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樺山敏郎先生の 全国花まる国語授業めぐり~子どもと登る「ラーニング・マウンテン」! ♯14 東京都目黒区立烏森小学校「スイミー」(第2学年)の授業

連載
樺山敏郎先生の 全国花まる国語授業めぐり~子どもと登る「ラーニング・マウンテン」!~
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カバT(Teacher&Toshiro)こと、元・文部科学省学力調査官の樺山敏郎先生が全国の国語の研究校の授業を参観し、レポートする連載第14回。今回のカバTは、東京都目黒区を訪れました。

カバTこと樺山敏郎先生


執筆/樺⼭敏郎  KABAYAMA Toshiro
(⼤妻⼥⼦⼤学家政学部児童学科教授、元・⽂部科学省国⽴教育政策研究所学⼒調査官)

【第14回】 東京都目黒区立烏森小学校
「スイミー」(光村図書2年)

授業者:末松勢津子教諭
訪問日:令和8(2026)年6月23日(火)

訪問の概要
目黒区立の学校は、令和元年度から8年度まで文部科学省研究開発の指定を受け、本年度は最終年度として、計9校が授業公開及び研究発表を行う予定です。烏森小学校もその発表校になっています。同校の研究主題「主体的に学び続ける子どもの育成~子ども一人ひとりが主語になる授業の構築を目指して~」の解明に向け、国語、社会、理科における“複線型”の授業づくりについて先進的な取り組みを行っています。
今回は、低学年の物語教材において、どのような複線化が有効であるかを主なテーマとして、緻密に構想された授業が展開されました。
  

 

授業者 末松勢津子教諭
授業者の末松勢津子教諭。

Good Practice ~授業の花まるポイント (全10時間中の9時間目)

子どもたちと練り上げた「問い」で構成された“ラーニング・マウンテン”

今回の教材は、第2学年「スイミー」(光村図書)です。単元のゴールは、「お話のようすを思いうかべて、すきなばめんについて、つたえあおう」(写真1)。本時(9/10)は各場面の読みを基にして、個々が好きと感じる場面を一つ選択し、教師が示す観点に即してワークシートに書きまとめるという流れでした。

子どもと作り上げた“ラーニング・マウンテン”
写真1 子どもと作り上げた“ラーニング・マウンテン”

写真1を見ると、ラーニング・マウンテンに全10時間の学習内容を色分けして分かりやすく示しています。各時間の学習内容には子ども一人ひとりの問いを全員で練り上げたものが記載されています。全員で決めた問いを大切にしながら、問題解決に向けた学習意欲の喚起や持続化が図られていました。

国語科の物語の読みの指導において、子ども一人ひとりの問いをどこまで取り上げるかについては、重要な鍵を握る論点です。これについて簡潔に言及すると、“問いの質を上げる”ことが大切です。末松先生はこの点を念頭に置き、単元の導入段階(2/10)において教師からの揺さぶりをかけながら、良質な問いに仕上げていきました(写真2)。
写真2からは、ラーニング・マウンテンとして取り上げる前段階として、個々の問いを大切に取り扱った過程が分かります。

初発における子どもたちの問いとレオ=レオ二作品への誘い
写真2 初発における子どもたちの問い

様々な観点に即した“複線型授業”への試み

学習者主体の授業展開の実現のため、以下の観点から複線型授業が展開されていました。

1 学習内容
単元を通して主体的に追及し続けるために、学級全体で学習課題・問いを設定する。
学習課題は、「お話を読み、すきなところをつたえよう」と考えている。
問いは、みんなで出し合い、整理して、学習計画を立てていく。
低学年なので、教師が主導する。
2 学習過程
①問いを確かめ音読⇒②一人で調べる・考える⇒③友達と交流⇒④みんなで検討・まとめる⇒⑤振り返る
同じ流れで展開することで児童がより見通しをもって学習に取り組み、自己調整しながら問題解決を図っていけるようにする。
3 学習形態
学習内容に対して、必要に応じて個人・ペア・グループ・全体の学習形態をとる。
1時間まるごと、個の判断で任せるのは低学年では難しいので、適宜、他者参照を促す。声かけや一斉指導を行い、個の時間、交流の時間、全体の時間を確保できるようにする。
4 学習方法
叙述に基づいて読み取ったことを表すワークシートを複数用意し、難易度別、自分の趣向に沿って選べるようにする。
今回は、「スイミー」の自分だけのブックレットを作り、初発の感想から終末の好きなところとそのわけまで、一覧で見られるように作っていく。

