樺山敏郎先生の 全国花まる国語授業めぐり~子どもと登る「ラーニング・マウンテン」! ♯15 千葉県習志野市立袖ヶ浦東小学校「きつねのおきゃくさま」(教育出版2年)の授業

カバT(Teacher&Toshiro)こと、元・文部科学省学力調査官の樺山敏郎先生が全国の国語の研究校の授業を参観し、レポートする連載第15回。今回のカバTは、千葉県習志野市を訪れました。

執筆/樺⼭敏郎 KABAYAMA Toshiro
(⼤妻⼥⼦⼤学家政学部児童学科教授、元・⽂部科学省国⽴教育政策研究所学⼒調査官)
目次
【第15回】 千葉県習志野市立袖ヶ浦東小学校
「きつねのおきゃくさま」(教育出版2年・全10時間中の4時間目)
授業者:塩見諒太教諭
訪問日:令和8(2026)年7月1日(水)
訪問の概要
習志野市立袖ヶ浦東小学校は、同市の国語科教育をリードする伝統ある研究校です。数年に一度、市内外に広く研究成果を還元しています。同校では、本年度より新しい研究主題を設定し、その解明に向けた、数か年にわたる実践研究がスタートしたばかりです。
今回は、第1回目の授業を通した校内研究会として、研究主任の塩見先生が率先垂範して研究授業に挑みました。今回の論点は、学校全体で今後共通して実践しようとする、「ラーニング・マウンテン」を単元の導入段階でどのようにつくっていけばよいかという内容でした。塩見先生は、単元を通して“みんなで解決する課題(問い)”の位置付けについて検討を重ね、提案性の高い授業を展開しました。

Good Practice ~授業の花まるポイント
単元のゴールは、「題名に“サブタイトル”をつけて共有する」
今回の教材は、第2学年「きつねのおきゃくさま」(教育出版)です。
単元のゴールは、「題名に“サブタイトル”をつけて共有する」という、子どもたちにとって分かり易いものでした(参照:学習指導案)。
「きつねのおきゃくさま」というメインタイトル(題名)に“サブタイトル”を言葉にして添えることにより、作品を読む前のイントロとしての興味付け、あるいは読んだ後の余韻として、キャッチコピーのような効果を生み出すことができます。また、サブタイトルには、作品の内容(粗筋)や作品の価値を第三者に分かるように補説するという役割もあります。
塩見先生は、サブタイトル化する狙いについて、「きつねのおきゃくさま」の主題(内容的な価値)に子どもたちがどこまで迫ることができるかを重視し、評価の材料にもしたいとのことでした。塩見先生は、作品全体の読解を通して、子ども一人一人が形成した自分の考え(内容的な価値)を短いサブタイトルとして表出させ、なぜそのサブタイトルにしたかという理由を言語化することを求めたのです。
こうしたサブタイトルを付ける言語活動は、個々の感想の中心を明確する上で有意義なものだと考えます。低学年という発達の段階においては、内容の大体を捉えた上で作品のもつ内容的な価値を共有することが、豊かな読み手を育てることにつながります。
物語全体の構造や内容を概観した上での「問い」の生成
単元を通した学習課題を設定する際、一般的には子ども一人一人の初発の感想の中から疑問を抽出し、それを学級全体として整理し提示することが行われます。初発の疑問ですから、それは多様で幅の広い内容になります。その中には、解答(正答)が文章中に書かれているものや、精読を通してその解決が比較的に容易なものが含まれることがあります。他方、想定外の突飛なものや、文章の叙述を基にしても解答(正答)へと導けないものもあります。時に、人や自然、社会に関わる壮大な問いが生起することもあるでしょう。通常、こうした拡散する問いの存在を否定することなく、よりよい問いの成立に向けて、教師は授業の舵取りをしていくものです。
今回、塩見先生は、単元を通してみんなで解決する課題(問い)の設定を、全10時間中の4時間目に置いていました。その意図は、「“問い”の質を上げたかった」ということでした。
そのために初読後の感想や疑問を出し合う以前に、物語全体の構造や内容についての概観読みを行ったのです(写真1・2)。これは、学習指導要領の指導事項「構造と内容の把握」を行った上で、「精査・解釈」の段階に進むところで、初発の感想や疑問を求め、”問い”の生成に繋げていくという狙いがありました。その結果として、問いの精度や質の向上に繋がっていました。
ただ、こうした流し方を毎回行ったほうがいいかどうかには一考の余地があります。作品の特性に合ったふさわしい問いか否かを検討する能力は、一定の学習の累積によって向上していくものと考えられます。未熟な学習者(それが低学年であっても)は概観読みを通さないと良質な問いを生み出せない、という限定した捉えには陥らないようにしたいものです。
初読後、個々の感想や疑問を共有し、学習者集団の読みの能力を高めることは大切な視点です。

よい問いを学級全体でつくっていく
写真3には、単元を通してみんなで解決する課題(問い)の候補が並んでいます(写真の黒板に貼られているのは7個ですが、実際は計9個提示)。
これらの候補について検討し、よい問いを学級全体で作っていくことが今回の授業の中心でした。実際には次のような流れでした。
①問いの候補(計9個)を教師側で提示する。
➤候補の問いは、前時に提出された全員の疑問を教師側で分類・整理し、教師側で整理したものであった。
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②「よい問い」の条件を教師側で提示する。
【A:自分の考えが書ける問い】
【B:登場人物の気持ちを考えることのできる問い】
【C:いろいろな考えが出そうな問い】
➤前時では、上記の条件を教師側で示した上で、個々の問いを提出するよう求められていた。
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③問いの候補(計9個)について、ABCのそれぞれが当てはまるかどうかを検討する。
➤ワークシートを活用して★に色付けすることにより、いずれにも当てはまるものが視覚化された(写真4)。
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④ベストワンの問いを1個決め、それに付けた★を全部板書に貼り付けて整理する。
➤板書による視覚化を通して、よい問いの条件を多くクリアしているものが明確化された。
↓
⑤教師が主導権を握り、9個の候補を比較しながら学級全体でよい問いを三つに決定した。
➤条件ABCを念頭に置きながら、なぜそれがよい問いを言えるのかが交流を通して整理された。
上記のとおり、①から⑤の流れが丁寧に行われたことで、子どもたちが納得したかたちで問いが整理されていきました。整理された問いは、ラーニング・マウンテンの第2ステージに明記され、単元全体の学習の見通しができていきました(写真5・6)。
【整理された3つの問い】
問い①:なぜ、きつねは、おおかみとたたかったのだろうか?
問い②:なぜ、「はずかしそうに わらって しんだ」のだろうか?
問い③:なぜ、にじの森におはかをつくったのだろうか?






