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多様な学び方を認める授業デザイン:学びのユニバーサルデザイン(UDL)の視点|特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術 #5

連載
特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術

北海道公立小学校教諭

山田洋一
特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術 バナー

一人一人の子供の困難さを丁寧に見取ることに定評のある山田洋一先生の連載です。学級経営と授業に特別支援教育の視点を取り入れ、どの子にとっても学びやすい学級をつくっていきましょう。

執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一

はじめに

授業中、子どもたちの姿を見ていると、「同じ説明を聞いているはずなのに、理解のスピードも、つまずくポイントも、集中の続き方もまったく違う」と感じることがあります。板書を写すのが得意な子もいれば、話を聞きながら考えるのが得意な子、手を動かしながらでないと理解が深まらない子もいます。これは特別なことではなく、学び方の多様性は、どの学級にも必ず存在する前提条件です。

特別支援教育の視点では、この「多様性」を問題ではなく資源として捉えます。
そして、その多様性を前提に授業を設計する考え方がUDL(Universal Design for Learning:学びのユニバーサルデザイン)です。UDLは「特別な子のための工夫」ではなく、全員が学びやすくなる学習環境デザインをめざすアプローチです。

「選べる学び方」が子どもの主体性を引き出す

UDLの目的は学習者エージェンシー(変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力)を引き上げて、いわゆる主体的な学びができるように促すことです。そのため、学び方や表現方法に「選択肢」をあらかじめ用意することが大切なことの一つになります。 次のような場面を想像してみてください。

例えば、算数の文章題。教師が説明し、子どもたちはノートに式を書いて解くというスタイルを教師が選択したとしましょう。この一つの方法だけでは、「説明を聞くのが苦手な子」「文字情報が多いと混乱する子」「手を動かしながら考えたい子」にとっては、学びの入り口が狭くなってしまいます。従来の授業スタイルでは、学びからスポイルされてしまう子どもたちが少なくなかったと考えられます。

また、こうした状況において、従来は学習へのバリアが、学習者の側にあると考えられてきました。ですから、教師は学習者の側に改善や努力を求めてきました。

しかし、UDLの考え方では、学習者が学びにアクセスできないバリアは、主に教師が用意するカリキュラム(ゴール、教材、方法、評価)の側にあると考えます。つまり、学習者が学べないのはカリキュラムがバリアとなっているのだから、そのバリアをまずは教師が取り除けば、学習者はよりよく学べるはずだと考えるわけです。

そこで、上記のような算数の授業場面では、次のような「選べる学び方」(オプション)を用意します。

・図やブロックを使って問題の状況を再現する
・タブレットで問題文を読み上げる
・ペアで問題の意味を口頭で確認してから解く
・教師の説明動画を見返してから取り組む

どれを選んでもよいと伝えると、子どもたちは自分に合った方法を選び始めます。すると、これまで「分からない」と学習できなかった子が、図を使うことで理解できたり、読み上げ機能で文章題に取り組めるようになったりします。

こうした選択肢(オプション)は、子どもの「学習にアクセスできる方法」を増やす支援です。そして、選べることそのものが、子どもの自己決定感を高め、学びへの参加意欲を引き出します。

「選べる表現方法」で学びの成果を多様に示せる

UDLでは、学びの成果を示す方法にも選択肢を用意します。 例えば、社会科の調べ学習で「北海道の特産物についてまとめよう」という課題があったとします。

従来は「模造紙にまとめる」「ノートに書く」といった方法が教師から指示されることが多かったわけですが、UDLの考え方では学習者が自分らしい表現を選択することが可能です。

・タブレットでスライドを作る
・写真を使ったミニポスターを作る
・友達に向けて1分間の口頭プレゼンをする
・調べたことを短い動画にまとめる
・図表中心の資料を作る

文字を書くことが苦手な子でも、写真や図を使えば伝えられます。話すことが得意な子は、口頭で説明することで力を発揮できます。逆に、文章を書くことが好きな子は、より深い考察を書き込むことができます。

