ページの本文です

47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業 #27 八郎湖は、地域の宝です

関連タグ

北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、秋田県三種町(みたねちょう)の櫻田哲史先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/櫻田哲史(秋田県三種町立浜口小学校教諭)

はじめに

こんにちは。秋田県能代山本郡三種町で小学校の教員をしております、櫻田哲史と申します。

現在、全国のほとんどの自治体で人口減少・少子高齢化が進んでいるところですが、わたしの住む秋田県は、全国でもトップレベルの早さ。どんどん統廃合が行われ、私の勤務する浜口小学校も来年度で151年の歴史に幕を閉じることになっています。そんな中、このような地域道徳のお話をいただき、二つ返事で協力させていただくことにしました。

本校の周りには、豊かな自然が広がっており、その自然を生かした農業や観光が盛んです。その自然の大切さ、そしてそれを守っていこうとする人々がいることを、子どもたちに知ってほしいと考えました。そこで取り上げたのは、八郎湖と、八郎湖を守る活動をされている「はちろうプロジェクト」のみなさん。私自身がその八郎湖湖岸に住んでいることや、前任校でもお世話になったこともあり、身近にある「八郎湖とそれを守る努力」を子どもたちに伝えたいと考え、授業を行いました。

1 教材について

秋田県には、大きな湖が三つあります。一つ目は、日本一の深さを誇り、観光名所としても知られる田沢湖、二つ目は、青森県との県境にあり、奥入瀬など豊かな自然に囲まれた十和田湖、そして三つ目が、かつては琵琶湖に次ぐ日本第二位の広さを誇った八郎湖(八郎潟)です。

かつては、というのも、八郎湖は、戦後の食糧難解決に向けた農地確保のため、雇用を生み出すためなどの目的から干拓事業が行われたためです。その結果、八郎湖の湖沼面積の約8割が陸地となり、現在の大潟村ができました。干拓前の八郎湖は、広く遠浅の汽水湖で、シジミやシラウオ、ワカサギなどを中心とした漁業が盛んに行われていました。湖周辺の住民にとって、豊かな恵みが得られる八郎湖は大変身近な存在でした。干拓後は、それらの産業は衰退しただけでなく、農業廃水や生活排水の増加による水質悪化の問題が起きました。毎年、夏の時期になるとアオコと呼ばれる植物プランクトンの大量発生が起きるようになってしまったのです。

この問題を解決するために、官民一体となって様々な努力がなされています。その中でも、もう一度、住民にとって大切な湖、八郎湖を取り戻したいという思いで活動を行っている方たちがいます。それが「はちろうプロジェクト(略称・はちプロ)」の皆さんです。彼らは、河川の水質調査や周辺の学校への環境学習などの活動を行っており、私もその学習の中で「はちプロ」の皆さんを知りました。

2 授業の実際

対象:小学3年
主題名:「八郎湖は地域の宝です」
内容項目:D20 自然愛護

導入 「みなさんの住む三種町で『地域の宝』と呼べるものは、ありますか。」

じゅんさい
メロン
森岳の温泉
釜谷浜  
サンドクラフト(砂像を作るお祭り)

総合的な学習の時間と社会科「農家の仕事」の学習で校外学習に行ったこともあってか、じゅんさいとメロンという意見が多く出ました。それ以外の意見も社会科で学習済みなので、前の学習をよく結びつけて考えています。

「そうですね。私たちの住む三種町には、たくさんの宝物がありますね。」

「わたしも、この三種町の宝物を考えてきましたよ。」

そう言って、いくつかの写真を見せます。

「みんなで行ったじゅんさい沼だ! 楽しかったね。」

「やっぱり釜谷浜(かまやはま)もとてもきれいだね。」

子どもたちに三種町の写真を見せながら、最後にこのように話します。

「わたしは、この場所が地域の宝物だと思います。」

そう言って、下の写真を見せます。

美しい八郎湖の風景写真
美の国あきたネット 美しい八郎湖の姿(2018年)より

「きれい!」

「これ、奥に見えるの男鹿半島だと思う。」

「これ八郎湖じゃない?」

「そうです。これは八郎湖の写真です。とても美しいですよね。わたしは八郎湖の景色が大好きです。」

「ですが、以前の八郎湖はそうではありませんでした。」

そう伝えて、下の写真を見せます。

水質汚染が原因でアオコに覆われた八郎湖
国立研究開発法人 国立環境研究所より

「この緑のものをアオコといいます。」

発問1「水が汚れて、どんな困ったことが起きたでしょう。」

  • 魚釣りができなくなった。
  • 水遊びができなくなった。
  • においが出て大変。

説明「大変鋭い意見ですね。実はその通りで、このようなことが起こっていたのです。」

  • 水質悪化で、魚が死んでしまうこともあったこと、それにより漁業ができなくなったこと。
  • 美しい景色も見られなくなり、観光客も減ったこと。
  • 匂いにより、水道が使えなくなったこと。

これに加えて、私自身の体験も話しました。

「先生が小学生の頃、アオコの発生で、水道水がすべて使えないこともありました。お風呂をいれると、水からにおいがしてきて、とても入れないのです。もちろんシャワーも浴びることもできません。」

「今から50年ほど前はもっとひどかったそうです。」

「みなさん、1学期に校外学習でメロンを食べましたね。あのメロンを育てているお水も、八郎湖のお水を使っています。」

「あのおいしかったメロンもとれなくなっちゃう…。」

子どもたちも真剣な顔つきに変わってきました。

「この八郎湖をなんとかしようと、たくさんの人たちが立ち上がりました。」

「まずは秋田県です。」

秋田県のウェブサイト(美の国あきたネット)を示しながら、説明します。

「このように八郎湖のための計画を立てて、下水道施設の整備などを進め、下の写真のような資料を作成して、アオコ抑制の方法について農家や住民の方々へ知らせる活動をしていきました。」

