47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業#18 琥珀がくれる「感動」

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業をつくる。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載。原則として毎週公開します。今回の執筆者は、岩手県洋野町の八木雄希先生です。
編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/八木雄希(岩手県公立小学校教諭)
目次
1 はじめに
みなさん、こんにちは。
岩手県洋野町にある小学校に勤務しております、八木雄希と申します。
私は初任時代から現在までの約7年間、同じ岩手県の有名小学校教諭、古舘良純先生のもとで学ばせてもらっています。あるとき、古舘先生から「次の地域道徳の実践発表の枠があるんだけど、やる?」と誘っていただき、地域道徳への門をたたきました。
その時までは、イチから教材をつくることについて正直怖い、難しそうというイメージがありました。到底自分にはできない物だと考えており、とても抵抗があったのです。しかし、胸の中には今回紹介する「琥珀」について、いつか授業にしてみたいという想いもありました。
私にとって大切なものである「琥珀」。それはなぜかというと、祖父から就職祝いにもらったものだから、そして様々な縁を結んでくれたからです。
では、本文に入る前に少しだけ皆さんにしていただきたいことがあります。それは、今までに「何かに感動したこと」を思い出すことです。私は最近ですと、サッカー日本代表がブラジルに初勝利したことや、映画「国宝」での俳優の方々の演技の素晴らしさ、学級の子たちの成長などがあります。
なんでもかまいません。思い出すことができたでしょうか。
みなさんが思い出した、「感動したこと」。その「感動」は、何を感じたから心が動いたのですか?
よくは思い出せないけど、「なんとなく」感動したことは覚えているんだよな~。
こんな答えが多いのではないでしょうか。私もいきなり聞かれたら、そうなると思います(笑)。
でも、その「なんとなく」の解像度を上げていくと、自分が大切にしている何かが見えてくるのではないかと考えています。
普段は「感動」ということについてあまり深く考えませんよね。ですから今回は、皆さんのお時間を少しいただきながら、「感動」の中に隠れているものはどんなものかについて、「琥珀」を通して、一緒に考えていければと思っております。
2 教材の背景
「はじめに」で書かせていただいた、私にとって大切な物である「琥珀」。その理由について少し具体的に書かせていただきます。
祖父からの就職祝い
来年度から岩手の教員として働くことになったことを祖父へ報告しに行ったある日。その時、「渡したいものがある。」といって渡してくれたのが、下に掲載した二つの琥珀です。琥珀と言えばオレンジ色のものを想像していました。しかし、一つは黒色で、不思議に思ったことを今でも覚えています。また、その時はあまり久慈琥珀についても深く知らなかったため、「琥珀がたくさんとれる場所なのだな」と思い、宝石の一つなのだなと思った程度でした。
琥珀の産地久慈近くへの転勤 何かの縁と感じる
初任校での3年間を終え、次に赴任する学校は琥珀がよくとれる久慈市の隣にある洋野町。ここで、久慈との縁、琥珀との縁を感じました。しかし、いざ久慈に住むと「いつでも行けるし、まあいいだろう」と久慈琥珀博物館や琥珀についてもあまり調べることがなく時間が過ぎていってしました。
しかし、ここで転機が訪れました。藤原先生の秋田での道徳学習会の後、以前からお世話になっている古舘先生に、「八木君、やりたくなったんじゃない? 次の地域道徳の授業者、やる?」と言っていただき、少し不安もありつつ「やってみます!」と返事をしました。
そのテーマは、地域の「なんか尊い」。
洋野や久慈の「尊い」を調べながら、久慈の琥珀についての情報にも触れ、「自分が祖父からもらった琥珀と絡めた授業をしよう!」と決めた瞬間でした。


3 授業の実際
対 象: 小学4年
主題名: 琥珀を通して考える感動
内容項目:D21 感動、畏敬の念
導入 「みなさんは、感動するってどんなことだと思いますか?」
- 泣くこと
- 悲しいこと
- すごいと思うこと
- 切ないこと
ここで、「悲しいこと」という発言が子どもたちから出てきており、担任の感覚との間にギャップがありました。そのため、捉えのギャップを埋めようと、それについて聞き返しました。
T「なんで悲しいと思ったの?」
C「だって、(映画『鬼滅の刃』の)煉獄さんが死んじゃったところで泣いちゃったから」
ここで、子どもたちの「悲しい」という心の動きの中にある「感動」が、じつは担任の想像と近いものがあることに気付き、捉えをより近づけるため、また聞き返しました。
T「もしかして、それは自分の命をはって仲間を助けたことに感動したのかな?」
C「そう!」
T「そうすると、みんなの中の感動するってことは、マイナスかプラスかでいうとどっちの気持ちが強いかな?」
C「プラス!」
これで、「感動」という言葉への捉えがある程度学級の中で統一されたと捉え、「琥珀」の話題に入ります。
「じつは先生もあるものをもらって、すごいな~って感動したことがあるんだよ」
琥珀の現物を見せる。先に黒い方を見せる。
T「何か分かる人?」
C「宝石だ!」「石かな?」
次にオレンジの方を見せる。
T「これは?」
C「知ってる!琥珀だ!」「きれい!」「どっちもおっきい!」
