小5理科「人のたんじょう」指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/福岡県公立小学校指導教諭・木村 七帆子
  福岡県公立小学校教諭・村上 恵梨
監修/文部科学省教科調査官・有本 淳
  福岡県公立小学校校長・下田 秀司
  福岡県公立小学校教頭・林 謙吾

単元の目標

人の発生についての資料を活用する中で、胎児の様子に着目して、時間の経過と関係付けて、動物の発生や成長を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成することをねらいとなります。

学習指導要領では、次のことを理解するようにすることが示されています。

ア(イ)人は、母胎内で成長して生まれること。

子供が問題解決の活動を通して、上のア(イ)を理解するように指導しましょう。また、その過程において、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を育成しましょう。

単元展開

総時数 8時間


この単元までに、子供は植物の発芽や成長の条件についての実験を行ったり、メダカの誕生について卵を観察したりして調べてきています。しかし、この単元で対象となるのは、母胎内の胎児であるため、直接観察することが困難です。そこで、必要に応じて、エコー写真や成長を記録した写真資料、また、映像資料や模型などを活用しながら、胎児に着目して問題解決していきましょう。
例1:エコー写真

例2:赤ちゃんの大きさモデル

第1次 胎児の母胎内での様子や成長を予想し、学習の見通しをもつ

 胎児の成長の様子を予想し、考えを交流する。


単元の導入では、これまで学習してきた「生命のつながり」を振り返り、植物やメダカの成長について調べて分かったことや、自分自身が経験してきたことを基にしながら、母胎内の胎児の成長の様子についての考えを交流することで問題を見いだしていきましょう。

 見いだした問題や気付きを基に学習計画を立てる。


人の命が受精卵から始まることを伝え、メダカのたんじょうと関係付けて考えられるようにすることで、共通性・多様性の視点で事象を捉えることができるようにします。
そこで、メダカと人の受精卵の育ちのイラストを並べて掲示すると、比較したり関係付けたりして考えやすくなります。
また、人の受精卵は0.1㎜です。これは、メダカのたまごの約10分の1の大きさしかありません。黒い画用紙に針の先端を差し込み、光に透かして下からのぞくと見える穴の大きさが大体0.1㎜になります。子供たちに提示すると、その大きさを体感することができます。そして、メダカよりはるかに大きくなる人は、受精の段階ではメダカより小さいことに気付くことができます。

第2次 胎児の母胎内での成長について調べる(授業の詳細)

 胎児の母胎内での体の変化について調べる。

 養分や呼吸の様子について調べる。

 羊水の役割について調べる。 

 胎児の母胎内での成長についてまとめる。

第3次 胎児の母胎内でも成長について考えを交流する

 胎児の母胎内での成長について調べたことを基に、発表資料などを準備する。

 それぞれ調べたことを発表し、友達と考えを交流する。

授業の詳細

第2次 胎児の母胎内での成長について調べる

①問題を見いだす【自然事象との出会い】


受精卵の写真(イラスト)と、生まれたての赤ちゃんの写真(イラスト) を提示し、その間にどのような成長があるのかを絵や文章、言葉で予想を表現できるようにしましょう。それを伝え合うことで、今後、調べたいことを焦点化していきましょう。

メタガは学習したので、どのように成長したのか確認していきましょう。

人の卵はメダカの卵と比べてとても小さかったね。お母さんのお腹の中でどうやって成長しているのだろう。


赤ちゃんは、母親のお腹の中で、どのように成長して生まれてくるのだろう。

②予想する

メダカと同じで、受精卵の中で少しずつ変化して赤ちゃんの姿になっていくんじゃないのかな?

メダより大きくなるんだから、生まれるまでには時間がかかるんじゃないかな。

③解決方法を考える


詳しく観察したい視点を明確にもてるようにしましょう。「大きさ」や「時間的な変化」に着目して、メダカの成長と比較しながら観察できるようにしましょう。

保健室に赤ちゃんの人形があったね。保健室の先生に聞いてみよう。

図鑑やインターネットなどを使ったら調べられるね。

④観察・実験をする


羊水について考えるモデル実験をすることで、羊水の胎児を守る働きを、実感を伴って理解することができます。
(例1)ビニール袋に人形などを入れ、子宮の中の胎児モデルを作り、羊水の代わりに水を入れた場合と空気だけの場合で外からの衝撃の加わり方を比較します。

(例2)ビーカーの中に胎児に見立てたブロックと羊水に見立てた水を入れて振ることで、胎内を再現します。ビーカーの中を水で満たした場合と、水を減らした場合のブロックの様子を比較します。

月齢に応じた写真やモデルを観察し、胎児の形や大きさなどを調べる。
子宮の様子を調べ、へその緒や羊水、たいばんなどの働きを確かめる。


本やインターネットで調べる際、情報量が多すぎたり、解説や用語が難しすぎたりするため、何をどこまで記録してよいか分からなくなる場合があります。そのような場合は、教科書を参考にして「受精卵」「羊水」「たいばん」「へそのお」などのキーワードに絞って調べるとよいことを伝えるとよいでしょう。

安全指導

本単元は、「人権尊重」の視点を明確にもち、特に人の成長には個人差があることに十分留意して指導する必要があります。具体的には、誕生のときの身長や体重には差があり、出産までの日数にも差があることなどがあります。身長や体重に差があっても元気に育っていることなどを取り上げて、個人差によって子供の心が傷つくことが決してないように配慮することが大切です。


グループごとにまとめたシートやノートなどを発表し合い、メダカの誕生と人の誕生の違いや共通点について話し合うことができるようにしましょう。

メダカと同じように、受精卵から成長するんだね。でも、生まれるまでの時間は全然違ったね。

メダカと違って、人は母親から成長に必要な養分をもらっていたよ。

⑦結論を出す


胎児は、約38週間、母親の子宮の中で育つ。子宮の中の胎児は、羊水や子宮に守られながら、たいばんとへその緒を通して母親から養分をもらい、成長して生まれてくる。

⑧振り返る


妊婦さんが生活でどのように苦労しているかを、子供が学習内で気付くことは難しいです。そこで、妊婦体験ジャケットを子供が着用し、立つ、座る、寝るなどの日常的な活動であっても妊婦には大変だと思われる動作を体験してみてもよいでしょう。その際、ただそのような動作をするのではなく、お腹の中に命が入っていることを意識できるようにすることで、妊婦の大変さをより深く理解し、生命を尊重する態度を育成できます。

赤ちゃん(人)が生まれるまで、38週間もお母さんはお腹の中で大切に育てているんだね。

メダカは卵の中の養分で成長していたけど、人は母親から成長に必要な養分をもらってお腹の中で成長しているんだね。

その他のポイント

地域の実態に応じて、博物館や産婦人科と連携した学習活動ができます。また、お母さんや赤ちゃんと直接学ぶことができる団体もあり、直接お母さんから話を聞くことができます。

イラスト/難波孝

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