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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#23 ハットセの声は、いまも続いている― 子どもたちと紡ぐ塩竈の心 ―

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、宮城県塩竈(しおがま)市の曽根義人先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/曽根義人(宮城県塩竈市立第一小学校教諭)

はじめに ― ふるさとの音に導かれて

夏の訪れとともに、まちに響き始める威勢のよい掛け声がある。
「ハットセ」というその声は、港町・塩竈の風景に溶け込み、人々の心を一つにする。
今年の夏、私の勤める塩竈市立第一小学校の6年生は、塩竈みなと祭りの陸上パレードに参加し、「よしこの塩竈」を踊った。練習を重ね、本番では笑顔で踊り切る姿が見られた。その経験は、子どもたちにとって確かな達成感として残っている。

しかし同時に、私は一つの問いを抱いた。
――子どもたちは、この踊りの中に込められている思いにどこまで気付いているのだろうか
踊りや歌は楽しいものである一方で、その背景には長い年月をかけて受け継がれてきた人々の願いがある。そのことに目を向けることで、「伝統と文化」をより自分事として捉えられるのではないかと考え、本授業を構想した。

題材として取り上げたのは、塩竈に古くから伝わる民謡「塩竈甚句(しおがまじんく)」である。

教材について ― 歌詞に込められた願い

「塩竈甚句」は、江戸時代から歌い継がれてきたとされる民謡である。港町として栄えてきた塩竈において、海の安全や豊かな漁、まちの繁栄を願う人々の思いが、その歌詞の中に込められている。
現在、地域にはその歌詞を刻んだ石碑も残されており、大切に守り継がれてきた文化であることがうかがえる。
一方で、「よしこの塩竈」は、塩竈甚句をもとに平成元年に誕生した踊りであり、塩竈みなと祭りにおいて広く親しまれている。子どもたちにとっては、こちらの方がなじみ深い存在である。
この二つの文化のつながりに着目することで、子どもたちが「自分たちも伝統文化の中にいる存在である」ことに気付くことをねらいとした。

授業の実際

対象:小学6年生
主題名:受け継がれる願い
内容項目:C-16 伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度

導入 ― 「ハットセ」という言葉に着目する

授業の冒頭、塩竈甚句の石碑の写真を提示し、「近くにあるものだけれど、見たことはあるかな」と問いかけた。

塩竈甚句の石碑の写真

「見たことはあるけど、どこにあったかは覚えていないな。」
「塩竈神社の階段の前にあるよ。」
子どもたちは、その存在自体は知っている様子であった。そこで、その中身についてどの程度知っているのかを確かめるため、塩竈甚句の歌詞を提示した。

塩竈甚句の歌詞


「塩竈 ハットセ」
子どもたちは声に出して読みながら、その独特の響きを確かめていた。そこで次のように問いかけた。

「この“ハットセ”って、どんな意味があるのだろう」(※ハットセは囃子詞であり、その意味には諸説があって、じつは正解はない)

「応援している感じがする」「船を出すときの掛け声ではないか」など、子どもたちは自分の経験をもとに考え始めた。

さらに読み進める中で、ある児童がこうつぶやいた。

「よしこの塩竈の歌にも出てきた気がする。」

この発言をきっかけに、多くの子どもたちが自分たちの経験と結び付けて考え始めた。

展開 ― 甚句とよしこの塩竈のつながり成田地区の“特色”ってなんだろう?

ここで、塩竈みなと祭りで踊った「よしこの塩竈」に触れた。

「みんなが踊った歌の中にも、“ハットセ”という言葉が出てきたね。」

子どもたちはうなずきながら、「たしかにあった」「同じ言葉だ」と気付き始めた。ただし、実際に踊りの中で掛け声として発するわけではないため、「歌の中で聞いたことがある」という感覚としての共有であった。

続いて、塩竈甚句について説明を加えた。江戸時代から受け継がれてきたこと、そこには港の安全やまちの繁栄への願いが込められていることを伝えた。

すると、子どもたちから次のような声が上がった。

「昔の人も“ハットセ”って言いながら願っていたんだね。」
「海が安全でありますように、っていう気持ちがあると思う。」
「みんなで協力しようっていう意味もありそう。」

歌詞に込められた願いを、自分たちなりに解釈し始めている様子が見られた。

中心発問 ― 願いと自分たちをつなぐ

ここで、授業の中心となる問いを提示した。

「塩竈甚句に込められた願いは、今の自分たちにどのようにつながっているのだろう。」

子どもたちは、これまでの話合いをもとに考えを深めていった。

「よしこの塩竈にも、同じ願いがあると思う。」
「昔の人の気持ちを、私たちが引き継いでいるんじゃないかな。」
「自分たちが踊ることで、まちを元気にしていると思う。」

やがて、「自分たちが文化をつないでいる存在である」という認識が生まれていった。

まとめ ― 文化を受け継ぐ存在として

授業の終盤、子どもたちは自分の考えを振り返りとして記述した。

「私たちが伝統を受け継いでいく必要があると思った。」
「歴史あるこの文化を大切にしていきたい。」
「何気なくよしこの塩竈を踊っていたけれど、自分たちも塩竈の一員なんだと感じた。」

これらの言葉からは、文化を単なる知識としてではなく、自分たちの生活と結び付いたものとして捉えている様子がうかがえた。

カリキュラム・マネジメントの視点

本実践は、他教科との関連を図ることで、より深い学びへとつなげることができる。

社会科では、地域の歴史や産業と関連付け、港町としての塩竈の発展と民謡の関係を考えることができる。
音楽科では、民謡の旋律やリズムの特徴に着目し、実際に歌う活動へと広げることが可能である。
また、総合的な学習の時間では、地域の祭りや文化を探究する活動へと発展させることができる。

このように、道徳科を中心に据えながら、各教科と関連付けることで、学びを多面的・多角的に深めることができる。

おわりに ― ふるさとと共に生きる

本授業を通して、子どもたちは「伝統や文化は過去のものではなく、今も自分たちの中に生きているもの」であることに気付き始めた。

「塩竈甚句」に込められた願いは、形を変えながら「よしこの塩竈」へと受け継がれ、さらに子どもたちの手へと渡されている。

授業後、ある児童がこう記していた。
「大人になっても、塩竈の文化を大切にしていきたい。」

その言葉は、文化の継承が確かに次の世代へとつながっていることを示している。

「ハットセ」という声が響くまちの中で、子どもたちはこれからもふるさとと共に生きていく。その歩みを支える1時間となったことを実感している。


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