授業の「振り返り」とは、なんのために行うの?~「楽しかったです」で終わらせない授業改善~
授業の終末に「振り返りを書きましょう」と声をかけると、ノートには「楽しかったです」「よく分かりました」が並びます。大切な活動のはずなのに、どこか薄いなあ。身に付いたかどうか、手応えがないなあ、と思うことはありませんか? また、残り時間が少なすぎて、思うように書く時間がとれないこともあります。振り返りは必要だと思いながら、このままでいいのだろうかと感じることが多いです。形骸化を避ける具体的な手立てを、丁寧に考えてみましょう。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

目次
「今日はこれね」に見えた実践知
これは、とある授業者の実践です。黒板の横に、振り返りの文型が十数種類、並べられていました。
「今日分かったことは__です」
「はじめは__と思っていたけれど、今は__と思います」
「友だちの考えを聞いて、__に気づきました」
「まだよく分からないことは__です」
「次に似た問題が出てきたら、__を使いたいです」
授業の終末になると、授業者はそのうちの1つを指さして、さらりと言いました。
「これを参考にして振り返りましょう」
児童は、迷わず書き始めました。
その様子を見て、これは単なる便利技ではないと思いました。まさに実践知です。
振り返りを大切にしている教員は多いでしょう。でも、実際には難しいものです。
授業の最後に時間が足りない。書かせても同じような感想になる。指導案には書いたけれど、実際には触れられなかった。そんな経験は、決して珍しくありません。だからこそ、その実践には意味がありました。
振り返りを「自由に書きなさい」と丸投げせず、毎時間同じ型にも閉じ込めず、その日の学習のねらいに応じて、振り返る視点を変える。
ここに、振り返りを形骸化させない大切なヒントがあるように思います。
毎回最後に振り返る必要はない
振り返りには、教育的な意味があります。自分は何が分かったのか。どこでつまずいたのか。どの考え方が役に立ったのか。次にどう学べばよいのか。
こうしたことを自覚することで、メタ認知(自分の学びを客観視する力)ができるようになり、自己調整学習へとつながります。つまり、振り返りは単なる感想ではありません。自分の学びを自分で見つめ直す活動です。
しかし、ここで注意が必要です。
振り返りが大事だからといって、毎時間、必ず最後に数分間書かせる必要はないのです。
授業の山場がまだ終わっていないのに、時間だから振り返りに入る。もっと考えさせたい場面で、ノートに感想を書かせる。練習量が足りないのに、終末の型だけを守る。
そうなると、振り返りは授業を深めるどころか、授業を薄くしてしまいます。形式的な振り返りを入れても意味はありません。また、振り返りは必ずしも授業の最後に置かなくてもよいです。
なぜなら、振り返りの最も大切な目的とは、児童が一旦立ち止まり、自分の学びを見つめ直すことだからです。
たとえば、授業中に、
「今、分かったことを隣の人に一言で伝えましょう」
「最初の考えと変わったところに線を引きましょう」
「まだ分からないところに、はてなマークをつけましょう」
とすることもできます。これも立派な振り返りです。むしろ、授業中の小さな振り返りの方が有効な場合もあります。その場で学びを修正できます。
形式的な振り返りを避けるためには、授業者の問い方も大切です。
たとえば、毎時間同じように、「今日の学習を振り返りましょう」とだけ言われたら、児童は何を書けばよいのでしょうか。
「楽しかったです」
「よく分かりました」
「友だちの考えがよかったです」
という記述になりがちです。もちろん、それらが悪いわけではありません。しかし、それだけでは学習の中身が見えてきません。
本当に知りたいのは、どの考えが分かったのか。どこで考えが変わったのか。何を根拠にそう思ったのか。次に何を使えそうなのか。どこがまだ不安なのか。ということです。
つまり、振り返りが浅くなるのは、児童の記述が浅いからではなく、振り返る視点が与えられていないことにも原因があります。
振り返りはICTを活用。目的に合わせてモデル化しよう
教育現場では、ときどき「型にはめる」という言葉が悪い意味で使われます。型だけをなぞる授業は本質に到達できない危険性を伴うからです。
これは、型そのものが悪いのではなく、使い方を間違っているのが理由だと言えます。なぜなら、型とは思考のモデル化でもあるからです。多くのモデルを知っていれば、それは自分の思考を展開するうえでの足場になります。文章を書くときも、いきなり「自由に書きなさい」と言われるより、
「はじめは__と思っていました」
「でも、__を聞いて考えが変わりました」
「今は__だと思います」
というモデルがある方が、ずっと書きやすくなります。特に小学生にとって、自分の学びを客観的に見つめることは簡単ではありません。だからこそ、わたしたち教員が視点を与える必要があります。
また、授業のときに私たち教員が本当に必要な児童の情報とは、分かったということより、分かっていないということです。
ICT端末を活用して振り返りを書くことで、全体の傾向が見えやすくなったり、よい記述や共通するつまずきを共有しやすくなりますから、狙いをもって問いかけを変えましょう。
・内容を確認したい日は、「今日分かったこと」を。
・つまずきを拾いたい日は、「まだ不安なこと」を。
・対話的な学びを意味づけたい日は、「友だちの考えから気づいたこと」を。
・次時につなげたい日は、「次に確かめたいこと」を。
入力されたものを見れば、多くの児童が同じところでつまずいているのか。数名だけが深い気づきをしているのか。学級全体として、次の時間に何を扱うべきか。それが、明確に見えてくると思います。
それぞれの狙いに対応するまとめの型は、次のように整理できます。
【内容を確かめたいとき】
「今日分かったことは__です」
「今日の大事な言葉は__です」
「今日のまとめを自分の言葉で言うと__です」
という型が使えます。これは、知識や技能の定着に向いています。
【考え方を見つめさせたいとき】
「今日使えた考え方は__です」
「前の学習とつながったことは__です」
「次に似た問題が出たら、__を使いたいです」
という型が有効です。これは、思考力を育てる振り返りになります。
【考えの変化を見つめさせたいとき】
「はじめは__と思っていたけれど、今は__と思います」
「__さんの考えを聞いて、__に気づきました」
「自分の考えが変わったところは__です」
という型が使えます。これは、対話的な学びと相性がよい振り返りです。
【つまずきを見つめさせたいとき】
「まだよく分からないことは__です」
「次に確かめたいことは__です」
「もう一度考えたいところは__です」
という型が有効です。これは、自己調整学習につながります。
振り返りをうまく活用することで、クラスの学びが可視化され、授業改善につながるのです。
