協働的な活動を通して育む「多様性への理解」【事例から学ぶ 学級経営の極意Ⅴ①】

本連載では、学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、今まで出合った子供の事例をもとに、学級経営を行う上で大切なことを解説します。第1回は、4年生の男児のエピソードから協働的な活動の意味と多様性の理解について考えていきます。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
目次
自分を表現するKさんを支えた仲間の存在
「Kさんは今、一生懸命、こう言いました」
これは、4年生の男児Kさんが児童集会の終わりの言葉を発表した後、6年生の代表委員が繰り返した言葉です。Kさんは、4年生の代表委員でした。彼は、言語に障害があり、彼の言葉を聞き取ることは困難な状況にありました。そんなKさんが代表委員会で児童集会の「終わりの言葉」の担当になった時、6年生が「ぼくがサポートするので大丈夫です」と言って、話したのが冒頭の言葉です。この言葉に込められたエピソードをもとに、求められる学級経営の在り方を再確認していきたいと思います。
4年生のKさんは、言語に障害があり、なかなか彼の言葉を理解することは難しい状況でした。しかし、クラスの仲間は毎日彼に接しているため、少しずつ彼の言葉の特徴を理解していったようです。
Kさんは、笑顔が絶えず、何事にも一生懸命に取り組む子供でした。そのKさんが、後期の代表委員を決める時、初めて立候補したのです。クラスの友達は、Kさんの日々の生活を見ていたので誰もが賛成しましたが、言葉のことについては不安を感じていた様子でした。すると、もう一人の代表委員になった女の子が言いました。
「大丈夫です。私がKさんの言いたいことを聞いて話します」と。
クラスの子供たちから大きな拍手が送られ、Kさんは後期の代表委員になりました。
Kさんが話している時、クラスの仲間全員が耳をそばだてて静粛に聞き入っている様子が見られました。それは、Kさんが何事にも真剣に取り組み、うまく表現できないことに対しても臆せずに努力していたからだと思います。Kさんの存在が、学級の子供たちの中に一人一人を大切にしていこうとする雰囲気を醸成していました。Kさんも、支えてくれる仲間の存在があって、後期の代表委員に立候補しようと決意したのだと思います。私は学級担任として、「子供同士のよりよい人間関係」は、一人一人に内在する力を引き出し、成長を促すものだということを感じていました。
イラスト/池和子(イラストメーカーズ)
