子供の「内発的動機付け」を引き出す5つの言葉がけ【先行研究から学ぶ 学級経営の極意Ⅳ⑥】

子供が多様な他者と関わりながら、必要な資質・能力を身に付けるために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、先行研究を例に挙げながら、子供のよりよい成長を促す学級経営の方法について解説します。第6回は、「内発的動機付け」について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
「内発的動機付け」とは、個人の行動の要因となる内面から湧き上がる動機付けのことです。外部からの報酬や強制ではなく、個人の内面から生じる興味や好奇心、意欲や達成感等の欲求などを原動力とします。
「内発的動機付け」は、子供自身のよりよい成長を促すために、大切な動機付けとなります。そこで、「内発的動機付け」を引き出すに当たって、次の3つのキーワード「内発的動機付けに関する研究」「内発的動機付けを引き出す指導のポイント」「指導上の配慮点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 「内発的動機付け」に関する先行研究
「内発的動機付け」は、社会心理学者のエドワード・L・デシ(Edward L. Deci)とリチャード・M・ライアン(Richard M. Ryan)によって提唱された「自己決定理論」によって深く研究されています。
「自己決定理論」では、次の3つの基本的な心理的欲求が満たされることで、「内発的動機付け」が高まるとしています。
①「自律性」:自分で行動を選択して決定し、「主体的な行動」ができているという感覚。
②「有能感」:自分の能力を発揮しながら課題を達成し、「成長を実感」しているという感覚。
③「関係性」:他者と良好な関係を築き、集団の一員として「信頼し合えている」という感覚。
「内発的動機付け」に関する実証研究を踏まえます
心理学者のハリー・ハーロウ(Harry Harrow)がサルに行ったパズル(知恵の輪)の実験は、現代の「内発的動機付け」理論の先駆けとなった研究です。
ハーロウは、パズルを解いたサルにレーズンを与える実験(食べ物の報酬)を行いました。その結果、報酬を与えるとサルのパフォーマンスは低下し、ミスの数が増え、パズルを解く回数も減少したとしています。
これは、外部からの報酬(外発的動機付け)が与えられたことにより、サルが元来もっていたパズルを解く楽しさや興味(内発的動機付け)を阻害してしまうということを示唆しています。この現象は、後にエドワード・L・デシらによって「アンダーマイニング効果」として体系化されました。
このような先行研究をもとに、子供たちの「内発的動機付け」を引き出すためには、どのような考え方に基づき、子供たちの実態を踏まえた指導の手立てを講じていけばよいかを検討していきましょう。
CHECK② 「内発的動機付け」を引き出す指導のポイント
「外発的動機付け」は、報酬や評価、罰則の回避など、外部からの要因や働きかけによる動機付けです。比較的早く特定の行動を促すことはできますが、外部からの刺激がなくなったり、慣れてきたりすると意欲が低下しやすい面があります。
「内発的動機付け」は、行動そのものが目的であることから、外部からの刺激に依存しないため、意欲が持続しやすい動機付けです。
子供たちの学びの意欲や行動について考えてみると、行動を目的とする「内発的動機付け」によって、子供は自ら欲求を満たすことになることから、進んで行動したり、学んだりする姿が見られるようになります。子供に「内発的動機付け」ができるような手立てを講じていきましょう。
「内発的動機付け」を高める具体的な手立てを講じます
子供の「内発的動機付け」を高めるためには、次のような指導の視点をもって具体的な手立てを講じていくことが求められます。
(1)子供自身が選択する意思決定場面を設定できるようにする(自律性)
・年度当初等に行う「個人目標」の設定については、自分の現状を見つめ、具体的に達成したい行動目標を選択し、意思決定できるようにする。
・総合的な学習の時間等での課題設定場面では、多様な学習課題の中から、自ら取り組んでみたい課題を選択できるようにする。
・そのほか、学校生活の中での学習や生活場面で、教師が指示をする場面を少なくし、子供自身が学習や行動を自ら選択し、意思決定できるようにする。
(2)スモールステップでの成功体験を体得できるようにする(有能感)
・年度当初等に行う「個人目標」を設定する際には、「達成可能な目標設定」ができるように、教師が個に応じた適切な指導をする。
・スモールステップとして設定した「行動目標」が達成できたら、教師が機会をとらえて称賛し、「達成感を味わう」ことができるようにする。
→結果としての成功だけでは、子供は自分の能力の限界を感じることもあるので、過程についても着目することで、「努力が報われた」と感じるような評価をする。
(3)他者に貢献できる望ましい人間関係を構築できるようにする(関係性)
・学級経営上、1人の日直や1人1役の係活動ではなく、可能な限り「2人以上で日直」を担当し、「3人以上の集団で係活動等」が展開できるように、他と関わるような場面を設定する。
・学級会の話合い等で、自分の意見だけを通すのではなく、「自分もよく、みんなもよい」という合意形成ができるような他者を意識した活動を展開する。
・同学年での交流だけでなく、異年齢集団との交流場面を意図的に設定し、つながりや他者のために貢献したいという心情を高める。

