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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#21 「飾る」のは建物だけじゃない~雄勝石のスレート 

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、宮城県仙台市の安彦俊宏先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/安彦俊宏(宮城県仙台市立国見小学校教諭)

はじめに

私が暮らす宮城県は、大きく3つのエリアに分かれています。県の北側、宮城県北エリア、中央に位置する仙台市エリア、そして県南エリアです。

生まれも育ちもここ宮城県の私は、父の仕事の都合で幼少期から高校時代まで数年に一度、転居をしてきました。この転居で、県内3つのエリアの全てに住む経験をしました。

それぞれの土地の様々な文化、伝統に触れる機会を多く得られたことは、大変有難い経験でした。

とはいえ、まだまだ知らないこともたくさんあります。耳にしたことはあるものの詳しくは知らなかった先人たちの功績。伝統工芸品。根付いている文化。伝統行事。恥ずかしながら初めて知って、興味を持つこともしばしばです。
ただ、新たな発見や出会いがある度に、地域の魅力を知り誇らしい気持ちになります。

身近なところにたくさんある、地域の「ヒト・モノ・コト」。

そうしたものを児童に伝えることで、「聞いたことがない」を「あっ、聞いたことがある」、「見たことがない」を「見たことがある!」にしていくことで、郷土への親しみや愛着をもってほしいと願い、授業づくりに日々励んでいます。

「地域愛を教えたいけれど、身近な教材が見つからない…」「震災をどう伝えれば前向きな学びに変えられるか悩んでいる」そんな先生方へ、宮城の伝統素材から紐解く授業実践をご紹介します。

1 教材について

宮城県石巻市の「雄勝(おがつ)」で採れる「雄勝石(おがついし)」。雄勝石は昔からスレートとして大切に使われてきました。スレートとは、うすい板の形をした、天然の石のことです。無塗装のまま美しい質感を持ち、耐久性に優れていることから、屋根材に適しています。

国内では、宮城県石巻市雄勝町、宮城県登米市登米町、岩手県陸前高田市矢作町が天然スレートの三大産地。雄勝は、日本で一番スレートが採れる場所として有名です。

産地周辺では、現在でも多くの天然スレート葺きの民家が残っています。

希少性が高く、天然素材ならではの風合いやデザイン性の高さから、非常に人気の高い素材です。日本では明治期よりその高級感、重厚感から常用され、多くの文化財や有名建築でその姿を見ることができます。

そして、このスレートを屋根や壁に施工するのが、スレート葺き職人の佐々木信平さん。

授業では、スレートの広がりとスレートが使われている建物を巡る物語を中心として、佐々木さんのスレートにかける思いに迫ります。

郷土で採れた、その土地のモノを使うことの価値。古くから時代を超えて受け継がれてきた伝統。希少な雄勝スレートを大切に扱いながら様々な場所に広げていこうとする佐々木さんの思い。ここに、「モノを通して心を見る」ことができると考え、本授業を構想しました。

2 授業の実際~「飾る」

対 象: 小学5・6年生
主題名:地域の宝、地域愛
内容項目:
C/主として集団や社会との関わりに関すること【国や郷土を愛する態度】
ねらい:雄勝スレートの広まりや伝統を受け継ごうとする職人の努力を知り、郷土の伝統と文化を大切にしていこうとする心情を育てる。

導入 みなさんが知っている建物と少しだけ違うなという部分はありますか。

と問いながら、以下の写真をスライドで提示する。

スレート葺きの建物の写真

続けて、「こんな写真もあります。屋根に注目してください。このような屋根の建物を見たことはありますか。」と聞きながら、以下の写真を提示する。

スレート葺きの伝統的な建物の写真

児童に考えさせたあと、「屋根に使われているのはスレートと言います。」と伝える。

説明

ここで、次のように説明します。

  • スレートとは、薄い板の形をしている。
  • もともとは地面の下にあった天然の石(岩)。
  • 長い年月にも変質しない強さがある。
  • このことから、屋根材として利用されてきた。
  • 宮城県石巻市雄勝(おがつ)町で多く採取される。
  • 雄勝町は日本一の産地である。

雄勝町の風景を見てみましょう」と言って、下の写真を提示する。

雄勝町の風景写真

発問1 スレートで作った建物が町の中にあると、地域の方はどんな気持ちになると思いますか?

ペアで交流させる。

住宅以外にも、お寺や神社などでスレートが使われていること、また雄勝石(おがついし)は宮城県が日本に誇る伝統的な工芸品である雄勝硯としても有名であることを補足する。

その後、「スレートは石巻以外でも様々な場所で使われています」と言って話題を広げる。

重要文化財である「北海道庁旧本庁舎 赤れんが庁舎」「岩手銀行旧本店本館」の写真を提示し、その屋根に採用されていることを説明する。明治期・大正期には、多くの建物に雄勝産のスレートが採用され、今もなお、建築物としてその美しさをとどめていることを伝える。

「次に見てもらいたい建物はこちらです」と言いながら、以下の画像を提示する。続けて、「スレートがどこにあるか分かりますか。探してみましょう。」と促す。

東京駅の建物の写真

さらに、「ここは日本のなかでもとても有名な場所なのですが、どこか分かりますか?」と聞き、予想させる(お読みの先生方は、ぴんと来た方もいらっしゃるかと思います)。

「正解は…」と言いながら、スライドで答えを示す。

正解を示すスライド

「東京駅なんです。」と言い、東京駅の屋根に雄勝のスレートが使われていることを強調して伝える。

ここで、東京駅と雄勝のスレートの関係についての動画資料を視聴させる。「NHKアーカイブス」の「東京駅の屋根を飾る」という動画である。授業構成上、あえてすべてを見せず、冒頭の部分のみを見せる。

