「教師の影響力」を高める指導の手立てとは?【先行研究から学ぶ 学級経営の極意Ⅳ⑭】

子供が多様な他者と関わりながら、必要な資質・能力を身に付けるために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、先行研究を例に挙げながら、子供のよりよい成長を促す学級経営の方法について解説します。第14回は、「教師の影響力」を踏まえた学級経営について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
「教師の影響力」は、子供の学習意欲や人格形成に関わる重要な視点です。教師の教育に関する熱意や専門的な知識、人間としての魅力に基づく適切な言動は、子供たちのよりよい成長を促すための基盤です。一方で、教師は子供たちの将来にわたる生き方のモデルとなる存在であり、その言動は子供の情緒に深く関与することから、子供理解に基づく誠実な対応が求められます。
そこで、教師が子供への関わりを通して、適切な「教師の影響力」を発揮できるように、次の3つのキーワード「『教師の影響力』の研究」「適切な『教師の影響力』を発揮するポイント」「指導上の配慮点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 「教師の影響力」の研究
「教師の影響力」には、様々な研究があります。ここでは、有名な「ピグマリオン効果」と「学習の可視化」についての研究から考えてみます。
「ピグマリオン効果」とは、1960年代にアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタール(Robert Rosenthal)らが行った実験で、「教師が期待をかけると子供の成績が向上する傾向が見られる」という作用です。別名を「教師期待効果」と呼ばれます。
この研究には賛否がありますが、教師が指導する際の姿勢として取り入れていきたい視点として考えられます。逆に、教師が期待しないことによって子供の成績が低下する傾向が見られるとする「ゴーレム効果」という作用も考えられています。
教師が、「この子は伸びる」と考えて子供に接することで、無意識のうちに「温かな励ましや丁寧な指導」が増えます。このことが子供のよりよい成長を促す指導につながります。子供の成長を信じて、学級経営の基本的な手立てを講じていきましょう。
「学習の可視化」を踏まえて実践します
ジョン・ハッティ(John Hattie)の「効果的な教え方」の研究は、膨大なメタ分析に基づく「可視化された学習」が中核になっています。ハッティは、教育における「効果量」を数値化して、何が実際に学習に影響を与えるかを分析しました。その研究で、特に効果が高いとされている要素には、次のようなものがあります。
- 可視化された学習の共有 教師は、子供に教えているという考え方ではなく、子供が何を学んでいるかという視点をもち、「学習目標と目標達成の基準」を明確にして、子供と学びを共有する。
- 子供へのフィードックの活用 子供へのフィードバックでは、「目標(どこに向かって)」「現状(どのようにすすんで)」「改善(次に何を)」の視点をもって行う。
- 教師の指導上の役割の認識 教師は、指導するという視点よりも「学習者である子供」に焦点を当て、自らの授業の影響を認識して、必要に応じて指導法を変える。
- 協働的、能動的な学習の展開
子供自身が課題を設定して学習を展開する意欲を育み、他と共に「協働する学習」を展開する。
また、この研究で高い効果(効果量)があると示されている主な要素があります。
まず、教師自身が自らの指導で子供を伸ばすことができるという「自己効力感」をもつことです。指導の過程では、子供の理解の状況を把握して、指導を修正するという「形成的な評価」が求められます。さらに、子供同士で「協働的な学習」を展開し、自らの「学びを振り返る」とともに、教師が子供に学びを「フィードバック」することが重要です。
このような視点を踏まえて教育指導を再確認していきましょう。
CHECK② 適切な「教師の影響力」を発揮するポイント
ここで取り上げた先行研究などを踏まえると、教師が「温かな子供理解」を基盤として、子供を信頼し、自らの指導による子供への影響を客観的に把握することが求められます。その分析に基づいて指導を調整し、適切な指導を構想していくことの重要性が問われます。次のような具体的な場面をもとに指導を構想していきましょう。
具体的な「指導の手立て」を構想します
「教師の影響力」をよりよく高めるためには、次のような「指導の手立て」を取り上げ、具体的な指導形態を構想することが求められます。
(1)授業での「指導構想」
・各教科等の授業で、「学習の目的や学習の方法、目指す達成基準」を子供が理解しやすいように明確に提示する(学習の目的の明確化)。
・教師からの単なる指導内容の伝達ではなく、子供同士が多様な考えを出し合い、「協働して学習する場面」を意図的、計画的に取り入れる(学習方法の協働性)。
・子供自身が学習についての、目的や進捗状況、次の学習の課題等を理解し、「フィードバック」できるような場面を設定する(フィードバックの活用)。
(2)授業での「指導形態」
・教師が知識や技能を個別指導する過程で、「明確な目標設定と振り返り」を行う場合に、高い効果を発揮する。
・単元等の最後に行う「総括的評価」だけでなく、授業の指導過程で子供の理解を把握し、その後の指導に反映させる「形成的評価」を重視することが効果的。

