第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞 受賞「西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校」活動レポート(前編)【PR】
「博報賞」は、児童教育の現場を活性化し支援することを目的として、公益財団法人博報堂教育財団が主催する賞です。全国の学校や団体、教育実践者が取り組む創造的な教育活動を表彰し、その価値ある実践を社会に広めることで、日本の教育全体の質の向上に貢献しています。
各受賞者には賞状と副賞が贈られ、とくに優れた取組には文部科学大臣賞も授与されます。今回は、第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞(日本文化・ふるさと共創教育領域)を受賞した西都銀上(しろかみ)学園 西都市立銀上小学校・銀鏡(しろみ)中学校の取組をご紹介します。
提供/公益財団法人 博報堂教育財団
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西都銀上学園の山村留学制度は、宮崎県の豊かな自然と伝統文化を舞台に、30年にわたり子どもたちの自立心と豊かな心を育んできた取組です。児童生徒はスマートフォンのない環境で里親や地域住民と深く関わり、国指定重要無形民俗文化財「銀鏡神楽」などの伝統継承に加わる活動を通じて、たくましく成長しています。こうした学校・家庭・地域が一体となった強固な連携体制が、過疎化が進む山間部における教育の理想的なモデルとして高く評価されました。
また、卒業後も「第二のふるさと」として村を訪れる交流の輪は、単なる教育課程を超え、世代や地域を結ぶ新たなコミュニティの形を示しています。
第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞(日本文化・ふるさと共創教育領域)を受賞した同学園の取組について、北陸大学学長・東風安生氏による前後編のレポート(前編)をご覧ください。
目次
西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校レポート その1(報告者:東風安生氏)
第56回「博報賞」博報賞・文部科学大臣賞 受賞(日本文化・ふるさと共創教育領域)
宮崎県 西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校
報告者:北陸大学学長・東風安生(こち やすお)氏
今回は、公益財団法人 博報堂教育財団の第56 回「博報賞」日本文化・ふるさと共創教育領域で、博報賞・文部科学大臣賞を受賞された宮崎県の「西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校」をレポートする。
2025年12月14日(日)に、宮崎駅からクルマで90分ほどかけて熊本県との県境の山間部の「東米良地区」へ向かった。ここは、西都市内にある。緑と水の宝庫で、特産物はゆず、神楽の歴史を受け継ぐ村である。その地域の教育拠点である銀上学園(銀上小学校・銀鏡中学校一貫校)を訪れた。
山村留学制度を始めて30年。他の地区は募集しても児童生徒が集まらずにやめていった。なぜここ銀上学園は継続できたのか。その解明へ向けた取材報告を今回と次回の2回に分けて行う。
銀上学園は、自然の恵みを受け入れた小学生と中学生の学び舎
1995年に少子化対策として山村留学制度を始めた宮崎県。大自然を売りにした新たな改革として注目を浴びた。それから30年が経過した。多くの地域では子どもが集まらずに中止していった。それでも、現在銀上学園は、銀上小学校に11名の児童が学び、銀鏡中学校に7名の生徒が学ぶ。今年は小学生11名のうち8名が留学制度による入学者であり、中学生は全校生徒7名のうち6名がこの制度で入学している。県内唯一の山村留学制度を継続した学校だ。

銀上学園は、一つの校舎に小中学生が共に生活し、「さいと学」と呼ばれる西都市の取組で総合的な学習の時間を中心にした教育課程を編成し、教師と児童生徒が一体となって実施している。教育方針は「自ら学び心豊かで心身ともにたくましい児童生徒の育成」。子どもたちが、自分たちで進んで学び、心を豊かにもち、明るく元気に生きていく。こうした姿が、西都市の豊かな自然と温かな人間関係の中で培われている。取材で目にした児童生徒は、どの子も村の環境に溶け込んで、生き生きとたくましかった。

山村留学制度を継続するための見えない工夫
学校へ到着する際に、一つ驚いたことがあった。当日は年に一度の例大祭。重要無形文化財に指定された「銀鏡神楽」を見るために、日本全国から大勢の人が集まる。関西や首都圏のナンバーのクルマも駐車している。駐車場の案内は村人のボランティア。山村留学の児童生徒の保護者もいる。明るく道案内をしてくださった保護者の方は、やはり山村留学に来た児童の母親だった。話を伺うと、お母さんも子どもと一緒になって家族留学しているという。お母さんはこの村で仕事をもって働いているそうだ。
山村留学制度について、校長の横山一憲先生に詳しく伺った。留学した児童生徒の宿泊や食事等の生活は基本的に里親が世話をしているという。家族との過ごし方や家での手伝いもその家のルールに合わせている。共通する点としては、スマートフォンやゲーム等の持ち込みは、山村留学実行委員会であらかじめ禁止と説明しているということ。いわゆる「スマホ断ち」である。学校と里親、保護者の三者の調整役として、山村留学実行委員会が間に入り、トラブルが起きた場合には必ず加わるそうだ。

