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地震と街|都市編②【地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種~#6】

地域と生活の科学~見つけよう!身の回りの探究学習の種~

四天王寺大学教育学部准教授

仲野 純章
地域と生活の科学~見つけよう!探究学習の種 バナー

整然と並ぶ住宅や立派なビル、きれいに舗装された道路など、さまざまな構造物に囲まれて暮らしていると、街はどこか「安定した場所」であるように感じられます。しかし、その街は、実は常に動いている地球の上に築かれています。今回は、2024年の能登半島地震の現地で見た光景を手がかりに、地震と街との関係について考えてみたいと思います。

執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章

地震の現場で感じたこと

私たちが暮らす街は、住宅や学校、道路や橋、電線や上下水道など、さまざまな構造物によって成り立っています。それらは日々の生活を支える「当たり前の風景」です。しかし、その当たり前は、ときに自然の大きな力によって一変します。地震は、その代表的な現象です。2024年1月に発生した能登半島地震(マグニチュード7.6、最大震度7)は、その力をまざまざと示しました。この地震は、能登半島北岸に沿って分布する海底の活断層が動いて生じた逆断層型の地震で、北岸部では広い範囲で海岸の隆起が確認されました。海だった場所が陸になる。こうした変化は、地球が今も動いていることを強く実感させます。

昨夏、筆者らは復旧の妨げとならないよう配慮しつつ、内灘町から能登半島北岸へと北上する経路を中心に状況を見て回りました。大きく隆起した海岸、倒壊した建物、波打つようにゆがんだ道路、傾いた電柱。写真や映像で見ていた光景が、目の前に広がります。

「こんなに海岸が隆起しているのか」
「これほど大きな構造物が、これほど簡単に傾くのか」

自然の力の大きさに、言葉を失う場面が何度もありました。

地震は、地下深くで長い年月をかけて蓄えられたひずみが、ある瞬間に一気に解放される現象です。それは確かに一瞬の出来事ですが、地球の時間軸で見れば、プレート運動なども絡んだ長大な営みの一部にすぎません。また、仮に、地震によって高さ約10メートル(2~3階建て程度)の建物が倒壊するなどの被害が生じたとします。地球の半径を約6378キロメートルとすると、その10メートルは地球半径のわずか約0.00016%にすぎません。数字の上では、ほとんど無視できるほど小さな変化にすぎません。

街は人間の営みの結晶ですが、その土台は極めて「巨大」でかつ常に「動いている」地球そのものなのです。

大きな視点で街を見る

私たちはふだん、街を「人間の生活の場」として見ています。しかし、地球規模の空間スケール、そして数万年、数十万年という時間スケールで俯瞰すると、見え方は大きく変わります。

街は、地球表層のごく薄い部分に一時的に築かれた存在です。海岸の隆起や地盤の変動は、地球活動の自然な現れでもあります。もちろん、被害を軽く見ることはできません。被災された方々の生活や地域社会への影響は深刻であり、防災・減災の取り組みは不可欠です。

しかし、現象を大きな視点でとらえることは、冷静に原因を探り、今後の復興などを考えていくための出発点にもなります。なぜその場所で隆起や揺れが大きかったのか。地盤の性質はどうだったのか。その上で、建物などの構造はどのように影響したのか。大きな視点で問い直すことで、「被害」から「学び」も生まれてきます。

街は自然と対立する存在ではなく、自然の上に築かれ、自然の条件のもとで成り立つものです。地震は、その関係を私たちに強く意識させる出来事だと言えるでしょう。

まとめ:俯瞰して街と自然の関係を考え、防災にもつなげる

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