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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#22 「何もない」新興住宅地から、新しい「ふるさと」を創り出す 

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくり、さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、宮城県富谷市の守 康幸先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/守 康幸(宮城県富谷市立成田中学校教諭)

1.はじめに

みなさんこんにちは。宮城県富谷市の中学校で教員をしています、守 康幸です。

「地域教材道徳」でオファーをいただき、正直ちょっと尻込みをしてしまいました。中学校教員で、校務分掌の関係で長いこと道徳を担当していなかったことや、ちょうど異動したばかりで、「地域」の魅力を十分に教材化できるかという心配があったからです。

それに加えて、連載記事に値する「地域教材」が本当に見つけられるか、という課題もありました。私が勤務する学校は、いわゆる「新興住宅地」にあります。バブル期以降に開発され、多種多様な地域から人々が集まってできた街です。そのような新しい場所で、生徒たちの持つ共通の地域像とは何なのか図りかねていたのでした。

富谷市は宿場町としての歴史があり、さまざまな人々の営みが根付く地域教材の要素を持っています。しかし生徒の生活に目を向けると、新興住宅地ゆえにちょっと距離感があることも事実です。数百年続く祭りも、語り継がれる偉人もいない新しいこの街で、「地域教材」とは常に過去から引き継がれたものでなければならないのか、むしろ何もないからこそ「今、自分たちが創る」という意志そのものが道徳教材になるのではないかと私は問い直しました。

私は社会科の教員ですが、学生時代から社会教育(おもに地域青少年ボランティアや自然の家)に携わったり、教員になってからも学校外の方々と協働してプログラムを実践したりと、学校と地域、生徒と地域を「つなぐ」ということに教育的意義を見出し、社会科や総合的な学習の時間を中心に実践を重ねてきました。

今回の連載をとおして、道徳での試みをご紹介したいと思いますので、少々お付き合いいただければ幸いです。

2.教材について ~授業デザインへの足あと~

私が今回教材化を試みた素材は、「地域防災」です。

勤務校である成田中学校では、年に1回「地域との防災活動」という行事があります。2014年から始まったこの活動は、わずか10年余りで学校の「新しい伝統」となっていました。古くからの歴史を持たないこの街にとって、この防災活動こそが、住民同士が繋がるための唯一無二の「歴史の1ページ」だったのです。

その時々の情勢に合わせて試行錯誤を重ねてきたこの行事の一番のポイントは、中学生による避難所開設訓練です。地震発生を想定した避難訓練を行い、教室の被災状況を確認した後、3年生が、校舎内の使用する教室を割り振って避難者を誘導したり、備蓄の物品を運んだりします。特筆すべきは、防災担当の教員から事前の指導は行いますが、教員は見守りに徹し、実際の指揮・運営はすべて中学生の手で行という点です。この運営訓練に、地域住民や中学1・2年生、そして学区内にある小学校の6年生が高齢者や乳幼児、けが人などの避難者役を担当しながら参加し、3年生が避難所を運営する姿を見て学ぶということです。つまり、本校に通う生徒のほとんどが、小学生の時に先輩が運営する姿を見ているので、彼らにとってこの行事、そして住民が参画する防災活動は常に身近にあるものであり、いずれ自分も運営を担う立場になるというある種の「憧れ」をもって参加していることが伝わってきました。

もしかすると、読者の皆様の勤務地やお住まいの地域でも、同じように学校と地域が一緒に防災にかかわる取組をしているところもあるかと思います。ただ、今回私が着目したのは、防災としての側面よりも「地域と協働する学校行事」というその形態についてです。