八郎湖のアオコ調査地点、監視カメラ設置地点を示した地図
美の国あきたネットより
秋田県から農家のみなさんへのメッセージ
「恵みや潤いのある“わがみずうみ”八郎湖を目指して」より

「次に、農家の方々や住民のみなさんです。」

スライドで情報を見せながら伝えます。

「秋田県の立ててくれた計画をもとに、農業で使って汚れた水をそのまま流していたのを、きれいにしてから流すようにしたり、農地に肥料などを入れすぎないようにして、そもそも水が汚れないようにしたりしていきました。また、水質を守るという意識が市民の方々からも支持され、油汚れのあるものを直接水道に流さないことなど、各家庭でもできることをしていったことで、生活排水による汚れが多く減ったと言われています。きっとみんなのおうちの人も、何か行っていらっしゃるかもしれませんね。」

「あぜ塗り機」によるあぜの補修や、浅水代かきなど、農家の努力を示した写真
「恵みや潤いのある“わがみすうみ”八郎湖を目指して」より

「最後に、『はちろうプロジェクト』のみなさんです。」

同様に、スライドで活動を紹介しながら伝えます。

「はちろうプロジェクト、はちプロのみなさんは、八郎湖再生に向けて様々な環境活動を行っています。例えば、八郎湖の環境調査を行ったり、八郎湖再生に向けて情報発信を行ったりなどです。その中でも一番大きな活動は、八郎湖周辺の小中学校への環境学習です。」

ここで、本校5年生の環境学習の写真を掲示します。(児童の顔が写っているので、ここでは割愛)

「あ! ここ浜小(本校:浜口小学校)だ!」

「ぼくたちの学校でも活動してたんだ。」

実際の活動が自分たちの学校でも行われていたと知って、子どもたちは驚いています。

「『はちプロ』のみなさんはこう言います。」

『八郎湖は地域の宝です。多くの住民にとって八郎湖は自分とは関係のない遠い湖になってしまいました。そんな現状を何とかしたい。私たちの願いは、八郎潟が民に愛され、みんなが八郎湖は地域の宝です!と胸を張って言ってくれるようになることです。』

「さて、現在の八郎湖の水の様子は、どうなっているのでしょうか。」

「令和6年の、みなさんの住む浜口地区の近くの様子です。」

令和6年、浜口地区付近の八郎湖を移した写真
美の国あきたネット R6年度 八郎湖におけるアオコ発生状況より

「わあ、だいぶきれいになってる!」

「かなりよくなっているね。」

発問2「授業の初めに話したように、みなさんの住む三種町にも、豊かな自然がたくさんありますね。それらを守るために、みなさんにできることは何でしょうか。」

  • ごみのポイ捨てをしない。
  • 水を大切に使う。
  • 食べ物を残さず食べて、残食を減らしていく。
  • (本校で毎年行っている)釜谷浜クリーンアップをがんばる。

3 この学習の位置づけと、教科横断的な視点でのつなげ方

本授業については、今回は3年生の冬休み明け、三学期に実践しましたので、下記のような他教科とのつながりを想起させました。

1.	3年社会科「わたしたちの市」での地域学習
2.	同社会科「市のうつりかわり」で昔の八郎湖について調べていること
3.	総合的な学習の時間「」での三種町の学習
4.	本校5年生の八郎湖を含む環境学習

一方で、別学年で、他時期に学習してもよいかと思います。
例えば、総合的な学習の時間で環境学習を行っていればその学年で学んだり、4年社会科「水はどこから」の単元の中に位置付けての学んだりなどできます。また、今回のような水質汚濁問題以外の環境問題を取り扱っても授業を展開していけるだろうと思います。

おわりに

ここまで、八郎湖の環境と、その八郎湖を地域の宝として復活させたいと活動する「はちろうプロジェクト」を題材とした授業例を報告してきました。私自身が、小中学生のころにアオコによる水質汚濁問題を体験したこと、そんなわたしが新卒初任で赴任したのが八郎湖岸の八郎潟町の小学校だったこと、そこから移動したところも八郎湖岸の三種町の学校だったこと、そしてそのどちらでも「はちろうプロジェクト」の鎌田さんの学習が行われていたこと、等々いろいろな偶然が重なって、この授業を組み立てることになりました。

内容項目D20「自然愛護」は、どこか子どもたちから遠いものになってしまいがちだなあと感じています。そして、言葉を選ばずに言うと、たかが小学生にできることと言っても本当にごくわずかです。
けれども、その問題は対岸の火事ではない、そしてそれに対してどんなに小さくとも自分にもできることがあるという自己有用感をもつことこそが大切なのではないかと考えます。つまり、この「自然愛護」の項目については、道徳的実践力を高めるというより、実践意欲を高めることにフォーカスした方が地に足のついた学習になるのではないかということです。

こんな大それたことを述べつつ、私自身は教員としては、実力も経験もまだまだです。今回お話をいただけたのも、偶然も偶然、初めても初めてで、話を受けた私自身不安で仕方ありませんでした。ただ、若輩者ながらも少しでも協力したいと思い、筆を執らせていただきました。この経験をもとに今後も巨人の肩の上に立って、教師としての研鑽を積んで参りたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


編集委員・藤原友和先生による共著・編著、好評発売中です。

単行本「オリジナル地域教材でつくる!「本気!」の道徳授業」カバー
この記事をシェアしよう!

フッターです。