リーダシップを発揮するための「PM理論」活用法【先行研究から学ぶ 学級経営の極意Ⅳ⑧】

子供が多様な他者と関わりながら、必要な資質・能力を身に付けるために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、先行研究を例に挙げながら、子供のよりよい成長を促す学級経営の方法について解説します。第8回は、リーダーシップを発揮するための「PM理論」について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
「PM理論」は、1960年代に社会心理学者の三隅二不二(みすみ・じゅうじ)氏が提唱した、集団の機能の観点からリーダーシップの類型化を示したもので、リーダーに必要な能力を「目標達成」と「集団維持」という2つの軸で捉えた行動理論です。シンプルであり、汎用性が高いことから、様々な場面で用いられています。
学級経営にとっても大切な視点であり、類型として表した考え方を活用することができます。そこで、「PM理論」の考え方を活用するに当たって、次の3つのキーワード「『PM理論』の概要」「『PM理論』活用上のポイント」「指導上の配慮点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 「PM理論」の概要
「PM理論」は、リーダーがとるべき行動に着目した行動理論の1つです。リーダーに必要な要素を目標達成機能としてのP機能(Performance)と集団維持機能としてのM機能(Maintenance)の2つに分類しています。
ここでは、リーダーシップの機能を学級担任の指導の視点として考えていきます。
「P機能」は、学級内において学習や生活面での成果をあげるために必要な教師のリーダーシップと捉えます。教師がいかに目標を明確にし、具体的な目標設定に向けた指導計画を立案して、子供たちに指導していくかが問われます。
「M機能」は、教師と子供との信頼関係を築き、子供相互のよりよい人間関係を構築して学級内の人間関係に調和をもたらすリーダーシップと捉えます。教師が子供の話を傾聴し、称賛することや子供同士のトラブルの解決に関わることなどの指導を展開することが求められます。
「P機能」と「M機能」の2つのバランスを取りながら指導していくことを心がけていきましょう。
「PM理論」の4つの分類を踏まえて実践します
PM理論には、「P機能」と「M機能」の強弱で2つのパターンがあり、これらを組み合わせて次のように4つのパターンを取り上げています。

①pm(スモールpm) 型は、P機能・M機能の両方が低く、リーダーとして不向きなタイプ。目標達成機能も集団維持機能も低いため、目標意識に乏しく計画的な指導ができず、集団をまとめる力も弱いという分類です。両方の視点について、明確な目標をもつことが求められます。
②Pm(ラージPスモールm) 型は、P機能が高く、M機能が低いリーダーシップのタイプ。目標達成能力は高い反面、集団維持機能が低いことから、集団内の人間関係に課題があり、独善的なリーダーになりやすいタイプです。短期的な指導では成果を出すこともありますが、子供同士の人間関係に十分配慮していくことが求められます。
③pM(スモールpラージM)型は、P機能が低く、M機能が高いリーダーシップのタイプ。集団をまとめる能力は高いものの、目標達成に甘くなりがちで、成果につながりにくいリーダーのタイプです。仲よしグループになったり、友達関係としてのリーダーになったりしやすく、学級全体の目標に向けた行動が遅くなり、意欲が高まりにくいため、目標への意識化が求められます。
④PM(ラージPM)型は、P機能とM機能の両方に優れ、最も理想的なリーダーシップのタイプ。目標達成能力が高く、メンバーの管理能力にも優れ、よりよい人間関係を構築できることから成果を出すことのできるリーダーのタイプです。
「PM型」では、教師として目標を明確にし、人間関係に配慮した学級経営を展開することで、子供たちの学習面、生活面ともに向上させる指導ができます。「PM型」のリーダーシップが発揮できるような学級経営を展開していきましょう。
CHECK② 「PM理論」活用上のポイント
PM理論の4つの類型では、「PM型」の「目標達成機能」と「集団維持機能」の両面が充実したとき、適切なリーダーシップを発揮できることが分かります。そこで、P機能とM機能のそれぞれを強化するために、教師としてどのような視点をもって具体的な指導に当たることが望まれるのかについて検討することが求められます。
次に、その視点と具体的な指導の手立てについて取り上げます。「P機能」と「M機能」を強化しつつ、両者のバランスのよい指導に心がけましょう。
P機能とM機能の強化を図ります
1.P機能強化のポイント
①適切な目標を設定する
・学級全体で目指す目標を正確に把握する。
・個々の子供の役割と具体的なめあてを明確にする。
・目標の達成に向けた具体的なステップを明確に指導する。
②個々の行動を把握する
・個々の行動目標を明確に設定できるようにする。
・適切な実践期間の取組を設定し、行動目標の進捗状況を確認する。
・達成状況を踏まえ、必要に応じて目標を軌道修正する。
・成果に対する適切なフィードバックをする。
目標を明確に提示し、適時に進捗状況を把握して、子供たちが目標達成のための具体的な実践計画を立てることができるように適切な指導助言を行います。
2.M機能強化のポイント
①教師と子供の信頼関係を築く
・定期的に一人一人の子供の心情に寄り添うような「面談」をする。
・個々の子供の立てた「行動目標を再確認」する。
・日常的に個々の子供の話を「傾聴」して声かけをする。
②子供同士のよりよい関係を築く
・学級会など全員参加の「話合いの場」を確保する。
・子供同士が多様な考えを「共有できるような場」を設定する。
・係活動などを通して学級内で情報を共有して「協働」できるようにする。
子供たちの人間関係上のトラブルなどを把握できるようにし、解消に向けて適切な指導を行うとともに、個々の子供の個性を踏まえ、適切な役割が遂行できるような取組にします。

