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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#16 伝統を受け継ぐ~八戸三社大祭

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業を提案。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載です。今回の執筆者は、青森県八戸市の三浦真司先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/三浦真司(青森県八戸市立多賀台小学校教諭)

はじめに

みなさん、こんにちは。
青森県八戸市で小学校の教員をしております、三浦真司と申します。

この度、函館の藤原先生からお声がけをいただき執筆させていただくことになりました。私は八戸生まれの八戸育ちであり、現在も住んでいるこの八戸市が大好きです。しかし、地方消滅都市と言われて久しく、その事実に抗うためにも、「子どもたちに八戸の魅力を知ってほしい!気づいてほしい!」という思いで教材化を進めました。八戸には三社大祭という夏祭りがあり、八戸の観光の目玉とも言える一大イベントであり、地域の宝です。
今回は、私の教え子で、山車づくりにかかわっている野澤龍之介さんの思いをベースに教材化し、1人でも多くの子に、八戸のよさ、三社大祭のよさ素晴らしさに触れてもらいたいと思い授業をしました。

1 教材について

この授業は、八戸三社大祭の山車制作に携わる野澤龍之介さんの生き方を通して、「目標に向かってあきらめずに努力することの大切さ」(A-5:希望と勇気、努力と強い意志)を学ぶ道徳の教材です 。

野澤さんは、保育園の頃から人形に興味をもち、小学校1年生で三社大祭の山車制作に関わり始めました。6年生で重要な弓矢の制作を任されるなど、重圧を感じながらも「もっといいものを作りたい」と意気込みます。しかし、中学校時代は部活や勉強、また親のサポートが得られないという困難に直面。さらにコロナ禍で山車制作が中止となる中、彼は趣味の範囲で山車絵(だしえ)を本格的に描き始め、史実に基づいた考証をするなど、情熱を持ち続けます。

野澤さんの原動力は、一般市民が制作する祭りの形への愛着と、人とのつながりです。祭りを支える地域の方々との出会いや、しっかり叱ってくれる家族のような存在が、彼が伝統を受け継ぎ続ける大きな支えとなっています。困難があっても誠実に向き合い、努力を続ける野澤さんの姿勢から、「やり続けることの大切さ」と「人とのつながりの大切さ」について考察します 。
そして、野澤さんの強い意志に触れるとともに、八戸の魅力である「ひと(山車制作者)・もの(山車)・こと(三社大祭)」に触れ、郷土を愛する気持ちを育んでいきたく、教材化にいたりました。

2 授業の実際~伝統を受け継ぐ~

対 象: 小学6年
主題名: 強い意志と実行力
内容項目: A-5 希望と勇気、努力と強い意志

導入 三社大祭公式ショートPV(↓)を(開始後1分15秒まで)視聴  

【公式PV】 “The Japanese Traditional Arts” 八戸三社大祭【Short ver.】
この山車制作の一番最初に「山車絵」を描く作業があることを紹介する。

八戸三社大祭の山車絵の一例
◯この山車絵は小学校6年生の子が描いたものであることを伝え、その後、描き手の野澤龍之介さんを紹介する。
野澤龍之介さんの写真

保育園のころから雛人形が好きで、小学校1年生の時、スーパーマーケット横の山車小屋に入ったのがきっかけ。人形に興味があって、彫刻がかっこよく見えた。最初は、ミニ山車作りの材料集めが目的。そこから、組(三社大祭の山車組)の方々に「山車作りやってみない?」と声をかけられ、大人の山車制作の世界へ。色塗りの手伝いから始まった。
その後歳を重ねて、色塗りから粘土埋め、大人たちの手元をサポート。4年生ごろからはのこぎりを使った木材加工を任されるようになった。それと同時に喜びも感じるようになっていた。

小学校6年生のときに、人形が背負っている弓矢を全部制作したことを紹介する。
野澤さんが弓矢を作った人形

認められて嬉しい反面、重圧も感じた。完成して取り付けた時には、大人たちは褒めてくれたが、自分としてはまだまだだと感じ、もっといいものを作りたいと意気込むようになった。

発問1 「なぜ、もっといいものを作りたいと思ったの?」

  • 人形を作るのが好きだったから
  • やりがいを感じていたから
  • 楽しかったから
児童の意見を整理した後、野澤さんの中学校時代と、コロナ禍の時期における山車制作について紹介する。

中学校時代は、勉強部活で山車小屋に行けない日々が長く続くことになった。
また、親の理解が得られず、サポートはほぼなかった。追い討ちをかけるように、中学2年生の3月からコロナ騒ぎが起き、外出自粛の生活がスタートしてしまった。2020年の山車制作も中止になってしまいショックを受ける。

