第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞 受賞「つながる学校図書館」磯部真代氏の活動レポート【PR】
「博報賞」は、児童教育の現場を活性化し支援することを目的として、公益財団法人博報堂教育財団が主催する賞です。全国の学校や団体、教育実践者が取り組む創造的な教育活動を表彰し、その価値ある実践を社会に広めることで、日本の教育全体の質の向上に貢献しています。 各受賞者には賞状と副賞が贈られ、とくに優れた取り組みには文部科学大臣賞も授与されます。
今回は、第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞(特別支援教育領域)を受賞した磯部真代氏(浜松市立蒲小学校教頭)の取り組みをご紹介します。
提供/公益財団法人 博報堂教育財団
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静岡県浜松市立蒲(かば)小学校教頭 磯部真代(いそべ・まさよ)氏の「学校図書館を拠点に『つながる学校』を創造する」実践は、図書室を核として子ども・教職員・保護者・地域がゆるやかに結びつき、ともに学び合う環境を構築することを目的とした取り組みです。
図書室を地域にも開かれた拠点として活用し、ボランティアの組織化や「ブックカフェ」、学びのマップの整備などを通じて、多様な人々の関わりを可視化・促進することで、子どもたちは学びの広がりや他者とのつながりを実感しながら主体的に活動しています。こうした実践は、学校図書館の新たな可能性を引き出し、学習・居場所・協働の機能を兼ね備えた包括的な教育基盤として高く評価されました。
また、異動や役職の変化に応じて実践を発展させつつ、自身の理念を組織の中で具現化してきた点も特徴であり、教職の専門性の在り方を示しています。
第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞(独創性と先駆性を兼ね備えた教育活動領域)を受賞した本実践について、慶應義塾大学教授・佐久間亜紀氏によるレポートをご覧ください。
目次
学校図書館を拠点に「つながる学校」を創造する実践——磯部真代氏の実践レポート (報告者:佐久間亜紀氏)
第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞 受賞(独創性と先駆性を兼ね備えた教育活動領域)
静岡県 磯部真代氏(浜松市立蒲小学校教頭)
報告者:慶應義塾大学教授・佐久間亜紀氏
本稿では、公益財団法人博報堂教育財団の第56 回「博報賞」独創性と先駆性を兼ね備えた教育活動領域で、博報賞・文部科学大臣賞を個人として受賞された、静岡県の磯部真代先生の取り組みを紹介したい。
「朝、まずは図書室にいらしてください!」
寒い中にも春の陽ざしを感じる2026年2月24日、静岡県浜松市立蒲小学校に伺った。笑顔で出迎えてくださった磯部先生が、真っ先に案内してくださったのは学校図書室だった。
朝7時50分。まだ多くの子どもたちが登校している最中だというのに、すでに図書室は明るくて、数名の子どもたちと、学校支援ボランティアの皆さんの笑い声が響いていた。図書の整理作業、掲示物の作成、感謝のお花の贈呈など、いくつものプロジェクトが目まぐるしい速さで同時進行している。
8時になると、あちこちの教室で、朝読書の時間が始まった。いくつかの教室では、ボランティアの方々が紙芝居や読み聞かせをしていて、子どもたちが熱心に聞き入っていた。教室を回っている間にも、たくさんの地域の方とすれ違う。そのたびに磯部先生は「あの方は図書室の整備をしてくださっているボランティアの方で…」「今の方は学校運営協議会の方で…」と、一人ひとりについて詳細に紹介してくださる。教頭として異動してまだ二年目だというのに、こんなに多くの地域の方のお人柄まで掴んでいることに、圧倒されてしまった。

図書室を拠点に学校ボランティアを組織化
それもそのはず、磯部先生は昨年度異動してきてから、校長の「地域とともにある学校」という学校教育目標を実現しようと、教頭としてボランティアの組織化に取り組んでこられたのだという。
創立152年の蒲小学校は、住民と学校との関わりも長く、住民の思いや願いもさまざまだ。近年では、コミュニティ・スクールとして学校運営協議会の熟議による運営も進められている。そこで、地域の方々のさまざまな関わりを「見える化」し、地域住民・在校生保護者・教職員らが、ゆるやかなつながりの中で子どもを育むために、協力体制をつくろうというプロジェクトを学校全体で始動させた。名づけて、「咲かそう!蒲桜プロジェクト」。この取り組みは、地域の誇りである「蒲桜」をモチーフにしたそうだ。
その特徴の一つに、プロジェクトの拠点として図書室がフル活用されていることが挙げられる。磯部先生は、「地域の人たちが学校に来たときに、自分の居場所だと思ってもらえる場所が必要なんですよね」と語る。さまざまなプロジェクトが、図書室の機能を利用しながら展開されていた。例えば、学校支援コーディネーターの方は、「教室の扇風機が冬の間に埃(ほこり)まみれになるのを何とかしたい」という先生方の声を聴いて、6年生の子どもたちの有志を卒業プロジェクトの一環として募り、子どもたちと共同で学校中の扇風機カバーを製作したという。作品を各教室に贈るための包装作業も、図書室で子どもたちと共に行われていた。この「コミスク・ソーイング」という活動には、不登校傾向だった子どもも楽しく参加して、先生方を驚かせたという。

