小6 国語科「やまなし」「資料 イーハトーヴの夢」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「やまなし」「[資料]イーハトーヴの夢」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント、各時の学びの評価のしかた等を示した授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院准教授・茅野政徳
執筆/成城学園初等学校・木村大望

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、宮沢賢治独特の描写を味わうとともに、その生き方に触れることを通して作品の世界を捉える力を育てていきます。
伝記資料「イーハトーヴの夢」は、子供たちが宮沢賢治の生き方や考え方について知る助けとなります。そこから読み取った作者・宮沢賢治の人物像を背景にして、「やまなし」の作品世界を捉えていくという構成になっています。
構成や表現の面から作品世界を捉え、作者の思いを重ねながら、作品に対する自分の考えを形成することを目指します。
単元のまとめとして、「やまなし」について200字程度の短い文章を書き、友達と読み合い、共通点や相違点に気付くことで、作品の理解をより豊かにしていきます。

2. 単元の評価規準

評価規準

3. 言語活動とその特徴

言語活動を設定する上で、身に付けたい資質・能力と教材の特色の関係について見ていきます。
本単元では、文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめることについて重点的に学んでいきます。そのためには、作者の生き方や考え方を踏まえて、作品世界を捉えることが重要となります。これは子供たちにとって初めての学習となるため、子供たちが考えやすくなるように授業を構成していく必要があります。

これまで子供たちが読んできた文学作品と比較して、「やまなし」は作者の作家性が非常に色濃く見られる点が特徴として挙げられます。「クラムボン」「イサド」といった造語や、「かぷかぷ笑ったよ」「トブン」といった独創的なオノマトペなど、独特な言葉や表現が作中に多々用いられています。
初めて作品を読んだ子供たちは、こうした表現に戸惑い、「よく分からない」「不思議なお話だった」という感想に留まってしまうことも珍しくありません。こうした「分からなさ」をどのように解きほぐし、作品世界を読み深めたいという意欲を引き出していくのかが、本教材を扱う上でとても大切となります。

そこで有効に活用したいのが伝記資料「イーハトーヴの夢」です。この教材では、宮沢賢治の生涯について、印象的な言葉などを引きながら描き出し、賢治の生き方や考ついて述べています。とりわけ、賢治が詩や童話を綴った動機について書かれている部分は、子供たちに注目させたいところです。
人々のやさしい心を育みたいという思いで書かれた賢治の作品には、賢治の自然観や生命観が色濃く表れています。この点は「やまなし」を読み解くうえで欠かすことのできない視点です。このことをしっかりとおさえるために、5年生の時に学習した梯久美子「やなせたかし―アンパンマンの勇気」の既習を活かすことができます。「イーハトーヴの夢」を扱うときは、これを想起させながら、伝記の読み方を確かめ直すとよいでしょう。「やまなし」という本教材に加えて、伝記資料「イーハトーヴの夢」が掲載されているのはそのためなのです。

これまで見てきた本教材の特色を鑑みて、本単元では「やまなし」と出合う前に「イーハトーヴの夢」を読むことにしています。子供たちが「やまなし」の見かけ上の「分からなさ」に立ち止まってしまう前に、宮沢賢治の生き方や考え方を補助線として持つことが有効であると考えるためです。
「この作品にも宮沢賢治さんの考え方が表されているはずだ」という見通しをもつことで、作品世界により深く足を踏み入れられるようになることでしょう。

「やまなし」の読解では、「五月」「十二月」という二つの場面が対比的に構成されていることに、子供たちが気付けるように進めていくことが大切です。
作品のはじめと終わりにある「幻灯」という言葉に着目して、「五月」と「十二月」の場面がそれを表しているということは単元の早い段階で確かめておきましょう。これによって「五月」と「十二月」を比較しながら読むという思考がしやすくなります。黒板を「五月」と「十二月」に分けて書くなど、構造的な板書を心掛けることで、子供たちの思考をより支援しやすくなります。このような見方で作品を読み進めていくことで、一見すると意味の分かりづらい言葉や表現にも、それと対をなす言葉や表現が存在していることに、子供たちは気付けるようになっていきます。
また、それらを比較していくことで、それぞれの場面で何を・どのように描こうとしているのかについて考えが持てるようになっていくことでしょう。

こうして物語の全体像を捉えたうえで、読解のまとめとなる言語活動として、宮沢賢治がこの作品に込めた思いについて考え、文章を書く活動を行います。「文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめる」という本単元で育みたい資質・能力に関わる重要な活動です。ここでは「イーハトーヴの夢」で見てきた宮沢賢治の生き方や考え方を改めて想起させるとよいでしょう。
先述したように、「作者の生き方や考え方を踏まえて、作品世界を捉える」という学習は、子供たちにとって初めての経験です。200字程度の長さで構いませんので、①宮沢賢治がこの作品で何を表現したかったのか ②作中のどのような点からそう考えたのかの二点に言及するように伝えましょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 日常的に作家や作品と出合える環境をつくる

