小1 国語科「やくそく」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「やくそく」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:やくそく(光村図書・こくご 一 上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属大泉小学校・山下美香

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、場面の様子や登場人物の行動などに着目し、内容の大体を捉える力を育んでいきます。
そのためには、「誰が」「何をしたか」「何を言ったか」、そして「どうなったか」を読み取ることが大切になってきます。登場人物の行動や場面の様子を表す言葉や時を表す言葉に着目し、物語の主な出来事や結末などの内容の大体を捉えることができるようにしていきます。その際、挿絵も有効に使っていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

自分のことだけを考えてけんかをしていた3匹のあおむしが、広い世界に驚き、「それなら、みんなでいこう。」と一緒に海に行くことを「やくそく」する物語です。

言語活動としては、音読を通して、場面の様子や登場人物の行動などに着目し、内容の大体を読み進めていきます。3匹のあおむしは、どれも「じぶんとそっくり」です。3匹のあおむしそれぞれになって音読すると、そっくりな3匹のあおむしですが、食べ方の違いや言い方の違いに気付いていくでしょう。どんな共通点があり、どんな相違点があるのか、それぞれのあおむしの行動や言葉から読み取っていくことができます。
その際には、挿絵も有効に働きます。挿絵を活用しながら、音読を通して、「誰(どのあおむし)が」「何を」話しているのか、「どこで」「どんな」行動をしているのかを考えていくとよいでしょう。
また、3匹のあおむしが一緒に出てくる物語の後半では、ペープサートを使い、3匹のあおむしの位置関係についても考えていくとよいです。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 食べ方の違いを読む

3匹のあおむしは、「なんと、じぶんとそっくり」です。「1匹目のあおむし」「2匹目のあおむし」「3匹目のあおむし」は、容姿はそっくりですが、食べ方には違いがあります。その違いはオノマトペで表現されています。

2匹目のあおむしは「むしゃむしゃ むしゃむしゃ」、3匹目のあおむしは「もりもり もりもり」と木の葉を食べています。容姿はそっくりなあおむしですが、食べ方の様子が違うことから、全く同じあおむしではないと捉えることができ、登場人物の気持ちを具体的に想像することができます。オノマトペに注目して読んでいくことで、登場人物の違いを読むことができます。「食べる」という行動には、「もぐもぐ」「むしゃむしゃ」「ばりばり」「ちびちび」と様々なオノマトペがありますが、その言葉によって、食べる様子が変わっていきます。この様子の違いを話し合い、動作化も加え、音読に表現していけるとよいと考えます。

〈対話的な学び〉 下り方「くんねり くんねり」を読む

やくそくをした後の場面では、「くんねり くんねり」と3匹が木の枝を下りていくオノマトペが使われています。大げんかをしていたときとは違い、「くんねり くんねり」と3匹の行動は同じ言葉で表現され、3匹の動きが揃っています。「くんねり くんねり」という言葉から受ける感じを出し合ったり、動作化したりするとけんかをしていた場面ではないことがより一層分かります。
この「くんねり くんねり」について話し合うときに対話的な学びが生まれると考えます。けんかをしていたときとは違い、穏やかな気持ちで木から下りてきたことを確認した上で、てっぺんから下りてきた登場人物の気持ちを具体的に想像していきます。

〈深い学び〉 題名「やくそく」の意味を読む

なぜ題名が「やくそく」なのかを考えます。「やくそく」という言葉について、児童の生活経験からの各自のイメージを大切にし、3匹のあおむしが約束をした場面と結び付けて読みます。
なぜ作者は「やくそく」という題名にしたのかを考えることによって、約束が3匹のあおむしにとって、どのようなものであるかを考えさせていきます。また、物語の大切なことが題名になっていることにも気付かせていきます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

本単元では、端末を活用し、音読の練習を記録していきます。記録した動画を見直したり、音声を聞いたりすることで、場面ごとの読みの違いや自分の読みの深まりも知ることができます。児童が自分の学習を振り返ることはもちろん、教師にとっては、一人一人の評価に活用することができます。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: あおむしになりきっておんどくしよう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
①「やくそく」という言葉について知っていることを出し合う。題名から物語の内容を予想して範読を聞き、感想を出し合う。
② 挿絵を手掛かりにして、物語の内容の大体を読み取る。

・第二次(3時4時5時6時
③ 1、2場面を音読し、3匹のあおむしの行動を読む。(端末に音読を記録する。)
④ 3場面を音読し、3匹のあおむしの行動を読む。(端末に音読を記録する。)
⑤ 4場面を音読し、3匹のあおむしの行動を読む。(端末に音読を記録する。)
⑥ 5場面を音読し、3匹のあおむしの行動を読む。(端末に音読を記録する。)

・第三次(7時8時
⑦ あおむしの行動を具体的に想像しながら、グループで音読をする。
⑧ 互いのグループの音読を聞き合い、題名の「やくそく」について考える。

全時間の板書例、教師の発問・児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

単元の導入として、「やくそく」という言葉について、児童の生活経験からの各自のイメージを共有します。題名の「やくそく」という言葉からイメージを広げ、約束をした経験を掘り起こし、児童の生活経験と結び付けます。そうすることで、登場人物の行動を具体的に想像することとも結び付けられます。また、単元末の題名の意味を考える活動ともつなげます。

「やくそく」という言葉からどんなことをイメージしますか。

お家の人と約束したことがあります。

大切なものです。

友達と遊ぶ約束をしました。約束をしたら、とても嬉しかったです。

みんなもいろいろな約束をしたことがあるのですね。それでは、「やくそく」というお話を読んでみますよ。どんな約束があるのか楽しみですね。

児童の約束をした経験を掘り起こし、「やくそく」という言葉のイメージをクラスで共有する活動を通して、「やくそく」という物語を読むことへの意欲を高めます。感想にどんな話だったかやあおむしについて思ったことを書きます。このときに、おもしろいと思った言葉についても聞くとよいでしょう。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
「主体的な学び」のために

前時の学習感想を生かし、児童とやり取りをしながら、教科書の挿絵を活用して、物語の順番を確認していきます。挿絵と出来事を合わせながら、話の内容の大体を捉えていきます。挿絵を活用することで、いつ、どこで、誰が何をしたかが明確になり、話の内容の大体を捉えることが容易になります。

前の時間に読んだ「やくそく」というお話はどうでしたか。

おもしろかったです。

自分とそっくりなあおむしと会ったから、びっくりしただろうなと思いました。

自分とそっくりなあおむしが出てきましたね。何をしていたのでしょうね。

はっぱを食べていました。

3匹のあおむしは、けんかをしていました。

3匹のあおむしがけんかをしていたら、おおきな木に怒られました。

いろいろなことがこのお話にはありそうですね。それでは、みんなが話してくれた3匹のあおむしはどういうふうに出会うのでしょうね。この絵を順番に並び替えながら、説明できるかな。


【3時間目の板書例 】

イラスト/横井智美、小野寺裕美

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