学校のある富谷市は、仙台市の北側に位置するベッドタウンです。内陸部に位置しているので、当然、東日本大震災の時も津波被害は受けていません。宮城県では平均して38年周期でマグニチュード7クラスの大きな地震が発生している歴史がありますので、震災の前から地震の避難訓練はより現実感を伴って行われています(授業中にちょっと大きな地震が起こると放送の指示がなくても子どもたちが騒がずにサッと机の下に隠れるくらい、当たり前の対応になっています)。しかし、全県的にここまで大規模に地域と学校が一緒に実施しているかというと、そうではありませんし、市内でも実施しているのは本校だけだといいます。赴任したての私が熱心な活動に感銘を受けた一方で、どうしてこの地域でここまでの取組が行われているのだろうと不思議に感じたのも事実です。

もう一つ、授業構想に至るきっかけをご紹介しましょう。

富谷市では、「生徒会サミット」という行事が年に一度開催されます。いくつかのテーマについて中学生と行政や民間企業等が協働してアクションプランを策定し、実際に街づくりに生かそうという試みです。

本校は「地域や他者との交流」の担当でしたが、生徒会執行部のメンバーは代替わりに伴ってわからないことが多く、生徒からの要望で改めて地域の人にヒアリングを行うことになったのです。

インタビューをお願いしたのは町内会の会長さんです。町内会はどのような取組をしているのか、中学校と町内会はこれまでどのようにかかわってきたのか、そして今現在町内会にはどのような課題があって、将来持続可能な地域づくりに向けてどのように考えているのか、など彼らが考えた事前の質問について教えていただくことになりました。

そのインタビュー会で町内会長さんが真っ先におっしゃったのが、会の数週間前に実施された、「地域との防災活動」のお話だったのです。

読者の皆さんは、生徒の質問と町内会長さんのいう防災活動がどのようにリンクしていったと思いますか?

生徒会の生徒たちが目を輝かせながら聞き入ったこのやり取りを受けて実践した私の「地域教材道徳」をご紹介したいと思います。

3.授業の実際~地域を創る~

対 象: 中学1年
主題名:ふるさとを創る
内容項目:C-12 社会参画、公共の精神

導入:成田中学校の「特色」ってなんだろう?

  • 校舎が新しい。校舎のデザインが独特。
  • 部活動が盛ん。
  • 避難訓練がガチ!

導入成田地区の「特色」ってなんだろう?

  • 街並みが規則的できれい。広い公園がある。新しい家が多い。
  • いろんな便利なものがある。
  • 住みたいまちランキング上位! でも市全体か…。
  • 何が特色なんだろう? 全部普通にあると思うんだよなぁ…。

社会の授業でよく使う「特色」を入り口に、授業を始めます。生徒たちは「特色=他と比べて違いが際立つところ」という考えをしますので、ああでもないこうでもないと違い探しをしていましたが、普段の何気ない生活や身の回りの環境を「特色」として聞き直したことで皆の表情が「?」に変わってしまいました。

そこで、「今年この中学校に赴任した私が発見した特色」ということで、数年前の地域との防災活動を紹介した県内ニュースの動画を視聴します。

  • あー確かに!
  • え? これ? どうして特色?
  • いや、これは確かに成田だけかも!

別の地域から転居してきた何人かの生徒に、どんなところが学校や地域の特色と言えるのかを語ってもらいます。

  • 僕の小学校では地区の人と一緒にはやってなかった。
  • 地域の防災訓練はあったけど、学校ではやってなかったな。
  • そもそも中学生に避難所運営ができるって、すごいなーと思った。普通の中学生は参加者だもん。参加しない人もたぶん多いし。

ずっとこの地域で生活してきた生徒たちにとって当たり前だと思っていたことが、他から見ると特別な取組だという話を聞き、多くの生徒が周りと「こんなところすごいかもねー」と話し始めます。

発問1 この地域との防災活動を深く知るために、地域の方に話を聞くとしたら、どんな問いを作れますか?