T「きれいだよね。じつはこれ、先生になるときにおじいちゃんからもらったものなんです。そして、これは久慈琥珀と言われるものなんだって。先生、気になっていろいろ調べてみたら、たくさんの『すごい! 』がありました!どんな『すごい』が隠れているのか見つけていきながら、今日は『感動』について詳しく考えてみよう。」
その後、以下の情報についてスライド等を用いながら説明します。
- 祖父からもらった琥珀がきれいだという感動。(きれい)
- 祖父がなぜ私にこれを渡してくれたのかという想いをきいての感動。(想い)
- 久慈琥珀が出来るまでには、約9000万年の長い年月がかかるということについての感動。(長い年月がかかるという凄さ)
- 久慈琥珀の中には、昔の生き物が入っていることがあり、「昆虫の化石」として、世界でも有数の産地であることへの感動。(不思議さ)
- 琥珀は数年から数十年かけて、ゆっくりと色やひびなども入ってしまい、変化するため、「生きている化石」とも言われていることへの感動。(不思議さ)
- 世界には赤や青など、様々な色をした琥珀が存在していることへの感動。(美しさ)
- 子どもたちにとって身近な久慈という場所に、日本で一番琥珀がとれる場所があること。また、世界でも有数のきれいな状態で琥珀がとれる産地であることへの感動。(驚き)
このように、琥珀を通して見えてきたたくさんの「すごい!=感動」を子どもたちに伝えました。
導入場面では「感動」=「悲しい」という答えがとても多く、その後この授業での学びを通して感動についての捉えがどのように変化したのかを確認したかったため、最後にもあえて導入時と同じ問いを投げかけました。
発問「あなたにとって、感動するとはどんなことですか?」
児童からは、以下のような発言や記述がありました。
- 感動することは、マイナスなことだと思っていたけど、プラスのことだと分かった
- たくさんの感動があって、久慈琥珀ってすごいな~って思ったら泣いてしまった
- きれい、不思議など、そういう気持ちも感動するってことなんだと思った
4 どこへつなげるか
執筆時点ではまだ構想段階ですが、道徳科の3時間をつなげてデザインし、内容項目と照らし合わせながら、地域のことについてより深く知る時間にしたいと考えています(この単元構想についてはまだ検討中です。ぜひ、皆さんのご意見、ご批判もお聞かせいただければ今後の学びになりますので、ぜひよろしくお願いします)。
1時間目の内容項目は、「国際理解・国際親善」。
他国の人々や文化について、普段食べている食べ物や着ている衣服など、国語科の「暮らしの中の和と洋」という単元での学びとつなぎながら、理解を深めていきます。
その際に、今回の「琥珀」や洋野町での伝統的なウニ採りの方法である「南部潜り」について触れます。
海外にも琥珀の産地があり、伝統的なウニの採り方がありますので、地域と世界の共通点と相違点にも気づくことができるはずです。そうした共通点や相違点について深く知っていくきっかけをつくる授業とします。琥珀、ウニの漁法については、これ以降の時間で学びを深めていきます。
2時間目は、今回紹介させていただいた「琥珀」の授業。
内容項目は、「感動・畏敬の念」。私自身の経験に基づいた「琥珀」の授業を行いました。今回の展開に加え、海外の琥珀を示しながら違う授業をつくっていくこともおもしろそうだと感じています。
3時間目は、地域の名産品であるウニや、「南部潜り」というウニを採る方法について学ぶ授業。
内容項目は「勤労・公共の精神」で考えています。
ウニ採りの伝統的な方法には、素潜りのほか、「南部潜り」という洋野町で行われている独特の方法があります。それは命の危険と隣り合わせで、漁師仲間の一人一人がそれぞれ自分の役割を果たし、力を合わせないとやり遂げることが難しい漁法です。この漁を切り口としながら、みんなのために自分にできることを頑張っていこう、という意欲や態度を育てていきたいと考えています
また、本校には海洋科という町独自の教科があります。
その中で「ウニ」について学び、実際にウニの増殖溝を見学する時間もあります。それらとも絡めながら、より多面的に地域のことを学ぶことができるようにしていきたいと考えています。海洋科の学びについては、2月の授業参観で毎年発表しています。
5 おわりに
「おいしい」「きれい」「うつくしい」など、心が何かを感じてそれがあるレベルを超えて大きく動いた時、それらが「感動」という一つの言葉に集約されるのではないかと私は考えています。つまり、感動という言葉の中には、様々な感情や物などが包含されていて、それらが絡み合っているのではないかということです。
今回、このような文章を初めて書かせていただいたことで、自分自身の理解も深まっていったように感じます。拙い文章でうまく伝えきれていないこともたくさんあると思います。
また、感動についての私の理解についても、賛否両論あると思います。
この記事を基に、自分ならこうする、家族にもらったあれが使えそうだ、感動は言葉にならないからこそいいいんだ……など、たくさんの考えが生まれ、多様な議論へつながっていくなら、それはとても嬉しいことです。
私自身も皆様のご意見等を真摯に受け止め、これからの教育活動に生かしていきたいと考えています。
祖父からもらった「琥珀」は初めての地域教材作成の一歩を後押ししてくれた、私にとってかけがえのないものとなりました。これからも私の原点となるものです。
今回、このような機会をいただいた藤原友和先生、私と藤原先生とをつないでいただいた古舘良純先生に心より感謝申し上げます。
そして地域道徳と私をつなげてくれた今は亡き祖父に対しても、感謝の気持ちでいっぱいです。
最後までお読みいただきありがとうございました
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