ページの本文です

街のあかり|「都市」編③【地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種~#8】

地域と生活の科学~見つけよう!身の回りの探究学習の種~

四天王寺大学教育学部准教授

仲野 純章
地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種 バナー

日が沈み、空が暗くなっても、街は活動を続けています(図1)。商店の看板、信号機、住宅の窓、コンビニエンスストアの店内、道路を照らす街路灯。私たちは夜であることを意識しながらも、昼間と大きく変わらない生活を送っています。こうした街のあかりは、単に暗闇を打ち消す存在ではありません。都市の姿をかたちづくり、人々の行動や安心感を支える重要な要素です。その背後には、緻密に設計された照明と、物理現象としての光の性質があります。

夜の街の様子
図1

執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章

街の中にあるさまざまなあかり

日が暮れてから街を歩いてみると、実に多様なあかりがあることに気づきます(図2)。街路灯や信号機、標識灯、ライトアップ照明。もちろん、日暮れを待たずとも、室内、あるいは室外でも少し薄暗い場所では、さまざまなあかりが灯されています(図3)。

それぞれのあかりには役割があります。安全のためのあかり、作業のためのあかり、雰囲気をつくるあかり、情報を伝えるあかり。同じ「光」でも、求められる性質は異なります。

夜の街の多様なあかり
図2
図3

ただ照らせばよい、ではない

照明というものは、「ただ照らせばよい」のではなく、いくつもの重要な観点があります。以下に、その代表的なものを挙げます。

●照度
ある面がどれくらいの光で照らされているかを示す量で、単位はルクス(lx)が使用されます。細かい文字を読む必要がある室内や作業場では高い照度が求められます。一方で、必要以上に高い照度はエネルギーの無駄にもなります。

●色温度
光の色味を示す指標で、単位はケルビン(K)です。数値が低いと赤みを帯びた暖かい光、高いと青白い光になります。たとえば家庭のリビングでは低めの色温度、オフィスや教室ではやや高めの色温度が選ばれることが多いのは、人の心理や活動との関係があるからです。照度との関係でいえば、次のような点に注意が必要です(1)。
・低色温度で高照度:暑苦しい印象になるので注意。
・高色温度で低照度:冷たくうら寂しい印象になるので注意。

●演色性
同じ物でも、照らす光によって見え方が異なることは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。光源が色の見え方に及ぼす性質を演色性といい、具体的には、自然光(太陽光)で見た場合に近いほど、演色性が良い(高い)といいます。簡単にいうと、物体の色がどれだけ自然に見えるかを示すもので、一般にRaという値で表されます。演色性が低いと、食品や衣服の色が実際とは異なって見えることがあります。店舗や美術館では特に重視されます。

●グレア
これは不快な「ぎらつき」「まぶしさ」のことです。グレアが強いと、交通標識や障害物の視認性が低下し、車を運転しているときなどの安全性に影響します。一般的に、グレアが生じると人は不快な気持ちになるため、照明計画において照明器具の配置や見え方をコントロールする際には、その不快を軽減させる配慮が必要となります。

なお、照明には消費電力や発光効率、寿命といった観点も欠かせません。同じ明るさを得るためにどれだけの電力を必要とするのか、どれくらい長く使えるのかは、施設の維持管理や環境負荷に直結します。一つ一つの照明の差がそれほど大きくなくても、街全体で見れば、その差は大きなものになります。

このように、照明は「光を出す装置」であると同時に、光の性質を制御する技術でもあります。あかりは感覚的な存在ですが、その背後では光が数値として扱われ、精密に設計されているのです。

どこもかしこもLED照明

これまで蛍光灯は街の中でも非常に多く活躍してきました。蛍光灯は、管の中の水銀蒸気に電流を流して紫外線を発生させ、その紫外線を蛍光体に当てて可視光に変換する仕組みです。間接的に光をつくる方式であり、人体に有害な水銀を使用している点が特徴です。

一方、近年急速に普及が進んでいるのがLED照明です。LED(発光ダイオード)は、2種の半導体を重ねた構造をしており、電流を流すと、片方は正の電気(より正確には、「正孔」)を運び、もう片方は負の電気(より正確には、「電子」)を運びます。そして、これら正負の電気が境界面で衝突して消滅(正孔と電子が再結合)する際に、そのエネルギーが光になります(図4)。発光効率が高いため蛍光灯と比較しても消費電力が少なく、そして寿命が蛍光灯の数倍長いという特長があります(一般家庭内などでよくある「白熱電球」の寿命はこれらよりさらに寿命が短く、蛍光灯の10分の1くらいの寿命となります)。そのため、街路灯や店舗、家庭用照明などあらゆる場面に広く導入されています。また、蛍光灯はスイッチを入れてから明るくなるまで少し時間がかかることがありますが、LED照明はこうしたことはなく、瞬時に最大の明るさになります。さらには、一般的な蛍光灯は明るさ調整(調光)がしにくいものですが、LED照明は調光が容易で、実際、調光対応製品が多いのも特徴です。なお、LED照明は紫外線の放出量が少なく、蛍光灯と比較すると、その200分の1程度とされます。これにより、例えば、虫なども寄せ付けにくくなり、結果として器具メンテナンスの回数軽減もできるメリットがあります。 

LED照明の仕組み図
図4

蛍光灯が減少している背景には、環境問題もあります。「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」の結果を受け、一般照明用の蛍光灯は段階的に規制され、2028年1月1日以降は製造と輸出入が禁止されます。

この記事をシェアしよう!

フッターです。