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子どもたちを変える!魔法の音読指導

2019/9/16

日々の音読がいつの間にか惰性化し、易きに流れていませんか? 身体を使って音読する「あいうえ音読」などの実践で知られる佐藤隆史先生の音読指導を手本にすれば、子どもたちの音読表現が劇的に変わるはずです!

執筆/兵庫県尼崎市立公立小学校教諭 佐藤隆史

国語 音読指導

全員参加できる! 様々な方法でできる! 

毎日の授業で取り入れている「音読活動」。その「良さ」とはなんでしょう。それは、全員参加が実現できるということです。

音読は声さえ出すことができれば、全員が授業の土俵に上がることができます。字が読めない子も、耳で聞いて音読できます。学級全員で声を揃えて読んだり、グループで教え合ってリレー読みをしたり、ペアで交代読みをしたり、一人ずつ自分の音読を聞いてもらったりと、様々な方法で飽きることなく全員が参加できるのです。そして、音読活動は一人ひとりの向上や、学級としての成長を実感できる、古くから取り入れられてきた日本の素晴らしい学習方法の一つなのです。

みなさんは、日々の授業の中で「工夫して音読しよう」というめあてなのに、棒読みの音読で終わっていたり、「語のまとまりや、響きに気を付けて」というめあてなのに、目の前の子どもたちは、ただ声に出して読んでいるだけだったりしませんか。

もしかするとそれは、「工夫する」ということや、「響きに気を付けて」ということが、はっきりと分かっていないからではないでしょうか。いろいろなめあてを持って日々の授業を展開していく中で、私たち教師は子どもたちを「変えて」いかねばなりません。1時間の授業で「これができるようになった」「新しいことが分かった」という「向上的な」「変容」を実現させたいと願っているはずです。

そこで、教室での音読の授業が活気づき、子どもたちが「変容」していく、音読指導の「魔法の杖」を授けましょう。

魔法の杖1
追い読み(連れ読み)の真髄~「意識」

まず一つ目は、どこの教室でもきっとやっている「追い読み」です。句点や、読点ごとに教師が読み、そのあとに子ども(たち)が追いかけて音読する方法ですが、この追い読み、「やっているだけ」になってはいませんか? 今、この追い読みの活動をするのは何のためなのか。どんな意図を持ってやっているのかを意識することが、第一の魔法の杖になります。「何だそんなことか。そんなことで魔法と言えるの?」と思ったかもしれませんが、この「意識する」「(子どもに)意識させる」ことが真髄なのです。

それがない授業は、ただやっているだけの「アリバイ作りの授業」でしかありません。

国語 追い読み

単元の最初、中盤、終盤といった「時期」によって教師の意図は変化していかねばなりません。導入の時期の追い読みは、目の前の文章をゆっくりでもいいから正確に音読できることが目標になります。漢字が出てきたら確実に読む。苦手な子どもには、鉛筆で読み仮名を薄く書いてあげます。「読めるようになったら、消してね」と言っておきます。

読むことが苦手な子どもには、必ず教科書の文字を指で押さえながら、「指たどり読み」をさせます。低学年の子どもたちは、耳で聞いてすぐに覚えてしまう子どもがたくさんいます。目の前の書いてある言葉や文章を見て、それを確実に音読させるには、指で今どの言葉を音読しているのかを、はっきりさせることが大切です。大切な言葉や、読みにくい文章などは、二度三度繰り返して読みます。その時にも指で繰り返し押さえてたどらせます。初期の音読活動に必須のことです。

ある程度読めるようになった中盤には「スラスラ追い読み」に入っていきます。「先生の読む速さと同じ速さで音読しましょう」と言って、少しずつ速さを上げていきます。

全員で読んだ後には、教師と子ども一対一で追い読みをします。ここで一人一人が音読できているのかをチェックしていくのです。一人一人の音読力を測っていくことを意識します。分かち書きにとらわれない、自然で正確な言葉のまとまりを意識して、教師は見本を示していき、子どもたちが追いかけて音読します。

子どもたちの声や「読み方」にアンテナを研ぎ澄ませ、「正確に」「スラスラと」音読できるように何度も繰り返します。私が最近若い先生の「追い読み」音読活動を見て感じるのは、「できていない時に、できるまで繰り返させる」ことが弱いことです。ズバリ、「意識」が足りないのです。このことを実現させるには、教師自身が「正確に」「スラスラと」音読できなくてはなりません。この練習をせずして子どもの前に立つことはなりません。音読の名人ならいざ知らず、いくら魔法の杖を発動させても練習していないのに見本は示せませんから。

