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堀 裕嗣✕宇野弘恵 キャッチボール連載 独自開発教材でつくる 渾身の「三つ星道徳授業」#5 雨に咲く紫陽花 月に映る紅葉~和菓子 by 宇野弘恵

連載
堀裕嗣&北海道アベンジャーズの シンクロ道徳の現在形
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北海道公立中学校教諭

堀 裕嗣

北海道公立小学校教諭

宇野弘恵
連載「渾身の三つ星道徳授業」バナー

魅力的なオリジナル教材を続々と開発し、最先端の道徳授業実践を蓄積し続け る堀先生と宇野先生が交互にそれぞれの自信作を公開。さらには相手の教材開発と授業づくりについて解説し合う新連載です。イメージしながら読むだけで感情と思考が大きく揺さぶられる傑作揃いです。

執筆/宇野弘恵(北海道公立小学校教諭)・解説/堀 裕嗣(北海道公立中学校教 

1 授業の実際

『雨に咲く紫陽花 月に映る紅葉』
C/伝統と文化の尊重  対象学年/高学年以上

① 和菓子とはどういうもの?

名古屋の老舗和菓子店・美濃忠の羊羹「初かつを」の画像を提示します。できるだけ鰹の刺身のように見える画像があるとよいでしょう。そうすると、

「何のお刺身だと思いますか」

という問いから授業を始めることができます。これは、「刺身だと思ったら和菓子!?」というギャップを引き出すためです。子どもたちにとって恐らく馴染の薄い和菓子への興味をもたせるねらいがあります。

少しやりとりを楽しみながら授業を進め、

「これは、鰹の刺身……ではなく、じつは羊羹なのです」

と明かします。その後、この羊羹を作っている美濃忠と「初かつを」について説明します。

この羊羹は、名古屋の美濃忠でつくられています。美濃忠は安政元年(1854年)創業の老舗和菓子店です。

「初がつを」は葛をたっぷり用いて蒸し上げて作りますが、その途中で一度やさしくかき混ぜます。かき混ぜた生地が自然に重なり合って太い線や細い線が織り交ざった模様になり、初鰹の身のような美しい縞ができるのです。

こうして冷やし固められた羊羹は、包丁ではなく糸を使って切り分けます。葛をたっぷり使った羊羹は柔らかく、包丁で切ると刃に生地がついてしまい断面がつぶれたり崩れたりします。糸で切ることで美しい断面に仕上がり、鰹の切り身そっくりの縞模様が現れます。

「初かつを」は、江戸時代初めの頃に尾張藩御用菓子屋・桔梗屋で生まれたと伝えられています。のちにその製法を引き継いだ美濃忠が、現在まで大切に作り続けている伝統の和菓子です。

本物のカツオのお刺身に似せた「初かつを」。でも、カツオの味がするわけではなく、甘い和菓子です。なぜ、こんな和菓子を作るのでしょうか。考えてみましょう。

交流してみましょう。

ここでは、さまざまな考えを自由に交流するにとどめます。正解には触れず問いの余韻を残したまま次に進みます。

「他にもこんな和菓子があります」

といって、数枚の和菓子の画像を見せます。春夏秋冬を象徴するような和菓子にするのがポイントです。食べ物だけでなく、季節がわかる動植物の和菓子も混ぜるとよいでしょう。

季節を表現した和菓子
季節を表現した和菓子
季節を表現した和菓子
季節を表現した和菓子

最初に提示した「初かつを」も一緒に提示し、和菓子とはどういうものだと思ったかを訊きます。概ね和菓子と季節の関係性を読み取りますが、「初かつを」には解説が必要です。

初鰹は、春から初夏にかけて獲れる鰹です。江戸時代には「初物」を食べると長生きできると信じられ、初鰹は季節を告げる味覚として人々に親しまれました。「初かつを」は、それにちなんで作られた季節の和菓子です。

和菓子とは、日本の四季の美しさや季節の文化をお菓子にしたものなのです。

最後の和菓子と四季の説明のときには、春夏秋冬が分かりやすく表現された和菓子の画像を提示するとより理解が得られるでしょう。

② 和菓子と四季との関係って?