発問2 「もし自分が野澤さんだったらどうしますか?」

  • やめているはず
  • ほかのことをやって気を紛らわす
  • なんとかして山車制作にかかわる方法を考える
◯中学校時代は、合間を縫って祭りに参加したことや、コロナ禍の時期に山車絵を本格的に描いたことを紹介する。
山車絵の下書き
山車絵の制作過程
完成した山車絵

なんとか自分の趣味の範囲内でお祭りを味わいたいと、山車絵を描くようになった。

◯現在の野澤さん(取材当時19歳)について紹介する。

山車組の山車絵にも関わるようになり、現在は所属している組以外からも山車絵の依頼が来るようになった。コロナ禍の時期に学んだことを生かし、史実に基づいたよりリアルな山車絵を意識している。どの時代のどの鎧や服装を描くのか、中国風の龍なのか日本風の龍なのか、刀なのか太刀なのかなどを意識するようになった。

発問3 「山車作りに関わり続けている野澤さんの原動力は?」

魅力は、「ハイクオリティな人形や龍を、プロの職人ではなく、一般市民が制作しているところだ」と言う。ねぶた師とは違い、だれでも参加できる祭りの形が好きで、だれにでも門戸を開いてくれる組の方々との出会いも、今の自分を作ってくれている大切な存在だと言う。
母子家庭で育った彼に、祭り組の親方衆がいろいろと教えてくれた。三社大祭を通して人とのつながりが生まれた。昼になれば、ゴザを敷いて、わいわいと話ができる楽しさもある。親方衆は、しっかりと叱ってもくれる家族のような存在で、ここまで続けてこられた最大の理由になっている。
山車作りを学ぶだけでなく、そうした人との出会いが、支えになっている。これまで自分より上の世代の方々が脈々と守り伝えてきた朔日町の伝統を、自分なりにでもしっかりと受け継いでいくことが今の自分に課せられた使命だと感じている。

◯最後に、以下のリンク内の八戸経済新聞の記事を紹介する。

https://hachinohe.keizai.biz/headline/2218/ 資料2

発問4 今日学習したことはどんなことですか?

  • あきらめないで続けることの大切さ

3 どこにどのようにつなげるか

この教材の核心である「目標に向かってあきらめずに努力する姿勢」と「人とのつながり」というテーマは、他教科の学習内容に深い洞察をもたらす補助線となると考えています。

まず、社会科の「歴史」や「文化」の学習においては、この教材が学習の導入として機能すると考えています。八戸三社大祭の山車絵は歴史上の人物や事象を扱うことが多く、歴史の学習の各単元と有機的につなげることができます。
また、祭りを裏側で支える野澤さんのような「人」の不断の努力や継承への強い意志について知ることで、三社大祭が人々の努力により長い歴史を経て今日まで受け継がれていることを捉え、歴史上の点と点を現在進行形で結んでいる「生きた文化」として見つめる視点を養うことができると考えています。

さらに、総合的な学習の時間(総合)では、探究活動の具体的なテーマとして設定することができます。この授業での学びをきっかけに、「八戸三社大祭の未来を担うには?」や「少子高齢化が進む中で、地域文化をどう守り伝えるか?」といった、地域課題に根差した探究テーマにつなげていきます。
野澤さんを「地域の宝」として捉え、彼が感じた「人とのつながり」がどのように祭りを支えているのかを考察することで、児童一人一人が八戸を「つくる側」の当事者意識を持つことにつなげていきたいと思います。

4 おわりに

今回は、私が生まれ育った八戸への深い愛と、地方消滅という課題への危機感から生まれた「伝統を受け継ぐ」を題材とした授業実践をご紹介しました。
この授業は、山車制作者である野澤龍之介さんの揺るぎない情熱と、「一般市民が作り上げる祭り」への愛着、そして親方衆との温かい「人とのつながり」を、子どもたちが深く追究する機会となりました。中学校時代の困難やコロナ禍による中止という逆境に直面しながらも、「もっといいものを作りたい」と努力し続ける野澤さんの強い意志は、児童たちの心に、「やり続けることの大切さ」として鮮明に刻まれたことと思います。

この地域教材の真価は、道徳の学習を教科内で完結させるのではなく、社会科の歴史の学習で「生きた文化」を捉え直す視点や、総合的な学習の時間で地域課題を探究する当事者意識へと拡張できる点にあります。
八戸の魅力である「人・もの・こと」に光を当てることで、郷土への誇りと愛着を育み、「ふるさとをつくる側」として未来を担う意識を育てること。これこそが、今、地域に根ざす教育が果たすべき重要な役割だと確信しています。
全国各地で地域を愛する先生方が、その土地の「人」という資源に目を向け、未来につながる教育を共につくっていけることを願ってやみません。お読みいただき、ありがとうございました。

編集委員・藤原友和先生による共著・編著、好評発売中です。

単行本「オリジナル地域教材でつくる!「本気!」の道徳授業」カバー

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