授業の基本形態をグループ活動にしているので、普段は対話的に授業が進みますが、この場面では沈黙が広がりました。自分たちが当たり前だと思っていたことを深掘りするため、行事の様子を思い返しながらじっくりと考えを巡らせます。そして、じわじわと周りと意見を交わす対話が広がっていったところで、発表を促しました。

  • いつから始まったのか。
  • どうして中学校だけでなく地域と一緒にやっているのか。
  • 誰が始めたのか。
  • どんな思いで運営しているのか。
  • どんな思いで活動に参加しているのか。
  • なぜ中学生がたくさん参加するようになったのか。
  • どんな組織で運営しているんだろう。
  • 中学生が避難所運営をすることにどんな意味があるのか。

「そう言えば、日中に大人があまりいない、って誰かが言っていたような…」

ある生徒が、日中に災害が起こった時に実働を担う大人が少ないというベッドタウンならではの課題を語り始めます。中学生が避難所運営を行うことについて、クラス全体に納得感が広がってきたところで、上記の「組織」について、この行事が学校単独主催の行事ではなく、町内会の取組がきっかけで運営されてきたという背景を伝えました。一様に驚いていた反応を受けながら、対話を進めます。

目的が防災だけだったら、行政機関が専門的に運営するという方法もあるはずです。しかし、長い期間、その年の現状に合わせて形を変えながらも地域と学校の協働によって続いてきたその価値に迫ろうという教師の意図で、問いを仕掛けました。

  • 防災をきっかけに、みんなに参加してもらう? でもどうして? 市役所や消防の主催行事じゃだめ?

団地の造成が終わって約30年、中学校ができて20年、そしてこの活動が行われてきた年月に思いを巡らせながら、夏に生徒会が行ったインタビューでの町内会長さんの話を紹介しました。

  • 新しい団地なので、住民同士が顔見知りになることが防災防犯上とても大切。
  • 日中に大人の人数が少ないので、中学生に町のことにたくさん関わってほしい。
  • 高齢化が進み、大人と小中学生が交流する場をたくさん作りたいと思って夏祭りなどを行っている。
  • 地域防災活動を通して、普段接点が少ない世代とも関係を築け、それぞれの思いを伝え合うことで自分たちの地域の良さを再確認することができると願っている。
  • 防災活動を通して顔見知りになることで、地域活動を終えてもご近所の方とのあいさつや会話が自然に増える。
  • 小中学生が大人になった時に、たとえ別の地域に移ったとしても、社会にかかわることの大切さを次の世代につないでいってほしい。

この地域防災活動は、紹介したニュースのほかにも、新聞などのメディアの取材や各地からの視察が来るなど、わざわざ学びに来たり紹介したりする価値がある活動だと思うのです。

発問2 成田の「地域で」「小中学校も一緒に」防災活動をする価値は、「命を守る」ことに加えて、どのようなものがあると思いますか?

ノートにそれぞれの考えを書きます。

  • 地域の皆と親睦を深めること。
  • 何かあった時に知らない人とでも協力できるようにすること。
  • 地域内のつながりができて、防犯の意識が高まったり治安がよりよくなったりすることにつながる。
  • 住んでいる全員が参加するから、年齢に関係なく、人とつながることが当たり前になれること。
  • ゼロからつくった町だから、行事を通してみんなが関わって、みんなが「自分の地元」っていう熱量とか思いみたいなものを小さいころから育てていけること。
  • 大人になった時でも、「うちの町では」みたいに語り継げるいいところをみんなでつくれること。

生徒たちそれぞれの「価値」を交流したところで、町内会長さんがおっしゃっていた、「次の世代につないでいくための課題」を示し、最後の発問をしました。

発問3 この先、みんなのふるさとになっていく成田地区をつくっていくために、あなたはどのようにかかわることができると思いますか?