写真3 好きな場面を一人一つ選択
写真3 好きな場面を一人一つ選択
写真4 3種類のワークシートを用意
写真4 3種類のワークシートを用意

写真3では、板書の工夫として子どもたち一人が好きな場面を一つ選択し、ネームプレートを置いています。

写真4では、ワークシートの工夫として3種類が用意され、個々の希望に応じて選択できるような配慮があります。3種類の違いは、教師からの指示内容の多少によるものです。

なお、上記に示した複線型授業の観点の全てを同時に行うことが難しいことも危惧されます。そこで、低学年においては、“プチ複線”と呼び、一単位時間の中の短い時間でも、「学習内容」「学習形態」「学習方法」のどれか一つでも、あるいはいくつかを組み合わせて自己選択できるような工夫が試みられていました。

場面ごとの読みを全体化し、作品世界に浸る

スイミーの場面は大きく五つに分けられます。それぞれの場面の挿絵を拡大印刷した用紙に、場面の様子や登場人物の行動や気持ちについて想像したことをまとめていました(写真5・6)。学習の成果として、場面ごとの読みを全体化し、作品世界に浸ることを大切にしていました。

写真5 場面の読みの整理(第1・2場面)
写真5 場面の読みの整理(第1・2場面)
写真6 場面の読みの整理(第3・4場面)
写真6 場面の読みの整理(第3・4場面)

Advice~エールを込めてアドバイス

「どの場面が好きか」という選択は作品全体を読み味わうことにつながるのか?

本単元の中心となる指導事項は、“場面の様子に注目し、登場人物の行動を具体的に想像する”ことになります。低学年という発達段階を踏まえると、場面ごとの読みを丁寧に行うことが第一義で、その上で好きな場面を選択することにつなげる指導が無理なく行われるものかと思います。
ただ、スイミーという名作を全体として読み味わうという観点に立つと、少し物足りない気がします。“好き”という感情とその理由を教師が整理していくことで、スイミーの主題(内容的な価値)を共有することは可能でしょう。物語の読みを一層深いものにするためには、低学年の段階であっても、主題(内容的な価値)の断片的な印象を交流するだけなく、作品全体の展開構造に注目し、人物の行動や心情の変化、その因果を総合的な捉える読みを重視していきたいものです。

スイミーの主題(書き手の意図)
写真7 スイミーの主題(内容的な価値、書き手の意図)についてのメモ

スイミーの主題(内容的な価値)は、様々捉えることができます(写真7)。なぜ、そうした主題になるのかを熟考することが学びの醍醐味になるでしょう。子供一人ひとりが言葉による見方や考え方を働かせながら、自分の読みを形成し、共有することを重視したいものです。

そうすると、“スイミーになりきって読んでみて、どのようなことを考えましたか?”といった発問が有効かと思います。または、“スイミーはどんなさかなであると、まとめることができますか”と投げかけると、個々の読みの深浅が明らかになるでしょう。あるいは、“スイミーにどのようなことを語りかけますか。あなたもスイミーと同じようなことがあったら教えてください”とすると、まとまった読書感想文になるかもしれません。

〜旅のこぼれ話〜
令和8年11月6日金曜、同校の授業公開及び研究発表が開催されます。国語、社会、理科における実践を通した提案を楽しみにしているところです。新学習指導要領を見据えての公開にもなることでしょう。小生も登壇します。ぜひご参集ください。

「ラーニング・マウンテン」とは…?
「Letʼs Climb the Mountains of Learning」(学びの⼭に登ろう)の略称で、国語科の三領域における単元の学び全体を“山登り”に例え、⼦どもたちが⽬指す頂上(ゴール)とルート(プロセス)をデザインし、⾒える化したものです。筆者のオリジナルです。
コンピテンシー・ベースの国語科授業を⽬指し、 ユニバーサル・デザインに配慮しながら、⼦どもと共に創る学びの実現につなげるねらいがあります。
「ラーニング・マウンテン」には、教師が教えたいことを⼦どもたちが学びたいことへ変えていく⼒があります。そして、マウンテンの頂上に⽴つ⼦どもたちの学びは、教師が教えたいことを越えていく可能性を秘めているのです。
単元の導⼊段階で学び全体の⾒通しをもち、学びの中途における振り返りを⼤切にすることで主体性を育成します。同時に、課題の解決と⽬標の達成という頂上(ゴール)を⽬指して、最後まで粘り強く、学びを調整していこうとする態度を培っていきます。

※この連載は、不定期に更新予定です。

イラスト/大橋明子

樺山敏郎教授の顔写真

かばやま・としろう。早稲田大学大学院教育学研究科卒、教育学修士。鹿児島県内公立小学校教諭、教頭、教育委員会指導主事を歴任後、2006年度から2014年度まで文部科学省国立教育政策研究所学力調査官(兼)教育課程調査官を務める。 2015年度より現大学へ。2022年度より現職。著書に『個別最適な学び・協働的な学びを実現する「学びの文脈」 学級・授業・学校づくりの実践プラン』(明治図書出版)、『読解✕記述 重層的な読みと合目的な書きの連動』(教育出版)がある。

↓樺山先生が編集委員を務める文部科学省教科調査官監修の連載も、好評公開中です。

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