つながる学校図書館プロジェクト
実は、「図書室を学校に集う人々や子どもたちの学びの拠点に!」というアイデアは、磯部先生が蒲小学校に着任するずっと前から探究してきたものだった。
磯部先生が学校図書館の大切さを発見したのは、育児休暇中だったそうだ。子育てを第一にする日々の中にあって、わが子に読み聞かせをする喜びを味わっただけでなく、仕事から遠ざかっても、読書や図書館が自分の世界を広げてくれる、と痛感したのだという。
そして驚いたことに、磯部先生はその気づきを形にしようと、具体的に動き出したのである。育休明けには、仕事と育児の両立に奔走しながら、見事に司書教諭の資格を取得した。さらに、2019年には教職大学院に入学したという。当初は、学校図書館を授業にどう活用するかについて学ぼうとしていたが、子どもたちと図書室の距離を近づけるための調査や研究を進めていくうちに、学校図書館には、もっと大きな可能性があることに気づいていったという。
そこでまず、大学院生かつ司書教諭という立場から、「つながる学校図書館プロジェクト」の取り組みを開始した。この取り組みでは、図書委員会の子どもたちの「学校の役に立てたらいいな」という思いと、ボランティアの方々の「何か役に立ちたい」という思いをつなげて、「ブックカフェ」の実施に取り組んだ。音楽家やアナウンサーなど地域のさまざまな人々を招いて、昼休みに講座を開く活動である。その結果、学校図書館への来館者数が年に二万人を超えるようになり、貸出冊数も前年の約二割増になったという。
また、教職員が自由に集い、地域の人を講師として招いて学んだり、互いを講師として学びあったりする「職員版ブックカフェ」の活動も行った。このときの教職員の学びの成果は、PTAの協力を経て、子どもの学習に役立つ地域資料として一冊の本にもなっている。
異動先の環境に合わせて取り組みを展開
大学院終了後に異動した浜松市立与進北小学校で、磯部先生は、教務主任かつコミュニティ・スクール担当教員としての役割を与えられた。そこで磯部先生は、この新しい立ち位置から、「つながる学校」の取り組みを展開していった。まず、学校図書館と関連できる授業や、地域にいる方の情報などを一元化した「学びのマップ」を構成して、教育活動全体をつなげていった。また、「よきたカフェ」「よきたコミスクカフェ」を子ども版、職員版、保護者・地域版へと展開して、みんなが学校づくりに参画する意識を高めていった。さらに、「子どもや人々がつながる」ための場所づくりとして、図書室横の旧パソコン室をラーニング・コモンズという発想で整備し、「ひだまり」という居場所も誕生させていった。
こうしたさまざまな実践の積み重ねを土台として、蒲小の「咲かそう!蒲桜プロジェクト」が生み出されていたのである。


学校図書館の無限の可能性
磯部先生の一連の活動が高く評価された理由は、ITやDXが重視される今の時代にあって、改めて学校図書館に着目し、その可能性を多角的に具現化している点にある。一般的な学校に通う子どもの多くは、学校の図書室は単に本を借りる場所だ、という程度にしか思っていないかもしれない。磯部先生自身も、当初は、学校図書館は授業に利用するための場所だとしか思っていなかった。でも、研究を始めてから、それがとんでもない視野狭窄(しやきょうさく)だったと気づいていった過程が、実に興味深い。
今、磯部先生は、学校図書館とは「常に新しいアイデアで成長し続け、未知の世界とつながり、学ぶ楽しさや喜びを体感することのできる無限の可能性をもった場所」だと語る。学校図書館は、人と情報と地域をつなぐ拠点であり、さまざまな教育課題の解決に必要不可欠な場所だというのである。学校図書館の機能をフルに活用してカリキュラムをデザインすれば、授業に地域の学習教材も織り交ぜながら、学びを豊かにしていける。また、図書室には保健室とは違う包摂力があるから、不登校傾向の子どもたちも安心できる居場所になりうる。教師たちが、職員室とは違う形で出会い直し、学び合う場所にもなる。さらに、地域の人たち同士が学び合い、交流し、地域をつくる拠点にさえなっていく。
「最初から特に図書館にこだわろうと思っていたわけではないのですが、やっぱり最後は図書館に頼ろう!ということになってしまう。そんな不思議な力が図書館にはあるんです」と、磯部先生は語る。

組織人として専門性を発揮する
磯部先生の活動が高く評価されたもう一つの重要な点は、異動しても立場が変わっても、自分の探究したいテーマを与えられた環境で独創的に実践していたことである。
組織における自分の役割をきちんと引き受けながら、しかしなおかつ、自分自身が教師として大事にしたい理念を実践化することを諦めない。この磯部先生のスタイルには、組織人としての教職の専門性が見事に発揮されていると言ってよいのではないか。
一人ひとりの先生が、磯部先生のように、組織の中で役割を引き受けつつ、そこに自分が教師として大切にしたいことをつなげて具現化していけたなら、学校はもっともっと楽しい場所になるに違いない。
「学校に集う人々と、互いの良さを出し合いながら、これからの未来を共に創造していきたい」と磯部先生は語る。皆のアイデアで、今日も一日が積み上げられている。
(記事記載の所属・役職は2025年度取材時のものです)
第57回「博報賞」の応募は現在受付中です。応募には推薦者資格を有する第三者(教育長、校長会会長、教育関連団体代表者など)による推薦が必要となっています。自薦はできませんのでご注意ください。
応募締め切り: 2026年6月25日(木)
応募方法: 博報堂教育財団のホームページ(下のボタンをクリック)から応募書類をダウンロードし、必要事項を記入のうえご応募ください。