動画の内容は、

  • 東京駅が、平成24年、大規模な復元工事により、創建当時の姿を取り戻したこと。
  • 駅舎の屋根を飾る板状の石には宮城県石巻市雄勝産のものが使われていること。
  • スレートぶき職人の佐々木信平さんが東京駅の屋根の工事に携わっていること。

「映像のなかで佐々木さんはこのようにおっしゃっていました。」と、スライドでテキストにして提示する。
次に、以下のスライドを提示する。

子供たちに提示するスライド

スライド内のテキストは、一文ずつ提示する。

続けて、先ほどの動画の続きを視聴させる。内容は、

  • 東京駅の工事のために準備していた雄勝のスレートが、東日本大震災の津波でがれきに飲み込まれ、工場も跡形もなくなってしまったこと。
  • 泥だらけの瓦礫の中から、流されずに残っていたスレートが見つかり、地元の方で1枚ずつ丁寧に泥を洗い落としたこと。
  • 職人さんやボランティアの努力で復活した1万5,000枚のスレートは、無事に東京駅へと届けられ、いまも駅の屋根の一部として大切に使われていること。

「無事に東京駅の修理が終わったことについて、佐々木さんは次のように語っています。」
と言って次のスライドを提示する。

佐々木さんのコメントを記したスライド。一部を隠して提示する。

佐々木さんは、東京駅にスレートが使われることをどう思っているのかについて考えさせる。

発問2 空欄には、どんな言葉が入ると思いますか。

その後、「佐々木さんがお話しされている様子を動画で見てみましょう。」と伝え動画を見せる。

佐々木さんの「これが雄勝産だよ」という言葉をあえて空欄にすることで、子どもたちは職人の努力や郷土への愛着を自分なりに補完しようとすると考えました。

東京駅の駅舎の画像をスライドで提示しながら、「平成の修復を終えた東京駅は、令和のいまも、日本の中心として多くの人でにぎわっています」と伝える。

授業の終末に子どもたちに提示するスライド

発問3 心に飾る「何か」とは、例えばどんなことだと思いますか。

じっくり考えさせ、交流させて授業を終える。

3 どこにどのようにつなげるか

(1)理科とのつながり

6年生の理科の「大地のつくり」(東京書籍)では、土地が岩石や火山灰などからできていることや、化石について学習します。
雄勝石は岩石そのものが数億年かけて形成されたものなので、岩石の特徴について学習する素材の一つとして紹介することができます。

 (2)道徳での関連

5年生の道徳科の教科書(光村図書)に、「一ふみ十年」という教材があります。高山植物を守り続ける人の話から、自然の不思議さを感じる主人公の姿を通して、自然とのよりよい関わりについて考えさせ、自然環境を大切にしていくことをねらいとした教材です。
舞台になっている立山には「一ふみ十年」という言葉があり、高山植物を踏みつけると元通りになるまで10年もかかるため、気をつけようという合言葉です。

その授業の後半で雄勝スレートについて伝え、あるがままの高山植物を大切にしようとする心と、雄勝スレートのように自然から採取したものを建築物などで文化財として活用していく際の心は、どこが同じなのか、違うところはどこかと考えます。そうすることで、自然愛護についてより深く迫ることができるのではないかと考えています。

(3)SDGsの視点

お伝えしてきた通り、雄勝スレートは建築物など色々と活用されていますが、天然の石であり、有限のものです。希少であるがゆえに、地域で採れた石を使い、民家の屋根に使われるなど生活の中にあることに価値があります。
しかし、有限であるということは文字通り、限りがあるということです。授業のなかでは取り上げませんでしたが、現在ではもう国内で新たな産出はされておらず、より安定的に供給でき、施工も容易な人工スレートが一般的になっているそうです。

こうした現状から、限られた資源を大切に使うという価値観、持続可能性としての技術の継承を学ぶことができると考えました。そしてこれはまさに、SDGsとの理念とも合致します。

様々な教科で、SDGsと関連する学習内容が取り上げられています。限られた資源をどう使い、残るべきもの、残すべきものは何なのか。持続可能性について学ぶための教材としての力をもっていると言えるのではないでしょうか。

みなさんの地域にも、今は当たり前にあるけれど、実は歴史的な建物を支えている『名脇役』の素材や技術があるかもしれません。

おわりに

東京駅丸の内駅舎の地下のコンコースに、雄勝石スレートを使った富士山の壁画が展示されています。この雄勝石は東京駅丸の内駅舎の屋根に使われているものと同じ石です。壁画は、復興プロジェクトの一つとして雄勝の被災児童生徒によって作成されました。作品は、朝日に輝く富士山を描き、希望を表現しています。雄勝石は、日本の復興と努力のシンボルとして、東京駅の駅舎に使われています。

また、震災から立ち上がっただけではなく、丸の内駅舎の創建時から使われてきた雄勝石を、復元してもなお使うことにし、伝統を受け継いだということ。そこに東日本大震災の津波から回収したスレートを使ったこと。ここに、時代をつなぐ思いを感じます。

私も、時代をつなぐために、微力ながら子どもたちに伝えていきたいと思い、この授業をつくりました。バトンをつなぐ、そんな思いです。これからも地域に目を向け、先人の努力に最大限の敬意をもって、授業づくりに励んでいこうと思います。


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単行本「オリジナル地域教材でつくる!「本気!」の道徳授業」カバー
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