学級全体で支え合う文化を育てる:ピアサポートを成功させる3つのポイント|特別支援教育の視点を取り入れた学級経営術 #8

一人一人の子供の困難さを丁寧に見取ることに定評のある山田洋一先生の連載です。特別支援教育の視点を取り入れて、どの子にとっても学びやすい学級づくりをしていきましょう。
執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一
目次
はじめに
教室を見ていると、友達が困っていることに気付き、「どうしたの?」「一緒にやろうか」と自然に声をかける子がいます。そんな姿を見ると、教師としてもうれしくなります。
一方で、学習に困っている子に、いつも同じ子が教えている。移動教室になると、ある子が決まって友達の持ち物を確認している。教師もついその「同じ子」に対して、「○○さん、手伝ってあげて」と頼んでしまう…。そんなことはないでしょうか。
また、授業に入ると、教師が「ミニ先生」を特定の子に命じて「教える役」を担わせる。そんなことはありませんか。
一見すると、支え合いのあるよい学級のようです。しかし、少し立ち止まって考えてみたいのです。その「助ける役」は、いつも同じ子になっていないでしょうか。反対に、「助けられる役」も固定されていないでしょうか。
ピアサポート(子供同士が対等な立場で支え合うこと)で大切なのは、「できる子が、できない子を助ける」という構図をつくることではありません。誰にでも得意なことと苦手なことがあり、その時々で助ける側にも、助けられる側にもなるという感覚です。
今回は、学級全体にそんな「おたがいさま」の文化を育てるための3つのポイントを紹介します。
ポイント1:「助けてあげて」ではなく、助け方のスキルを教える
子供は、友達を助けたいと思っていても、助け方を知っているとは限りません。
例えば、算数の問題で止まっている友達に答えをそのまま教える。忘れ物をした友達に、自分の道具を何も言わず渡す。親切な行動ですが、それが相手の「自分でやってみる機会」を奪うこともあります。
そこで、「助けること」そのものを学習の対象にします。
・まず「困っている?」と尋ねる。
・「手伝おうか」と本人の意思を確かめる。
・すぐに答えを言わず、ヒントを出す。
・一緒にやるか、見守るかを相手に選んでもらう。
・必要なさそうなら、そっと離れる。

ある3年生の学級で、漢字を書くのに時間のかかる子に、隣の子が次々と答えを教えていました。そこで教師が、「助けるって、答えを教えることだけかな」と問いかけました。
子供たちは、
ヒントを言う。
どこまで分かったか聞く。
待つのも助けることかもしれない。
などと話し始めました。
「親切にしなさい」と求めるだけではありません。支援にはスキルがあり、そのスキルは教えることができます。
「何をしてあげるか」ではなく、「相手が自分でできるために、私は何ができるか」。この問いを共有することが、ピアサポートの第一歩です。
ポイント2:「助ける子」「助けられる子」を固定しない
特別支援教育の視点を取り入れると、支援の必要な子が見えやすくなります。しかし、その子を「いつも助けてもらう子」と位置付けてしまう危険もあります。
教師が毎日のように、
○○さん、△△さんのことお願いね。
と言っていたらどうでしょう。
頼まれた子は責任感をもって手伝うでしょう。しかし、その関係が続くと、「世話をする子」と「世話をされる子」という役割が学級の中でできあがってしまいます。クラス替えがあってすぐに、「もう〇〇さんのお世話は嫌です」と子供に言われた経験が私にはあります。
だからこそ、役割を流動的にする工夫が必要です。
授業では「教える人」を固定しない。困ったときの相談相手も1人に限定せず、「友達に聞く」「教師に聞く」「掲示を見る」「タブレットで確認する」など、複数の選択肢を用意します。
そして、教師がその子の「できるところ」を意識して見つけることも大切です。
・文字を書くことに時間がかかる子が、タブレットの操作では友達を助ける。
・発表は苦手でも、図工では道具の扱いを教えられる。
・忘れ物が多い子が、友達の気持ちの変化には一番早く気付く。
人は、「支援する人」と「支援される人」に分けられるほど単純ではありません。困っている場面だけを見ていると、その子の力は見えなくなります。
ポイント3:「ありがとう」だけではなく、「おたがいさま」を育てる
学級で支え合いを育てようとすると、「助けてもらったら、ありがとうと言いましょう」と指導することがあります。もちろん感謝を伝えることは大切です。
しかし、それだけでは少し足りません。
「助けてもらった人は感謝する」「助けた人はほめられる」という関係だけが強くなると、助ける側と助けられる側に上下のような感覚が生まれることもあるからです。
そこで育てたいのが、「おたがいさま」という感覚です。
・今日、体育では私が教えた。でも、昨日の算数では教えてもらった。
・今日は友達が忘れ物をした。でも、明日は自分が忘れるかもしれない。

こうした経験が積み重なると、「助けること」は特別な善行ではなくなります。誰かが困っていたら、できる人が少し手を貸す。自分が困ったら、「手伝って」と言う。それが普通の学級になります。
そのためには、「助けて」と言う力も育てる必要があります。
そこで、教師自身が、
先生、そこが分からないから教えて。
今日はみんなに助けてもらったよ。
と言えることも大切です。
助けを求めることは、弱さではありません。自分に必要な支援が分かり、それを他者に伝えられることも、1つの力です。
ピアサポートとは、優しい子を育てる取組というより、「困ったときには助けを求めてもいいし、できるときには誰かを支えればいい」という文化をつくることなのです。その前提となっているのは、自らを知り、他者にも興味をもって知ろうとする姿勢です。
おわりに
特別支援教育というと、教師が「支援の必要な子」にどう対応するか、という発想になりがちです。
もちろん、教師による個別の支援は必要です。だからといって、特定の子供に支援役を背負わせるのは違います。
目指したいのは、「誰かが誰かを支える学級」ではなく、「必要なときに、みんなが少しずつ支えたり、支えられたりする学級」です。
そのために教師がすることは、「仲良くしなさい」「助け合いなさい」と言うことではありません。
・助け方を具体的に教える。
・助ける役割を固定しない。
・助けを求めることも価値ある行動として認める。
そうした小さな仕掛けを日常の中に埋め込んでいくことです。
特別支援教育の視点は、特定の子供だけを支えるためのものではありません。

山田洋一(やまだ・よういち)●北海道公立小学校教諭。1969年北海道札幌市生まれ。教育サークル「人間」共同代表。日本学級経営学会理事。著書は『10代のための人間関係の「ピンチ!」自分で解決マニュアル』(小学館)、『マンガでわかる教育技術 ほめ上手・叱り上手になるための対話術』『クラスを支える愛のある言葉かけ』『「むずかしい学級」対応マップ』(明治図書出版)ほか多数。
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イラスト/イラストAC
