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田んぼの生き物 ―不思議な「カブトエビ」に着目して―|自然編③【地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種~#9】

地域と生活の科学~見つけよう!身の回りの探究学習の種~

四天王寺大学教育学部准教授

仲野 純章
地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種 バナー

苗代田(なわしろだ)である程度の大きさに成長させた稲の苗を田んぼに移し替える作業を「田植え」といいます。田植えの時期は地域によって異なりますが、一般に5〜6月に行われます。水が張られた田んぼは、朝や日中は光にきらめき、夕方には西日に染まってやわらかな橙色を映し(図1)、季節の移ろいを静かに感じさせます。今回は、こうした田んぼという環境そのものに目を向けてみましょう。実は田んぼは、私たちが思っている以上に多くの生き物が暮らす場所なのです。

西日に染まってやわらかな橙色を映す田んぼ
図1

執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章

田んぼは生き物の宝庫

田んぼには、実に5000〜6000種類もの生き物がいるとされています。そう聞くと驚かれるかもしれません。「そんなにいるようには見えない」と感じる人も多いでしょう。しかしそれは、「時間」「空間」「生物サイズ」といった「スケール(ものさし)」の違いによって、生き物の見え方が変わるためだともいわれています(1)。

「時間」スケール
田んぼは一年中同じ姿をしているわけではありません。水が入る時期もあれば、乾いている時期もあります。そのため、生き物の中には一年のある時期だけ姿を現し、それ以外の時期には見られなくなるものが少なくありません。今回着目するカブトエビも、その代表例です。季節という時間の流れの中で、田んぼの生き物相は大きく変化しているのです。

「空間」スケール
田んぼの周囲に川や池があるか、山林が近いか、住宅地に囲まれているかといった地理的条件によって、そこにやってくる生き物は異なります。つまり、一枚の田んぼだけを見るのではなく、地域全体へと視点を広げることで、多様性の豊かさが見えてきます。いわば、マクロな視点へのズームアウトです。

「生物サイズ」スケール
小さな昆虫やプランクトンのような微小な生き物は、意識して探さなければなかなか気づくことができません。肉眼では見えにくいものも多く、観察にはルーペや顕微鏡が必要になることもあります。これは、ミクロな視点へのズームインといえるでしょう。

「カブトエビ」という生きもの

田植えのころ、水が入ったばかりの田んぼをよく見ると、泥の中を泳ぎ回る不思議な生き物に出会うことがあります。それがカブトエビです(図2)。カブトエビはカブトエビ科に属する甲殻類で、田んぼやその近くの水路、池、川などに生息します。

図2
(左右いずれも)写真AC

丸い盾のような甲羅をもち、尾をのばした姿はどこか古代生物を思わせます。カブトエビは、水が張られた田んぼの土壌表面をかき回しながら生活します。その際に雑草の芽を引き抜いて浮かせ、若い根や新芽を食べます。この働きから、「田の草取り虫」とも呼ばれてきました。さらに、泥をかき回すことで水を濁らせ、雑草の発芽や成長を抑える効果もあるとされています。泥の中に酸素を送り込むことで、稲の根腐れを防ぐ助けにもなると言われています。また、農薬による影響を受けやすいことから、田んぼの「環境の安全性」を示す指標のひとつとしても注目されています。

不思議な「カブトエビ」の生態

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