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学級ルールを“守らせる”から“つくる”へー協働的なルールづくりで子供の主体性を育てるー|特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術 #4

連載
特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術

北海道公立小学校教諭

山田洋一
特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術 バナー

一人一人の子供の困難さを丁寧に見取ることに定評のある山田洋一先生の連載です。特別支援教育の視点を取り入れて、どの子にとっても学びやすい学級づくりをしていきましょう。

執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一

はじめに

学級経営において「ルール」は欠かせない要素です。しかし、ルールがあるにもかかわらず、子供が守らなかったり、教師が何度注意しても改善しなかったりする場面は少なくありません。多くの教員が「どうしてこんなに言っているのに伝わらないのだろう」と悩んでいます。

特に近年は、特別支援教育の視点が学校全体に広がり、子供一人一人の特性や理解の仕方、感じ方の違いを前提にした学級づくりが求められています。注意されればすぐに行動を切り替えられる子もいれば、切り替えが苦手な子、見通しがもてない子、言葉だけでは理解が難しい子もいます。つまり、同じルールを同じように伝えても、子供たちの受け取り方は決して一様ではありません

そのため、教師が一方的にルールを決め、「きまりだから守りなさい」と強く働きかけるだけでは、特性の違いを踏まえた支援にはなりにくく、かえって子供を追い詰めたり、反発を生んだりすることがあります。特別支援教育の視点から見れば、ルールを守れない子は「守らない子」ではなく、「守り方が分からない子」「守れる条件が整っていない子」であることが多いのです。

だからこそ、ルールは教師が一方的に押しつけるものではなく、子供と一緒に「なぜ必要なのか」「どうすればできるのか」を考えながらつくっていくことが重要になります。子供自身が納得し、自分の言葉で意味づけられたルールは、特性の違いにかかわらず、より守りやすく、より自分ごととして扱えるようになります。

そこでこの記事では、子供とともにルールをつくり、運用し、見直す「協働的なルールづくり」の実践について、特別支援教育の視点も踏まえながら、具体的な教室場面を交えて紹介します。

「きまりだから守るの!」が生む行き詰まり

小学校の教室では、ルールが子供の納得を生まない典型的な場面が日常的に起こります。

●場面1:休み時間の終わり

チャイムが鳴っても戻らない子供たちに、教師が強い口調で言います。

早く席に着きなさい。

子供たちはしぶしぶ席に戻りますが、表情には不満が残り、次の日も同じことが繰り返されます。

●場面2:廊下を走る子への注意

廊下は走らないってきまりでしょ!

だって……急いでいるんだもん。

子供にとっては「急いでいる」という理由が優先され、ルールの意義が伝わっていません。ですから、注意された直後にまた走るという子もいます。

●場面3:給食準備のふざけ

教師が「早く準備しなさい!」と注意しても、子供は「ちょっとだけだよ」と思っているのか、手洗い場からゆっくり帰ってきたり、のんびりとおしゃべりを楽しんでいたりします。

教師の指導が強まるほど、子供は「怒られないために動く」ようになり、主体性は育ちません。そればかりか、「プルリバーサル(強く引っ張るほど、子供は逆方向に動く)」 という現象を引き起こしてしまいます。