主体的な学びを引き出す上で大切なのは、本単元の学習を通じて身に付けたい力を、児童が実感できることだと考えました。本単元では、作者の生き方や考え方を踏まえて、作品世界を捉えることのよさを、児童が実感できるようになることを目指します。

そのためには、作者・宮沢賢治にいつでも触れられるように、教室内に宮沢賢治に関する本や資料を置いておくとよいでしょう。学校司書や公立図書館の協力を得ながら、「イーハトーヴの夢」で紹介されている作品を中心に「宮沢賢治コーナー」を設けましょう。こうした環境を用意することで、国語の授業での教材との出合いが、毎日の読書にもつながっていきます。
宮沢賢治作品は多くの作品が絵本になっています。長い文章を読むことが苦手な子でも、美しい絵で描かれた独創的な世界を目にすることで、作品の魅力を味わえることでしょう。

このように、宮沢賢治との接点を増やすことで、「やまなし」の作品世界を捉えやすくなります。こうした経験によって、本単元で身に付けたい力が、子供たちの実感とともに獲得されていきます。

〈対話的な学び〉 それぞれの捉え方の違いを活かす

対話的な学びを目指す上で大切なのは、子供たち一人一人の捉え方の違いを活かすことです。
例えば「五月」と「十二月」の対比構造を捉える場面では、「それぞれの場面の中で、心を惹かれる表現はどれか」を子供たちに選んでもらいます。それを全体で共有すると、着目した言葉や表現の違いが明らかとなります。また、同じ言葉や表現を選んでいた場合でも、そこから感じることに違いが見られることもあります。このような場面を授業の中で積極的に設けていきます。

ただし、このような違いをただ並びたてるだけでは、それは「意見の述べ合い」に過ぎません。
一人一人の捉え方の違いを「活かす」ためには、その子の捉え方をみんなで理解しようとするプロセスが重要です。「どうしてこの子はこの表現を選んだのだろう」という思考が教室内で絶えず働き続けることを目指しましょう。
このプロセスがあるからこそ、自分一人では気付くことのできなかったことと出合い、自分の考えを広げられるようになります。「自分と考え方は違うけれど、その子の考え方も理解できる」という状態こそが、対話的な学びが営まれている状態であると言えるでしょう。

〈深い学び〉 自己の学びをしっかりと見つめる

本単元のまとめとなる言語活動では、宮沢賢治がこの作品に込めた思いについて考え、文章を書く活動を設定します。「やまなし」の表現や構成の何に着目をしたのかを明確にして、自分の考えを書けるようにします。
書いた文章は、友達と読み合い、交流することで、自他の共通点や相違点を見出すことができます。

これによって、自分がどのような見方・考え方を働かせたのかを意識して、本単元における自己の学びをしっかりと見つめられるようにします。
子供たちがこのような課題意識を持って言語活動に取り組めるように、活動の目的を常に確かめ合いながら授業を進めていきましょう。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)共有した資料を使って、場面の様子を具体的に表現する

「やまなし」の指導では、「五月」「十二月」の谷川の底の様子を絵や図で書き表す活動がよく用いられます。これは、作中の言葉を根拠にしながら、それぞれの場面を具体的に想像して読むうえで有効な手立てです。特に登場人物や出てくるものの位置関係は語り手の視点について考えるうえで重要となります。ほかにも色や形など、注目してほしい要素は複数挙げられます。

しかし、このような要素を網羅的に絵や図に書き表すことが難しい子供もいます。
また、絵を描くことに苦手意識のある子もいることでしょう(もちろん、この活動において絵の上手さは関係ないことは事前に確かめておきましょう)。
こうした子供を支援する手立てとして、クラウド型の学習支援アプリ(ロイロノートなど)を活用することができます。今回はロイロノートを例に説明します。

ロイロノートでは教師から子供たちに対して、簡単な操作で資料を配布することができます。この機能を使って、それぞれの場面に登場する人物や出てくるものの切り抜き画像を配布します。
子供たちは送られてきた画像をワークシート(スライド)に配置させながら、自分の読み取った場面の様子を構成します。画像で表現しきれない部分については、自分たちで描き足せるようにします。
このように「絵を描く」活動を「画像を配置する」活動に置き換えることで、活動の負担を減らすことができるだけではなく、要素の抜け漏れを抑えることができます。

完成したワークシートは提出機能を用いることで、学級全体ですぐに共有することができます。お互いのワークシートを見比べながら、どのような違いがあるかを考え、その根拠となった叙述について確かめていきます。

従来は多くの手間暇のかかる方法でしたが、情報端末を用いることで簡単に実現できるようになりました。

(2)カードを並べて、自分の考えをまとめる

単元のまとめとして、自分の考えを文章に書き表す活動を設定しました。
ロイロノートでは作成したカード同士をつなげることで、情報の整理を支援することができます。付箋のように情報と情報の関係を視覚的に示すことができるため、自分の考えとその根拠となる作中の言葉や表現を関連付けやすくなります。
また、「イーハトーヴの夢」から読み取った作家・宮沢賢治の生き方や考え方についてもカードでまとめておくことで、これを踏まえた意見を形成しやすくなります。