表現方法の多様化は、学習者のアイデンティティ(その子らしい学び)を生かす機会を広げるのです。

通常学級でできるUDLの実践例

UDLというと「ICTがないと難しいのでは」と思われがちですが、実はアナログでも十分に実践できます。ここでは、通常学級で取り入れやすい例を紹介します。

①板書の工夫

・本時の学習のゴールを分かりやすく示す
・文章で説明する部分と、図やアイコンで示す部分を併記する
・活動手順を番号で示す

視覚的な情報が増えることで、見通しがもちやすくなります。

②選べる活動スタイル

それぞれが自分の選んだ方法で学習する子供たち

・1人で取り組む/教師と取り組む/ペアで相談する/グループで進める
・立って作業してもよいコーナーを設ける
・衝立などを活用する

活動の選択肢があると、集中しやすい環境を自分で選べます。

③選べる教材

・図が多いプリント
・文章中心のプリント
・タブレットの読み上げ機能を使う
・その子の好きなものを教材の中に埋め込む

教材の入口を複数用意することで、理解のしやすさや興味・関心の度合いが変わります。

【ワークシート例】

小5 国語科 「資料を用いた文章の効果を考え、それをいかして書こう」(光村図書)の単元で用意したワークシート。①~③について、子ども自身が選択肢の中から選ぶ。③は原稿用紙に書く。

ワークシート例①
ワークシート例①(2ページ目)
ワークシート例②
ワークシート例③

④振り返りの多様化

・文章で書く
・3つのアイコンから選ぶ
・口頭で教師に伝える
・キーボード入力をする

上記の選択肢から子ども自身が選ぶことで、振り返りのハードルが下がり、学びの定着が促されます。

UDLは「特別な支援」ではなく、学級全体の学びを底上げする

UDLの実践を続けていると、次のような変化が見られます。

・つまずきがちな子が授業に参加しやすくなる
・得意な子が自分の力を生かして学びを深める
・子ども同士の助け合いが自然に生まれる
・教師の「個別対応の負担」が減る

つまり、UDLは「特別な子のための工夫」ではなく、学級全体の学びの質を高める授業デザインです。

分かりやすい学習のGoalを示す

UDLの考え方で授業を設計する際には、学習者にとって明確で理解しやすい「学習のGoal(到達目標)」を示すことが不可欠です。なぜなら、Goalがはっきりしていなければ、子どもは自分に合った学び方や表現方法を選ぶことができないからです。

例えば、

・「3けた+3けたの筆算の仕方を考え、説明することができる」
・「『川とノリオ』の登場人物の人物像について、書かれていることをもとに説明できる」

といったように、最終的に何ができるようになればよいのかを具体的に示すGoalが必要です。

UDLでは、学習者が自分に合ったオプション(学び方・教材・表現方法)を選択しながら学びを進めます。しかし、目指すべき到達点が曖昧なままでは、どのオプションを選ぶべきか判断できません。

「何を使って学べばよいのか」「どのように表現すればGoalに近づけるのか」を選ぶためには、まずGoalが明確であることが前提となります。つまり、分かりやすいGoalの提示は、子どもが自分に合った学び方を主体的に選択し、学習に参加するための出発点なのです。

特別支援教育の視点を授業に取り入れることは、決して特別なことではありません。むしろ、子どもたちの多様性を前提に授業を組み立てることは、これからの通常学級において不可欠な視点です。

おわりに

UDLは、教師がすべてを完璧に準備する必要はありません。まずは「子どものバリアを見定め」「授業の始めに明確なGoalを示し」「選択肢を一つ増やす」ことから始めるだけで、子どもたちの学びの姿は大きく変わります。

次回は、学級のトラブルを減らすための「環境づくり」について、動線・座席・役割の工夫を中心に紹介します。

【出典】
・川俣智路(2020)「学習支援から学習者の発達支援へ」『指導と評価2020年2月号 Vol.66-2 No.782』(図書文化)

・CAST(2024)「学びのユニバーサルデザイン(UDL)ガイドライン version 3.0 グラフィックオーガナイザー(日本語版)

・CAST(2024)「UDLGuideline3.0 日本語訳」 [2025年10月18日更新]

・髙原隼希(2025)『学びのGOAL UDLで学びを舵取りできる子どもを育てる』 (明治図書出版)

・バーンズ亀山静子「UDLとは?」『授業のユニバーサルデザイン vol.12』(東洋館出版社)


山田洋一(やまだ・よういち)●北海道公立小学校教諭。1969年北海道札幌市生まれ。教育サークル「人間」共同代表。日本学級経営学会理事。著書は『10代のための人間関係の「ピンチ!」自分で解決マニュアル』(小学館)、『マンガでわかる教育技術 ほめ上手・叱り上手になるための対話術』『クラスを支える愛のある言葉かけ』『「むずかしい学級」対応マップ』(明治図書出版)ほか多数。

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イラスト/高橋正輝

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