どもの力はぐっと伸びます。
「どうして自分の班とあの班で結果が違うんだろう?」
「同じようにやったはずなのに…⋯」
こうしたつぶやきが出てきたら、実験方法を見直す絶好の機会です。
ここでは、6年生『水溶液の性質とはたらき』の単元を例にそんな場面を紹介します。
塩酸に鉄を溶かした液を蒸発させて、出てきた固体がもとの金属と同じ物かどうかを調べる実験があります。出てきた固体が鉄かどうか確かめるために、磁石を固体に近づけ引きつけられるかを検証します。本来であれば、出てきた固体は鉄ではなくなっているので引きつけられません。

しかし、私が行った授業では1つの班が「引きつけられる」という結果を出しました。

結果がそろわず焦ってしまう場面ですが、グッと我慢して子どもに委ねます。他の班の結果を共有していると、子どもがこの結果を見て、
「僕の班だけ結果が違っている!」
「5班の結果は他と違ってない? どうやってやったの?」
と子どもたち同士で班に顔を出し、話合いを始めました。
「確かに動いてるね」
「だけど、もとの金属と同じかどうかだから⋯⋯」
「動き方が違うね! だから、もとの金属と同じとは言えないね」
と、子どもたちが議論し始めました。他の班との結果のズレこそ、子どもたちが対話する必要感につながります。
さらに、子どもたちは、
「でもなんで、この班だけこの個体が動いたのかな」
「鉄が溶け残ってるんじゃない?」
「スチールウールが混ざっちゃったから?」
とその原因を突き止めようとさらに話合いを広げる姿も見られました。
ここで大事なのは、自分の班だけでなく他の班の結果にも目を向けられるかです。
結果を共有することで、自分の班の結果が他の班と違うことに気付きます。そのために、Googleスプレッドシートなど、ICTを用いてリアルタイムで結果を共有しています(下図参照)。
結果がずれた場合、他の班の結果を見て考察を行うのも大事ですが、時間が許す限り、もう一度実験させてあげましょう。「次はそろえたい」という思いから、子どもたちは自分で条件を整え直し、より正確な実験に向かっていきます。