これらの場面に共通するのは、ルールが子供の生活実感と結び付いていないことです。

「きまりだから」という理由は、子供にとって行動の動機にはなりません。むしろ、強制が強まるほど、子供は反発したり無関心になったりします。

この悪循環を断ち切るためには、ルールを「守らせる」のではなく、子供と一緒に「つくる」という発想が必要です。

協働的なルールづくりの運用の流れ

① きまりの目的を強調する

まずは「なぜ、そのルールが必要なのか」を子供と共有します。

ある4年生のクラスでは、給食準備でふざける子が多く、教師が注意しても改善しませんでした。

そこで教師は問いかけました。

給食準備がスムーズにいくと、どんなよいことがあるかな。

子供たちは、「早く食べられる」「こぼす人が減る」「みんなが気持ちいい」「清潔に準備できる」と意見を出し、目的が共有されたことで、ルールづくりの土台が整いました。

目的が共有されると、ルールは「縛るもの」ではなく、子供たち自身を「助けるもの」へと変わります

②子供が話合いをするときの留意点

話合いの場では、教師が「誘導しすぎない」ことが重要です。そのために、次のような点に留意することが大切です。

  • 子供の意見をすべて板書する
  • 少数意見も必ず扱う
  • 「その意見のよさは?」「その理由は?」と問い返す
  • 結論を急がず、理由を丁寧に聞く

あるクラスでは、「休み時間の終わりにどう教室に戻るか」を話し合いました。

多数派は「チャイムが鳴ったらすぐ戻る」でしたが、少数派が「あと30秒ほしい」と主張しました。

教師が「そのよさは?」と聞くと、

遊びをきちんと終わらせたい。

急に終わるとケンカになる。

という理由が出て、クラス全体が納得した形で「チャイム+30秒ルール」が採用されました。

こうして決まったルールは、学校のルールとやや齟齬があるものですが、子供たちは主体的に決められたというプロセスから、よく守ることができたようです。

③きまりを運用して不都合があったら再度検討する機会を用意する

ルールは一度決めたら終わりではありません。運用してみて不都合があれば、再検討する場を設けます

先ほどの「チャイム+30秒ルール」では、「30秒を過ぎても戻らない子がいる」という声が出ました。

そこで、子供たちは再度話し合い、「30秒の間に『遊びの片付けを始める』ことを約束にする」という改善案を自分たちで決めました

こうした話合いの際、ルールを守らない子を「悪い子」とせずに、「どうしたらできるのか」に焦点を合わせることが大切です。ルールを順守することが子供たちを分断させることに働いてはいけないためです。これがいわば特別支援教育の視点を取り入れた学級経営へとつながる点です。

こうした機会を捉えて、「教室には様々な人がいて、それで成り立っている」ことを実感できるようにしてあげることが重要です。

また、この「見直しの文化」があることで、子供は「ルールは状況に応じて変えていいもの」という民主的な感覚を身に付けていきます

④守れないときのルールまで決める

きまりを守れなかったときのルールを子供たちで話し合っている様子

協働的なルールづくりでは、守れなかったときの対応も子供と一緒に決めます。

あるクラスでは、忘れ物が多いことが課題でした。子供たちは話し合い、「忘れた理由を振り返る」「次にどうするかを自分で決めてノートに書く」「友達に迷惑がかかったら謝る」という「自分で責任を取る仕組み」をつくりました。

教師が罰を与えるのではなく、子供が自分で行動を調整する仕組みをつくることがポイントです。

子供が自分たちでルールを決める効能

協働的なルールづくりには、次のような教育的価値があります。

●自己決定感が育つ:自分で決めたルールは、自分の行動の理由になります。

●他者視点が育つ:話合いの中で「誰がどんな気持ちになるか」「誰がどんな状況になるか」を考える経験が増えます。

●合意形成の力が付く:多数決だけでなく、少数意見を尊重する態度が育ちます。

●自己調整力が高まる:守れなかったときの対応を自分で決めることで、立て直す力が育ちます。

●学級の一体感が高まる:自分たちでつくったルールは、共同体感覚を強めます。

まとめ

ルールは、教師が子供を管理するためのものではありません。子供が安心して学び、互いを尊重しながら生活するための「環境装置」です。

その装置を子供と一緒につくることは、学級経営の質を大きく高めます。協働的なルールづくりは、子供の主体性を育て、学級を「みんなでつくる場」へと変えていきます。

明日の教室で、まずは1つのルールから、子供と一緒に見直してみてはいかがでしょうか


山田洋一(やまだ・よういち)●北海道公立小学校教諭。1969年北海道札幌市生まれ。教育サークル「人間」共同代表。日本学級経営学会理事。著書は『10代のための人間関係の「ピンチ!」自分で解決マニュアル』(小学館)、『マンガでわかる教育技術 ほめ上手・叱り上手になるための対話術』『クラスを支える愛のある言葉かけ』『「むずかしい学級」対応マップ』(明治図書出版)ほか多数。

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イラスト/イラストAC

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