終盤の追い読みの真髄は、多彩で多様な音読の工夫の仕方をやってみせることです。技術(スキル)を示範し、やらせてみます。教師がいくつかの工夫の仕方を示して、「自分の読みたい工夫で音読しよう」と、子ども自身に判断・選択させると主体的になります。

さて、その「音読の工夫」ですが、皆さんはどれくらいの工夫をやって見せることができますか? 私は、一つの文章で10種類の読み方を考えて授業に臨みます。では、工夫の「魔法の杖」を次項で伝授いたしましょう。

魔法の杖2
工夫の真髄~「ハイブリッド音読」

音読の音声表現としての「工夫」は、以下の項目を組み合わせることで実現できます。

◆ 強弱
◆ 高低
◆ 速さ
◆ 間
◆ 声色

まずは、それぞれの要素を取り出して、教師がやってみせた後、子どもたちにやらせます。

その際、音読する言葉や文章、作品の世界やイメージを存分に一人一人の頭の中に広げておくことが大切です。また、何度もいろいろと試してみながら、一番ピッタリくる表現としての工夫を見つけるように助言してあげます。

中には頭の中にイメージを広げられない子どももいるかもしれません。いろいろな工夫の要素を組み合わせて、ハイブリッドな表現にしていくために「問答法」を取り入れます。

「空に浮かんでいるその雲は、ふわふわしているの? どっかりと重たそうなの?」とか、「どれくらいの力を出して引っ張っているのかな?」と、問いかけながらイメージを膨らませて、それを自由に表現させます。

「登場人物が思っている言葉だから強く音読します」と言った工夫は、普通に授業で行われていますが、そこに「言葉の速さ」「言葉と言葉の間」や「文と文の間」「硬い声」や「柔らかい声」といった、他の要素もかけ合わせることで、より表現の幅が広がっていきます。1種類の工夫ではなく、いくつかをかけ合わせるのが魔法になるのです。

子ども一人一人個別の工夫が基本ですが、班などのグループで一人一要素ずつリレー読みしながらハイブリッドしていくことも盛り上がります。一人目が強弱をつけた音読をしたあと、二人目が音の高さを変えて組み合わせていきます。5人一組で音読表現を作り上げていくのです。

最後に発表会風に1班ずつ立って、一文音読をハイブリッドしていきます。それを他の班が聞き合います。一つの班が作り上げたハイブリッド音読を、今度はそっくり全員が真似て一斉音読をします。一斉音読と班の音読の交代形式、そして、一人ひとりが作ったハイブリッド音読をリレー形式で一気に発表していき、一人ひとりの表現の工夫の違いに気付かせる仕掛けをするのです。

ハイブリッド音読リレー

何をおいても工夫の五つの要素が使えなくては話になりません。いきなり文章を用いての工夫が難しそうなら、「あいさつハイブリッド」から取り組んでみてはいかがでしょうか。

「おはようございます」という挨拶の言葉をゆっくり、早口、高い声、低い声、音程をつけたり・・・、「おーはようごーざいます」「おーはーよーーごーざーいーまーすー」「おっはよう、ごっざいっまっすっ!」・・・と、いろいろな言い方を、まずは教師から言って、後を追わせます。毎日必ず音声表現をする挨拶で、基本の技術を身に付けていくわけです。これが身に付けば、「ハイブリッド音読」魔法の杖が威力を発揮すること間違いなしです。

魔法の杖3
反復・継続の真髄~「変化」

何度も「繰り返す」ことで子どもたちは「できる」ようになります。「分かって」きます。特に魔法のような音読技術を使わなくても、継続して声に出して読むことに取り組んでいくだけで、音読の力はそこそこ向上していくものです。ただ、同じことを繰り返してばかりだと、やはり飽きてきます。飽きるということは「主体性」から離れていくことです。そこで、ほんの少しの「変化」を伴った反復にしてやると飽きがきません。これが三つ目の魔法の杖です。

① 表現の変化

・強弱
・高低 
・緩急(速さ) 
・間(溜め) 
・声色
・身体表現

② 形態の変化

・一人で(一人ずつ)
・全員で
・ペアで 
・グループで
・ランダムに

③ 方法の変化

・一斉読み   
・交代(交互)読み
・繰り返し読み
・役割読み
・リレー読み 
・ダウト読み(間違い探し)

