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実験が失敗した!その瞬間に始まる理科の学び|6年生「植物の体のつくり」【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】シリーズタイトルバナー

理科の授業では、観察や実験を通して自然の仕組みを確かめていきます。しかし、実験はいつも教科書どおりの結果になるとは限りません。思い描いていた結果が得られないとき、授業がうまく進まなかったと感じてしまうこともあるのではないでしょうか。
けれども、科学の探究は本来、試行錯誤の連続です。うまくいかない結果に出合ったときこそ、「なぜだろう」「どうすれば確かめられるだろう」と考える学びが生まれます。今回は、実験の失敗をきっかけに探究が深まっていく授業の姿を、小学校6年「植物の体のつくり」の実践を通して紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/奈良女子大学附属小学校教諭・中野直人
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

実験失敗は、子どもたちの大切な学びとなる

これまでの理科授業は、「実験は一度で成功するもの」という前提で組み立てられていることが少なくありません。しかし、本来の科学的な探究は試行錯誤の連続です。うまくいかない結果に出合い、その理由を考え、方法を見直し、もう一度試してみる。その過程の中でこそ、自然の仕組みへの理解は深まっていきます。

そこで大切になるのが、失敗を避けるのではなく、失敗を生かすことを前提に授業を構想することです。最初から教師が正しい実験方法を全て示すのではなく、「どうすれば調べられるだろう」と子どもたちが考える場面をつくります。そして、実際にやってみる中で思い通りの結果が出ない経験に出合います。そのとき、「なぜうまくいかなかったのか」「どうすれば確かめられるのか」と考える探究が始まるのです。

実験が予定通りに進まないことは、授業の失敗ではありません。むしろ、子どもたちの探究が動き出す大切な瞬間だと言えるでしょう。

単元導入での失敗が生きる― 小学校6年「植物の体のつくり」(水の通り道とデンプンの学習)

ここでは、小学校6年「植物の体のつくり」の学習で見られた、子どもたちの試行錯誤の様子を紹介します。

本単元では、植物の体の中を水がどのように通っているのか、また植物が葉で養分をつくり出しているのかを調べます。子どもたちはこれまでの生活経験や学習から、植物が水を吸い上げたり、光合成によって養分をつくったりしていることを知っていました。そのため、「調べれば水の通り道もデンプンも見付けられるだろう」と考えている子どもが多くいました。

単元の導入では、教師が実験方法を示すのではなく、子どもたち自身が考えた方法で確かめてみることにしました。子どもたちは校庭で植物を採取し、ヨウ素液を使って葉にデンプンがあるか調べたり、茎や葉を切って水の通り道を探したりします。また、色水を吸わせれば水の通り道が分かるのではないかと考える子どももいました。

ところが、実際にやってみると、思うような結果は得られません。葉に直接ヨウ素液をかけてもヨウ素デンプン反応は見られず、葉を細かく刻んでみても結果は変わりませんでした。色水を使ってみたグループでも、わずかに色づく植物があっただけで、水の通り道をはっきりと確認することはできませんでした。

結果を持ち寄って交流すると、どの班も「うまくいかなかった」という報告が続きました。調べれば確かめられると思っていた子どもたちにとって、この結果は大きな驚きだったようです。“ふりかえり”には、「調べた人が全員うまくいかなかったことはしょうげきだった」と書く子どももいました。

しかし、このつまずきがあったからこそ、「どうすれば確かめられるのだろう」という新たな問いが生まれました。子どもたちは方法を工夫したり調べたりしながら、もう一度実験をしてみようと考え始めます。

切り花を鮮やかに染める市販の染色液を使うことや、ヨウ素デンプン反応を見やすくするためのアルコールでの脱色の必然性が子どもに感じられるようになってくるのです。

単元導入で経験した「できると思っていたことができない」という体験が、その後の探究を生み出すきっかけとなったのです。

実験の失敗が、実験方法について妥当性を検討する学習へとつながる

本単元では、日光に当てたはずの葉が、教科書に書いてあるとおりの方法で実験を進めても、ヨウ素デンプン反応を示さないということもあります。

どうして期待していた結果にならないのか子どもたちと考えると、日光に当てた量が少なかったのではないか、ヨウ素液の色が薄いあるいは、濃かったというように次々と問題点を出していきます。子どもたちと実験の改善点を出し合い、実際に試してみると一度目よりも良い結果が得られるでしょう。妥当性を検討する学習にもってこいと言えます。

試行錯誤の時間をどう確保するか

こうした学習を行うと、「時間が足りなくなるのではないか」と心配になるかもしれません。確かに、試行錯誤の時間を大切にするには、ある程度の余裕が必要です。

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