  • 正直行事とかにめんどくさいなと思って参加してたこともあるけど、いつまでもお客さんで参加するだけでなく、お世話する側として意識を高めていければいいと思う。
  • 私が参加することで、他の誰かと協力する心を育むために本気で取り組んでいきたいと思った。
  • 何をやったらいいかはまだわからないけど、自分も地区の一員として何かできることを探すくらいはできるかなと思うので、そこから始めてみようと思った。
  • 大人や先輩たちがつないでくれたみたいに、3年生になったら年下の人たちにあこがれられるようになれるようにがんばる。

4.授業を終えて ~生徒たちとの後日談~

私は、日常的に授業の振り返りを生徒たちと行っています。休み時間や放課後など、ちょっとした時間の何気ない会話ですが、授業だけでなく学校生活を通して学びを共に創っていく当事者として、子どもたちを巻き込んでいきたいという願いからでしょうか。いつの間にか私の基本スタンスでもあり楽しみな時間として、続けている取組です。

この「ふるさとを創る」という授業について、こんなコメントが寄せられました(同僚たちから「副担任」と呼ばれている世話好き女子たちです〈笑〉)

生徒A「なんか道徳だけど道徳っぽくないなーとか思って。気付いていなかったことを考えられたからおもしろかったけど。」

私 「あなたが思う道徳っぽい授業って何?」

生徒A「だれか登場人物の『このときどんな気持ちだったんだろう』とかっていうやつ?」

生徒B「それそれ!今回だったら誰だ? 町内会長さん?(学校の防災担当の)M先生? 他にもたくさんいるよね。」

私 「そうだね。もし家族や近所で参加している人がいたら、インタビューしてみてもいいんじゃない?

生徒AB「それな!」

生徒A「2年生とか3年生になった時にまた同じことを道徳でやったら、もっとちゃんと答えられるようになるといいなぁ。先生、頑張って勉強して、またやって!」

ちょっと上から目線なのが気になりますが、学び手側の視点は私にとって新たな気付きや甘さの指摘を与えてくれる金言です。

たしかに、今回の実践はああすればよかった、こうすればよかったと改善点ばかりの拙いものだったなぁと思います(「道徳の授業として」という授業改善の視点は、読者の皆様が「自分だったら~」とツッコミを入れながら磨いていっていただければ幸いです)。

しかし、異動してきたばかりの私と、長くこの地で生活している生徒たちとが「地域の魅力」という共通価値を考え始める端緒に立ったという意味で、とても価値がある時間になったなと思います。

様々な人・モノ・コトを通して道徳性を磨いていく営みは、教室だけでは完結しないのだなと改めて感じました。たとえば、教科(私の場合は社会ですが)と連関した道徳・総合だったり、同じ題材を学年ごとに視点を変えて学びを深めていったりすることで、地域教材を通した教育効果はどこまででも広がっていくのではないでしょうか。

「伝統もかつては誰かが始めた最先端」

いつかどこかで聞いた話が思い出されます。

伝統的な教材が豊富にある地域もそうでない地域もあるでしょう。

今回の実践を通じて、私は「地域教材」の可能性を再確認することができました。伝統がないことは、決して欠点ではありません。それは、自分たちの手で新しい物語を描ける「余白」があるということなのだと思います。

この記事を読んでくださっている、日々の実践に悩む先生方。あなたの目の前にある、一見「何もない」景色の中にも、必ず誰かの願いや意志が隠れています。

もし、あなたが今の街で「新しい歴史」を作るとしたら、まず誰に話を聞きに行きますか? そして、生徒たちと一緒にどんな「10年後」を描きたいですか?

必ずしも地元で働くわけではない私たち教員が、発見しきれていない地域の宝もたくさんあることと思います。ちょっとの時間でも児童生徒と同じ目線で校区を歩いてみるとか、地域の方との立ち話とか、そんなところから地域教材はつくられていくのではないかと考えています。

私たち教員一人ひとりも、そして学校も、住民とともに後世に続く誰かのふるさとを創る一員として、共にありたいと改めて思った実践となりました。

この記事が、皆さんの「地域」を少しだけ違う角度で見つめ直すきっかけになれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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