④ 場所の変化

・席に座って
・立って動きながら
・教室の前方に集合する
・広い場所で円をつくって座る

⑤ 時の変化

・朝の会で 
・授業のはじめに
・授業の終わりに
・一日の終わりに
・タイムトライアル

この①~⑤を少しずつ組み合わせて、活動に変化をつけていきます。

教師が自ら読み方を変化させて追い読みをさせることを基本に、表現力がある子を一人選んで教師の代わりをしてもらうのもよいでしょう。その子と全員の追い読みや、文章を句読点で交互読みをしたり、教室の前方に集めて読み聞かせをするように、一人が全員の前に立ちスポットを浴びながらリードしていくのはどうですか。

国語 追い読み

一人ずつのリレー読みも、「次の人に語りかけるように、少し視線を送りながら」とか、「前の人が読む速さと同じ速さで」「前の人と全く違う速さで」というような指示を出して、やっているうちに、だんだん子どもたちが自分たちで変化をつけることができるようになることを目指していきます。いつも教師が指示を出すばかりでは、主体的な活動になっていきません。

子どもたちは「ダウト読み」が大好きです。わざと間違えて読み、クイズのように間違った箇所を当ててもらう方法です。教師がまずやってみせ、出題する子ども一人対全員という形態から、ペアでの対話形式、班対抗の形態へと変化をつけていきます。子どもたちはどんどん主体的になっていき、そのうち司会をやりたいという子が出てきます。「ダウト読み大会を開いていいですか」と、どんどん自分たちで発展させていくのが子どもたちの力です。そんな力が引き出せるのがこの「第三の魔法」なのです。

魔法の杖4
言葉遊びの真髄~「からだことば」

この度の新学習指導要領小学校国語には「言葉遊びを通して、言葉の豊かさに気付く」と明記されました(内容<知識及び技能>(3)-イ)。

学習指導要領にはっきりと「言葉遊びを通して」と記されていますので、低学年のうちに存分に言葉遊びを取り入れていきたいものです。教師は頭のよい、賢い人が多いので、なかなか「遊び」のゾーンに入っていかず、どうしても「学習」「勉強」というところに留まってしまいがちです。言葉で「遊ぶ」のですから、思いっきりエンターテインメントすべきです。最後の魔法の杖は、身体ごと表現する「からだことば」で言葉遊びをエンターテインメント化していく技を伝授しましょう。

谷川俊太郎の「ことばあそびうた」が教科書にも出てきます。これを、「読解」してしまうとそれは「あたまことば」になってしまいます。「いるかは何匹いますか」とか、「かっぱはなぜらっぱをかっぱらったのでしょうか」という発問を私たち教師はしがちです。そんなこと、一切しないで、「かっぱかっぱらった」「かっぱらっぱらっぱぱっららったらったら~~たった」と言葉を繰り返したり、崩したり、違う言葉に変えてみたり、踊りながら音読したり、変な顔で言ってみたり・・・。と、自由自在に声に出して徹頭徹尾楽しむ、エンターテインメントしていくことが「からだことば」の魔法なのです。

私たち大人(教師)は、つい意味にとらわれてしまいますが、「からだことば」では、意味や文脈を無視します。言葉そのものの持つ語感やエネルギーをそのまま表現するのです。これはある意味「バカになる」という高等技術です。ひらめいたことを瞬間的にやってみましょう。

「正しい」とか「正しくない」という世界から脱するのです。言葉遊び(的なもの)を読む時は、誰が正しいとか、誰の読み方がよいということは一切なしにします。友達の表現をただただ聞き入って、「違うことがいいね」という授業にするのです。「言葉遊びなんだから、面白く遊べば遊ぶほど、言葉は喜んでくれるよね!」と、言ってしまってよいのです。

にわとりが会話しているような擬音だけで作ってみた、こんな言葉遊びはいかがでしょう

◆ コケコッ語   さとうたかし ◆

コケッコ コココ ケココッコ
コココ ケコケコ ケココッコ
コケッコ ケッコ ココケッコ

ココココ コケコ コケコッコ
コケッ コケ~ッコ コケコッコ
コッケコ ケッココ コケコッコ

子どもに「どう音読させるか」「どう教えるか」ということよりも、まず先生方が「面白い!」と感じ、子どもたちと存分に楽しんでみたいと思うかどうかです。私たち大人は言葉を「面白がる」ことができなくなっていないでしょうか。感じる心が錆びついていないでしょうか。頭で考えた「あたまことば」ではなく、身体全体で感じて表現する「からだことば」で、子どもたちと面白がることができるかどうかは、子どもと一緒に「バカになれるか」どうかです。そして、子どもたちにかける魔法の言葉は、「面白がるだけでいいんだよ」です。若い先生ならぜひとも挑戦し、新たな子どもたちの変容を目にしてもらいたいものです。


イラスト/コダシマアコ

『教育技術 小一小二』2019年9月号より

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