特に、ある程度の分量を書くことを苦手としている子供は、情報の整理につまずくことが多いため、カードを並べて整理することは効果的な支援につながります。

このように、自分の考えを深める場面でも情報端末は大きな力を発揮してくれるでしょう。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名:作者の生き方や考え方を踏まえて、作品の世界をとらえ、自分の考えを書こう

【主な学習活動】
・第一次(1時
①「やまなし」という作品について、作者の生き方や考え方を踏まえて、作品の世界をとらえ、自分の考えを書き表すという見通しをもつ。伝記資料「イーハトーヴの夢」を読み、宮沢賢治についての出来事などを年表にまとめる。〈 端末活用(1)

・第二次(2時3時4時5時
② 伝記資料「イーハトーヴの夢」を読み、宮沢賢治の生き方や考え方について考える。〈 端末活用(1)
③「やまなし」を読み、作品の構成を捉えながら、「五月」と「十二月」をワークシートに表して、場面の様子を具体的に想像する。〈 端末活用(2)
④「五月」と「十二月」の場面について、心を惹かれる表現を選び出し、その表現から感じたことを話し合う。そのうえで、「五月」と「十二月」を比較して、相違点を見つけ出す。
⑤「かわせみ」と「やまなし」に着目しながら、作品の題名を「やまなし」とした意図について考え、作品の世界を捉える。〈 端末活用(3)

・第三次(6時7時8時
⑥ 宮沢賢治が「やまなし」に込めた思いについて考え、理由を明らかにして文章にまとめる。〈 端末活用(3)
⑦ 書いた文章を友達と読み合うことを通して、「やまなし」に込められた思いについて、考えを広げる。〈 端末活用(3)
⑧ 単元全体を振り返り、単元目標に立ち返って学習をまとめる。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
発問の例

5年生で学習したことを思い出してみましょう。伝記を読むときに学んだことは何ですか。

その人物の人生で起こった出来事を年表にまとめて整理しました。

その人物の言動から、生き方や考え方を読み取りました。

指導のポイント

宮沢賢治という作家について尋ねるところから始めます。これは単に子供たちの興味付けのためだけではなく、本単元で作家・宮沢賢治に焦点を当てて学習を進めていくことを明示するために行います。
これによって「やまなし」を読む前に伝記資料「イーハトーヴの夢」を読むことに対して、違和感を与えることなく円滑に進めることができます。

留意点

本単元中は、教室内に宮沢賢治コーナーを特設することを授業の終わりに伝えます。作品を読んだらチェックを付けられる表を用意するなど、子供たちがより積極的に特設コーナーを利用するように促しましょう。

端末活用の方法や効果

ロイロノートでワークシートを配布して、「イーハトーヴの夢」の内容を年表にまとめる活動を行います。クラスの実態や授業時数などの兼ね合いで、子供たちに直接入力させることが難しい場合は、「時期」・「主な出来事」・「賢治の言動」を書いたカードを用意しておき、それをワークシートのなかに配置させる方法を採ってもよいでしょう。この場合は、特に注目したい内容にしぼってカードを用意するとよいでしょう。

なお、この部分は家庭学習にするなど、クラスの実態に応じた扱い方で構いません。

<ワークシート例> 

ワークシート例
▶︎ワークシート例のダウンロード

<カード例>

カード例

【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
発問の例

宮沢賢治の生き方や考え方が読み取れる言動は、どのようなものがありましたか。

「そのために一生をささげたい」という言葉から賢治の強い覚悟が読み取れました。農作物の被害で苦しむ人を何としても助けたいという思いを持った、尊敬できる人物であると感じました。

「やさしさを人々に育ててもらうために、賢治は、たくさんの詩や童話を書いた」というところから、賢治がおもしろい作品を楽しんでもらおうという気持ちではなく、伝えたい思いがあって作品を書いていたことが分かりました。

指導のポイント

本時では、「イーハトーヴの夢」の記述から読み取れる宮沢賢治の生き方や考え方についてみていきます。特に文学作品に対する賢治の考え方と、その作品に表されている賢治の思想について着目できるように進めていくことが大切です。
子供たちが見落としている場合は、「これから『やまなし』を読んでいくにあたって、賢治がどのような考えで文学作品を書いていたかが読み取れるところはあるかな」などと教師が指導性を発揮する必要があります。

留意点

賢治の生き方や考え方をまとめることが難しい子供には、「自分と重なるところはあるかな」「自分と違うところはどこだろう」などと、自分と比較してみるよう促すのもよいでしょう。

評価について
評価について

【3時間目の板書例 】

イラスト/横井智美、小野寺裕美

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