里親と共に生活することで、児童生徒は地域の大人との関わりを通して、だんだんとコミュニケーションがとれるようになっていく。銀上学園の地域に伝統的に続く神楽を中心にした文化を通して、地区の大人たちが児童生徒と積極的に関わる場面が生まれているそうだ。山村留学のルールとして、最初の一カ月は子どものところに保護者が電話をかけてこないよう約束をしているそうだ。ホームシックになる。保護者の方が心配でたまらなくなるのかもしれない。児童生徒はスマホ生活からの激変にどう対応していったのだろうか。この地域にはNPO法人が立ち上げた「山がっこ」というサークルがあり、児童生徒はそこでバーベキューに参加したり、たけのこ掘りや魚釣りをしたりしているという。
そこで、ここまで制度の継続を可能にしてきた理由について尋ねてみた。要因はさまざま考えられるが、横山校長先生は、学校・里親・保護者の中立的な立場として山村留学実行委員会がしっかりと位置付けられていることがポイントであると力強く答えてくださった。実行委員会を中心に留学した期間の生活や留学生の確保などいろいろと工夫したそうである。そして、留学制度による児童生徒の大きな成長こそが、口コミとなって、次の留学生がこの地区へと山村留学をしてみたいという流れになったそうである。公立学校の教員は管理職も含めて、どうしても人事異動がある。継続的に銀上学園の留学制度を見守っていくのは、必然的に地域の実行委員会が中心になる。学校と地域との連携や全国で展開されているコミュニティー・スクールの意義はこうした点からも確認できる。
最も気になる点は、山村留学で学んだ生徒たちが卒業して、その後どのような関わりをもっているかである。横山校長先生はこれに対しても笑顔で答えてくれた。地元で進学し就職していった卒業生と一緒になって、節目となる年に祭りとタイアップして第二の故郷の宮崎に帰省・来県するという。里親との連絡も取り、来県した際に訪問しているようだ。今回の取材の折にも、銀鏡神社の例大祭に合わせて、神楽を見に来たという卒業生と話ができた。愛媛県をはじめ県外から戻って来ている。山村留学制度で学んだ生徒が、卒業後も宮崎県に残って、この村の人々と交流しているという話も聞いた。まさに第二のふるさと。彼らの成長の原点がここにあるのだと理解した。
地域やPTAと連携した、伸びしろの大きな教育課程の工夫
こうした卒業生の活躍が、西都銀上学園に留学させてみようという保護者や学校関係者の思いにつながっていくのだろう。中山哲也教頭先生からは、実際にはチラシを配布して入学募集の活動をしていることも伺った。また、学校の教育課程に関わって、個別最適な学びが一人ひとりの児童生徒にしっかりとできている点を話された。全校児童生徒数が18名。その子のニーズに応じた学びができるカスタムメイドである。また、教育課程が広く社会に開かれているという。つまり、授業にあって教師だけでなく地域の方の話を直接聞いたり、やり方を教わったりと教科書を超えた本物の指導がすぐに実践できるのだ。

総合的な学習の時間の9年間のつながりを見ると、小学校1、2年生の生活科で、銀鏡地区の自然環境を素材として学び、3、4年生から本格的に地区の歴史や伝統文化を学んでいく。それと共に、マイアクションとして6年生までの間に銀鏡地区への期待や希望を、体験を通じて感じ取りまとめる。
5、6年生は視野を広げて、世界や日本との関係の中でSDGs問題についても考えていく。銀鏡中学校に進学すると、こうした学びを活かして西都市のもの・ひと・ことを、郷土の振り返りから始まり、体感し、挑戦し、分かったことを発信し、次のアクションとして貢献したりする。
中学3年生では「さいと学アワード」という探究活動の発表会を市内の全中学校を挙げて実施している。その過程で、秋には山村留学体験に来る方を迎える準備も行う。中学校には、進路指導や職場体験、歴史・風土・福祉を総合的に学び、自らの良さや弱さに気づき、それを克服しようと自信をもって行動できるよう学びの地図(銀鏡中の道しるべ)ができている。
横山校長先生は謙虚に私たちがつくったものでないと教育課程に対して語るが、これまで西都銀上学園に関わった一人ひとりの教職員の願いや地域の人の思いが、成長の伸びしろを大きくするこのマップに表れている。

次回はいよいよ山村留学をしている児童生徒が、この地区の伝統芸能である銀鏡神楽に参加している姿をレポートする。児童生徒の声も踊りの前に伺った。自信をもって地域の一人として文化の伝統に役割を果たす姿を紹介したい。《後編へ続く》※4月1日公開予定です
第57回「博報賞」の応募は2026年4月1日(水)より受付開始します。応募には推薦者資格を有する第三者(教育長、校長会会長、教育関連団体代表者など)による推薦が必要となっています。自薦はできませんのでご注意ください。
応募期間: 2026年4月1日(水)~6月25日(木)
応募方法: 博報堂教育財団のウェブサイト(下のボタンをクリック)から応募書類をダウンロードし、必要事項を記入のうえご応募ください。