「この和菓子は、どの季節の何を表現したお菓子だと思いますか」

と問いながら、和菓子の画像を提示します。

紫陽花をイメージした和菓子の写真

簡単に交流した後、季節は夏で、紫陽花を模した和菓子であることを画像とともに示します。

紫陽花の花の写真

このほか、「冬 雪」「春 しょうぶ」「冬 氷の下の葉」「秋 紅葉」「夏 入道雲」などの画像を同様に提示しながら考えさせます。

その後、「季節の文化」にも触れ、「ひな祭り(桃の節句)」「五月人形 こいのぼり(端午の節句)」「天の川(七夕)」などの画像も示します。

ここでは、満遍なく季節を出すこと、思わずうっとりするような美しい和菓子を提示することがポイントです。日本の四季の美しさが和菓子で美しく表現されることの凄さを感じられるようにします。

③ 日本の美意識の根底にあるものとは?

日本ならではの四季の移ろいを表現した和菓子。洗練された美意識を目で味わう文化が日本にはあるのですね。

でも、不思議だとは思いませんか。和菓子は、食べたらなくなってしまうものです。飾り物ならずっと飾って愛でることもできますが、そんなことはできません。食べたらすぐになくなってしまうものなのに、なぜここまで美しく作るのでしょう。考えてみましょう。

交流してみましょう。

全体交流はせずに、2枚のスライドを提示します。スライドは一文一文をゆっくり提示します。敢えて読み上げず、一人ひとりが心の中でじっくり言葉を噛み締める時間とします。

スライド1

授業で使うスライド その1

スライド2

授業で使うスライド その2

④ 和菓子の美しさにどっぷり浸ろう

1月から12月までの和菓子を月毎に見せます。できるだけ多様な画像を多数提示します。私は、5分ほどの動画にまとめました。和のテイストのある音楽に載せて画像を見せると、和菓子の美しさと日本の四季の移ろいの美しさへの感動が倍増します。おススメです。

⑤ 自分の和菓子を創ろう

以下のワークシートを配り、自分が食べてみたい季節の和菓子を考えます。どの季節の何をどんな和菓子に……? イラストは色鉛筆で着色し、簡単な説明も加えさせます。書いた後は交流し、和菓子を紹介し合う活動にします。

子どもが「食べてみたい和菓子」を考えるためのワークシート

2 この授業をつくるにあたって

森下典子さんのエッセイ『日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮社 2008年)には、「初かつを」が茶席の季節の菓子として登場します。森下さんは、その見た目が本物の初鰹の切り身のようであることに驚き、和菓子は季節を目でも味わうものなのだと感じたそうです。
――へえ。和菓子って、単なるお茶請けじゃないんだ。和菓子は季節を表現したものだったのかあ。

もっと和菓子について知りたいと思い、何冊かの和菓子の本を購入しました。桜の花びらを美しく散らせたもの、舞い降りる一片の雪のようなもの、真っ赤な美しい牡丹……。なんとまあ美しいのでしょう。ネットを見渡せば、うっとりするような美しい和菓子もたくさんありました。私はすっかり見入ってしまいました。

この勢いでつくられたのが本授業です。なぜ魚を模した羊羹があるのかという疑問を入り口に、和菓子は季節を目で食べるものだというところに辿り着く。日本の四季の美しさとそれを和菓子にするという何とも日本人らしい発想。こんな繊細で美しい文化が日本にあることを子どもに知らせたい。味わわせたい。そんな思いで一気に授業をつくりました。

あるとき、堀さんから

「この授業に一つ空いていたピースが見つかった!」

と言われました。とてもよい授業なんだけど、もう一歩先に何かあると考えていた。それが何かわかったというのです。

堀さんが見つけたのは「無常」でした。日本人の美意識に根付いている無常観が和菓子にあるのだと。ずっと飾っておけるならまだしも、食べたら消えてしまうお菓子をなぜにかくも美しくつくるのか。

花は散る。雪は溶ける。出会えば別れる。全ては始まって終わる。この移ろいゆくものを受け入れ儚さの中に美しさを見出す。食べて無くなることが初めからわかっているからこそ、その瞬間の美しさを楽しみ儚さを味わう。そんな無常観が和菓子には息づいているのだと、私も思いました。

四季がはっきりした日本では、自然の移ろいを身近に感じることができます。その美しさと儚さを愛でる感性をこの授業で育めたなら……。そんな願いを込めた授業です。

追記

この授業は高学年以上としていますが、最後の無常観の件を省けば小学校1年生でも十分機能します。ぜひ、実践してみてください。

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