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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業  #26  雪がくれた宝物~深浦雪にんじん

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、青森県深浦町の石澤悠流先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/石澤悠流(青森県深浦町立いわさき小学校教諭)

1 はじめに

はじめまして。青森県深浦町の小学校に勤務しております、石澤悠流と申します。
今回、私が作成した地域教材を紹介させていただきますが、教員になったばかりの私にとって、「地域教材」とは何か、全くわかりませんでした。社会科の授業との違いをどう出していけば良いのか……と、ものすごく悩みました。
しかし、経験を重ねていくうちに、自分なりの一つの答えに辿り着きました。それは「愛」です。地域への愛、自然への愛、そしてそれを愛する人々への愛です。子どもたちの地域への愛を生み、深めることが、地域教材の存在意義なのではないかと私は考えています。

子どもたちに「深浦町の好きなところはありますか」と尋ねると、「海がきれい」「自然が豊か」といった答えが返ってきます。しかし、その一方で「深浦には何もないからなぁ…」という言葉も返ってきます。携帯やテレビなどで様々な地域の情報が次々と入ってくる今の世の中、そのような考えに至るのはごく自然なのかと感じます。

しかし、深浦町は世界遺産である白神山地、美しい夕日が沈む日本海、豊かな海の幸や農作物など、多くの魅力に溢れています。そしてそれらの豊かな自然の中で暮らしてきた地域の人々が、どのような苦労や工夫を重ねながら町を支えてきたのかについては、あまり知られていないように感じていました。

そこで私は、地域教材を活用した道徳授業を通して、地域の人々の思いや願いに触れながら、ふるさとへの誇りや愛着を育みたいと考えました。そして今回取り上げたのが、深浦町の特産品である「深浦雪にんじん」です。

2 教材について

雪にんじんは現在では深浦町を代表する特産品として知られています。道の駅でも大々的に売られ、地域の給食にもよく登場します。さらには無印良品でも取り上げられ、「雪にんじんジャム」という商品には全国にたくさんのファンがいます。私も雪にんじんは以前から知っていましたが、商品を見た時にある疑問が生まれました。「雪の下にあるのに悪くならないのか」「だれが見つけたのか」という疑問です。この疑問が頭に浮かんだ瞬間に「これは調べて、子どもたちに教えたい!」という気持ちが湧きあがりました。こういった経緯で教材を作成しました。

「深浦雪にんじん」の誕生までには、地域の人々の長い苦労と挑戦がありました。

約50年前、深浦町の農家の方々にとって冬は大きな悩みでした。雪が積もると農作業を続けることができず、収入を得るために都市部へ出稼ぎに行かなければなりませんでした。家族と離れ、数か月から半年近くも町を離れて働く生活は決して楽なものではありません。

毎年訪れる冬の大雪は、農家の方々にとって「生活を苦しくするもの」として受け止められていました。

そんな中、「この雪を何とか役立てることはできないだろうか」と考えたのが、舮作興農組合(へなし こうのうくみあい)の坂本正人さんでした。しかし、「雪を農業に役立てる」ことは、決して簡単なことではありませんでした。様々な作物を試しましたが失敗続きでした。そんな中、偶然、雪の中でも凍っていなかったにんじんを見つけました。諦めずに努力を重ねた結果が実を結んだのです。

かつて人々を苦しめていた雪は、やがて深浦町を代表する特産品を生み出す「宝物」へと変わっていったのです。 教材では、困難な状況を前向きな発想で乗り越えた地域の人々の知恵や努力、そして自分たちのこれからの深浦町への思いについて考えることをねらいとしました。

3 授業の実際

教材名  「雪がくれた宝物」
対象学年
 小学5年生
内容項目 希望と勇気、努力と強い意志

授業で使ったスライドの1枚目。タイトルは「雪がくれた宝物」。

「雪にどんなイメージがありますか?」

「雪遊びができる!」 
「そりが楽しい」

さすが小学生。大人と違い、雪にプラスのイメージがまず出されました。しかし、その中で
「雪かき大変なんだよなぁ…」
という声も上がりました。

雪深い冬の深浦町の風景

そこで上のスライドを提示すると、
「こう見るとあんまりいいイメージないなぁ…」
「今年は自衛隊の人が雪かきをしたってニュースもあって大変そうだったな」
と雪に対するマイナスのイメージが続々と上がってきました。

「実はこの深浦町には、この大変な雪を宝物にした人がいます。みんななら宝物にできそう?」
「んー、できないかも…」
「無理かもなぁ」
「どんな人か気になる」

50年前の深浦町の様子を知る

農家の方々が冬になると出稼ぎに行かなければならなかったこと、家族と長期間離れて暮らしていたことを知ると、子どもたちは驚いた表情を見せました。
そして、当時の農家の方々の姿を想像しながら、
「また雪か……」
という思いについて考えました。
子どもたちは雪を迷惑な存在として捉え、当時の農家の方々の気持ちに強く共感していました。
「深浦のために絶対出稼ぎを続けると思う!」
といった、深浦に対する情熱をもった発言もあり、子どもたちは地域を愛しているんだな、と授業の途中で感じることができました。

