すべての子供が一人ひとり違っていて、多様なのだと考えることが必要【次期学習指導要領「改訂への道」#45】

これまでの総則・評価特別部会の審議の中で、次期学習指導要領の構造や評価の在り方などについての方向が見えてきました。この背景にある理念や方向性が理解できれば、今からできることが多くあることに気付くはずです。そこで今回からは、同部会の委員の他にも教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループの部会長等も務める、秋田喜代美教授(学習院大学・東京大学名誉教授)に、同部会の審議状況の背景と、これからの教員に求められることを中心にお話を伺っていきます。
目次
「好き」を育み「得意」を伸ばす
現在の審議の基盤となる、教育課程企画特別部会(秋田教授は主査代理)の論点整理では、「①深い学びの実装」の説明の中に「『好き』を育み『得意』を伸ばす」ことが示されています(資料1参照)。これからの時代を担う先生方には、ここをしっかり考えていただくことが必要だと考えています。
資料1

学校の先生の中には、「苦手なことを指導してできるようにしないと、教師の仕事とは言えないのでは?」と言う方もいます。それも好きを育むことの1つではあります。しかし、私があえて「好き」という言葉を大事にするのは、「好き」がその子供の内面を表したものだからです。
人は誰かに何かを「好きになりなさい」と言われて好きになるものではありません。ですから、それぞれの子供の「好き」や「よさ」を園として学校として、みんなで育てていき、「得意」を伸ばすことになります。そうやって伸びていった「得意」を、子供たちがそれぞれの進路の中で生かし、生涯を幸せに生きるための準備をするのが公教育だという発想も、「『好き』を育み『得意』を伸ばす」という言葉に込められていると考えています。
その思いは、教師がそれぞれの子供のよさをどう見とるのか、それも「その教科やその活動の中での子供の学びをいかに見とるのか」ということを大事にした、形成的評価を生かしていくことにも表れています。特に今回の改訂では、指導と評価が一体的に議論されていることもとてもよいところです。それは評価が最終の着地点ではなく、子供の育ちを捉え、次の学びをデザインしていく指導と評価の一体化が明確に表れているところだと思います。
どう学びを見とり、それをどう記録し、形成的評価につなげるのか
形成的評価を大切にするためには、目の前の子供の学びを見とる教師力をどう育てるかが重要です。この点について、日本には授業研究の伝統がありますが、これまでは「どう指導するか」が中心でした。しかし、これからは「どう学びを見とり、それをどう記録し、形成的評価につなげ、指導につなぐのか」が重要になります。
この改訂の議論と同時に進められている、教員養成、採用、研修についての議論の中で、理論と実践の往還の前に子供の学びを中核に、学びのプロセスを基にして、理論と実践のデザインを研修したり、考えたりすることが大事だとしています。ここでも、「子供の学び」という言葉を入れているわけですが、そこがAIにはできない専門家としての教師の専門的判断と基準が求められるところです。
こうした子供の学びの見とりについて、幼小や小中の連携・接続を通し、互いが学び合うことが必要です。特に幼児教育は教科分けがないため、子供自らが主体的に環境に関わることを通して学ぶことが多いのですが、小学校以上になると、学んでほしい内容が増え、学び方も変わっていきます。そこをどうつなげていくのかとか、どのように教材や提示の仕方を工夫すれば、どの子供も参加したくなるような単元や授業にできるのか、その学びをどう見とるか考えていくことが大切です。
学習指導要領は大枠ですから、本文は簡潔にしつつ、資料類についてはデジタル化によってすぐ手に取れるようになる予定です。ですから教師を目指してなった人や、教師を目指そうとする人にとっては、自分の工夫を生かせる楽しいものになるでしょう。教職は本来、魅力に溢れた仕事なのですが、ブラックな仕事だというイメージが付いてしまっています。それが次の学習指導要領では、子供たちと共に授業を創っていく手応えが感じられるようになると思います。そのため、子供の人権を中核に置き、すべての子供の学ぶ権利が保障されるものになっていく方向で議論が進んでいるところです。
