排他的、閉鎖的な学級風土を変えるには【事例から学ぶ 学級経営の極意Ⅴ④】

本連載では、学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、今まで出合った子供の事例をもとに、学級経営を行う上で大切なことを解説します。第4回は、6年生の男児のエピソードから、誰もが正しいと思ったことを堂々と発言できる学級経営の在り方について考えていきます。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
目次
仲間外れにされた時助けてくれた友達Sさん
「今、机の下で手を拭いた人がいます」
なかなかクラスに馴染めず、身の回りの整理整頓が得意でないSさんに対して、クラスの仲間が排他的になっていました。その解決策として子供たちが話し合って「全員でSさんと握手をする」ことになり、その握手の後にMさんが発したのが冒頭の言葉です。普段おとなしいMさんが、勇気をもって厳しいことを言った、この言葉の背景にあるMさんの心情から、求められる学級経営の在り方を再確認していきたいと思います。
Mさんは、普段とてもおとなしい様子で学校生活を送っていました、Mさんは自分のなすべき仕事はしっかりとやり遂げる責任感の強い子供でした。決して口数は多くありませんが、何事にも真摯に取り組むMさんのことを、クラスの友達も信頼していました。特に、困っている仲間に対するさりげない声かけや、優しくサポートする姿など、学級担任としても心を打たれる場面を多く見ました。
前学年の担任に聞いたところ、Mさんは4年生の2学期に、ちょっとした行き違いから仲のよい友達と仲違いをしたとのことでした。そして、グループからも仲間外れにされるという経験をしたということでした。その時、一人ぼっちになってしまったMさんに優しく声をかけてくれたのがSさんでした。実は、Sさんは、家庭の事情もあり、あまり身だしなみを気にするタイプの子供ではありませんでした。身の回りの整理整頓も苦手で、Sさんの周囲には物が散乱していることが多く、特に女子からは避けられているという状況でした。ただ、笑顔で友達に接することができ、男子とは仲よく接していました。Mさんにとって、一人ぼっちになった時に、声をかけて仲よくしていたSさんは、かけがえのない存在になっていたと思われます。

イラスト/池和子(イラストメーカーズ)