舮作興農組合の坂本正人さんの紹介

坂本正人さんの写真

深浦の農家のために冬でも収穫できる作物を作ろうと試行錯誤をしましたが、失敗続き。
子どもたちは坂本さんのつらさに共感していました。

「みんななら坂本さんのように挑戦を続けられる?」
「何年やっても無理なら諦めちゃうと思う」
「自分ならできない」

という、マイナスの意見が出されました。
しかし諦めずに挑戦し続けた坂本さん。そして、雪の中でも凍らず、甘さが増した「雪にんじん」を見つけました。

話合いを進める中で、
「諦めていたら雪にんじんは生まれていなかった」
「深浦町を元気にしたかったから続けたんじゃないかな」
「困っている人たちを助けたかったんだと思う」
という考えが出されました。

坂本さんの行動の背景には、地域への愛情や仲間への思いがあったことに、子どもたちなりに気付き始めていたのです。

その後、深浦にんじんが現在では町を代表する特産品となり、多くの人に親しまれていることを紹介しました。

「深浦雪にんじん」を使った商品の数々

坂本さんが後年、

「雪が深浦を助けてくれる」というスライドと、坂本さんのコメント
画像6

という思いを語っていたことを伝えました。

「坂本さんの生き方、言葉を知り、どう感じた?」
「考え方が良い方向に変わったんだ」
「憎かった雪を宝物にしたのか、自分ならできないなぁ」
「出稼ぎに行かなくても良くなったのか。深浦の人たちのために続けられるのはすごい」
という感嘆の声と「雪にんじんが助けてくれる」という言葉の意味について考える意見が出ました。

未来の深浦町を考える

最後は、自分事として考えやすくなるように、
「深浦町にあるマイナスイメージの雪や風を、みんなならどんな宝物に変えられそう?」
という発問を投げかけました。すると子どもたちは、自分たちの地域にあるものを前向きに捉えながら、次々とアイデアを出し始めました。「Padlet」というデジタルツールを用いて、自由に描いてもらいました。以下は、実際に子どもたちから出されたアイデアの一部です。

「つり」というアイデアを表現した子どもの絵
「森の展示会」をしている場面を描いた絵
「風船飛ばし大会」というアイデアを表現した子どもの絵
「泳げる」「釣りもできる」というアイデアを表現した子どもの絵
「魚がたくさんとれる」というアイデアを表現した子どもの絵
「雪合戦をしたい」というアイデアを表現した子どもの絵

「風が強いから、風船飛ばし大会をやったら楽しそう」
「自然が豊かだから、どんぐりや松ぼっくりを集めて森の展示会を開きたい」
「海が広がっているから、釣り大会をしたい」
「雪を使ったイベントができると思う。雪合戦とか」
「深浦にしかない自然を観光に生かせる。山登り大会をしたい」

授業の始めには、「雪は大変でマイナスイメージ」と話していた子どもたちが、授業の終わりには地域の特徴を魅力として捉え直し、自分たちなりのアイデアを生き生きと語っていました。
そこには、坂本さんと同じように「マイナスをプラスに変える発想」が確かに表れていました。地域の課題や不便さを嘆くだけではなく、諦めずに考え続け、どうすれば生かせるだろうと考える姿に、大きな成長を感じました。

子どもたちの振り返りから

授業後の振り返りには、子どもたちの心の変容がよく表れていました。

「深浦町のマイナスもプラスになると分かって、とってもワクワクしました。深浦だけじゃなくて、自分自身も坂本さんのように、マイナスをプラスに変えたいと思いました」
「坂本さんの諦めない心がすごい。私もたくさん深浦の魅力を作っていきたい」
「坂本さんのようにたくさん挑戦して、マイナスをプラスに変えていきたい」
「今までは努力することが苦手であきらめていたけど、坂本さんの考えを真似したい」
「深浦って魅力がいっぱいだなと思った。深浦最高!」

という振り返りが見られました。

これらの記述からは、子どもたちが単に地域の歴史を学んだだけではなく、坂本さんの生き方や考え方を自分自身の生き方に重ねて受け止めていることが分かります。地域への誇りとともに、自分も挑戦してみたいという前向きな気持ちが育まれていたことを感じました。

4 おわりに

今回、地域教材を一から調べて作るというのは、本当に労力のいる大変なことだと思いました。しかし、自分が熱をもって教材を作って授業をした分、子どもたちにもその熱が伝わっていくのがよく分かりました。

今回授業をしてみて嬉しかったことは、授業後にありました。それは、給食で雪にんじんが出た際に、子どもたちが「この前授業でやったやつだ!」と言ったり、次の週の道徳の時間に「先生、今日は雪にんじんはやらないんですか?」と聞いてきたりするなど、雪にんじんのことをずっと覚えてくれていたことです。「この授業をしてよかったなぁ」と思うと同時に、「自分の地域のことは心にしみるんだなぁ」と実感しました。

さらに地域教材を作ってみて、私自身、教師として、そして人として成長できるきっかけになりました。地域教材を知る前は、正直に言うと青森県にあまりよいイメージはありませんでした(笑)。「ねぶたやりんごはあるけど、遊ぶところは少ないし、雪は多く大変だし…」と思っていました。
しかし地域教材を作り始めてからは、お店に出かけるたびに「これとか教材にしたら面白そう!」という「道徳の目」が養われていきました。それからというもの、青森には魅力がたくさんあることに気が付き、青森がとても好きになりました。「はじめに」で書いたように、私の中に「愛」が生まれたのです。この気持ちをこれからも子どもたちに伝えていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。そして、このような貴重な機会をくださった藤原先生に、心から感謝申し上げます。


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