ギフテッドのためのフリースペース「ギフ寺」とは【ギフテッドシンポジウム in 鹿児島 #4】 

前回までは、ギフテッドを支える大人の声でした。今回は、ギフテッドの子どもたちの声や様子の講演です。不登校になってしまうことも多い彼らは、どんなことを考えているのでしょうか?

ギフテッドのスペース「ギフ寺」の住職こと小泉先生の講演風景

取材・執筆/楢戸ひかる

フテッドのスペース「ギフ寺」

札幌でギフテッドのためのフリースペース「ギフ寺」を運営する小泉雅彦先生は、こんなことを言い続けています。

遊び相手として選んでもらわないことには、援助のスタートラインに立てない 。

そんな姿勢で子どもたちと関わる小泉先生のところには、「子どもの本音」が集まってくるのでしょう。「ギフテッドが描く個別最適な学びと協働的な学び~ギフ寺の子ども視点~」と題した、講演です。

ギフ寺は、源泉かけ流しの温泉

小泉先生は、「ギフ寺のスペースは、『源泉かけ流しの温泉』という表現を使っています」と、言います。

私の役割は、足すことも引くこともなく適切な温度を維持する湯守です。子どもたちは、のんびり効能あらたかな温泉に浸かりながらリフレッシュして帰っていきます。いつか、新たな居場所を見つけるまで役割は続くのかと思います

『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』(片桐正敏・編著/小学館)抜粋

子どもたちと小泉先生が話している様子が目に浮かぶようですね…。

子ども視点:なぜ学校にフィットしないか

ギフ寺という「温泉」に浸かりながら、子どもたちがポロっと語った言葉は、こんな感じだそうです。

親の気持ちも分かるし、先生の考えていることは分かるけれど…。

  • 学校には自由がない、学校では話が通じない
  • 学校に行くことを考えるとつらくなる
  • 学校に行く意味が見出せない、授業がつまらない
  • クラスがうるさい

(小泉先生発表資料より筆者抜粋)

知的ギフテッドのアセスメントと認知的特性

小泉先生は、子どもたちの気持ちを、こんなふうに「通訳」してくれました。

彼らは学校に適応する能力がないのではなく、学校のシステム自体や学習の大半が面倒くさいのです。この『面倒くさい』を理解するためには、ギフテッドの認知的特性を理解しておくことが、とても重要です

認知的特性とは、文字通り、「認知 =  何かを認識・理解する心の働き」の特性 です。通常学級での一斉指導は、いわゆる「ふつう」を基準に組み立てられているので、認知の凸□デコ・タイラ(タイラは『ふつう』の状態)があると、合致しづらい部分も出てきます。

ギフテッドの最も優れた能力は類推能力であり,嫌いなのが単純作業になります。学校では、彼らの高い能力は「不完全燃焼」を起こし、ドリルや反復学習は「面倒くさい」と感じます。

「ギフテッドの認知的特性」と「不完全燃焼」は、ギフテッドの登校渋りや不登校を理解し、手立てを打つためのキーワードだと感じます。

今回の講演の小泉先生の持ち時間は、18分で、ギフテッドの認知的特性を詳しくご説明いただくには時間が短すぎました…。

ギフテッドの認知的特性については、佐賀大学に提出した共同研究の論文「「WISC-IVを用いた知的ギフテッドのアセスメントと認知的特性の臨床的検討」を参照してくださいとのことです。

ギフ寺のフリースクール

ギフ寺では、フリースクールもしています。

筆者はギフ寺に行ったことがありますが、子ども達は自分を守る最終手段として不登校を選択しているように感じました。 「学校に行けない・行かない自分」に対して、もちろん葛藤もあるようです。

不登校に対して、罪悪感を感じている子どもは多いです。その子たちの気持ちが少しは楽になるのなら、フリースクールをする意味はあるのかなという感じで始めました。

子ども視点 個別の最適化協働学習

子どもたちは、フリースクールがある日は、自分で決めた学びをしています。学校の授業では扱わないような内容もありますが、学校の授業に関連する勉強もしています

【個別学習&協働学習】

  • 呪術にも使われたルーン文字の解説
  • UFO、宇宙人研究、未確認生物調べ
  • タロット占い
  • 小説
  • Gifト Café(後述)の準備

【自分で決めてそれなりに勉強】

  • 英検準2級、3級
  • 漢字検定3級
  • 数検

子ども視点 協働学習【Gifト Café】

ある日、子どもたちからこんな声があがりました。

カフェをやってみたい!

子どもたちの声を受けて、小泉先生は子どもたちに話をします。

・なるべく口は出しません
・保護者の力は借りません
・協力して取り組んで
・財源はカフェの利益で回します

こうして、2021年秋、「ハロウィンカフェ」のプロジェクトが始動しました。

ハロウィーンカフェの準備は10月からスタートして、4週間くらいをかけました。 その間、毎週、家でカフェで提供するスィーツの試作品を作ってくる子、カフェの装飾づくりを家で黙々としてくる子もいました。

準備を始めた当初は、カフェで提供するメニューが「夢のようなメニュー」だったんです。 けれども、最終的には、自分たちで現実的なメニューに絞り込めたんですよね 。

「カフェの運営は、保護者の力は絶対に借りないよ」と話をしていたので、当日は子どもたちで運営しました。

お客様アンケートや、メニュー表も自分たちで考えて作ってきました

子どもたちの姿を見ながら、小泉先生は、こんな気持ちになりました。

これこそ、協働学習なんだろうなぁ

その間、オンラインセミナーの3回目に登壇したギフ寺副住職(当時・中学3年生)の高校の合格祝いに、自分で進んでケーキを焼いてくる子などもいました。協働学習の選択肢の中に「料理をする」があることが、コミュニティの育ちにも一役買っていそうです。

Gifト Caféに取り組んで

小泉先生からGifト Café の様子も教えてもらいました。

  • ハロウィンとクリスマスの2回実施
  • 関係者30名ほどが来店
  • 前夜にお客様アンケートや注文表を作った →寝不足→一杯一杯になりその場にいられなくなる子もいた→途中で店員不足に

もちろん、うまくいかない部分もありました。その点については、アンケートで振り返りをし、自分たちで後日評価点と改善点をまとめてギフ寺のクラスルームに送ってきました。

学校で行う日常の振り返りは嫌いなのに、 Gifト Café の振り返りは、子ども達が自主的にやっていました。

子ども視点 :【Gifト Café】振り返りから

  • 外待ちのお客様が多くなる ⇒ 外での販売、テイクアウト、整理券、メニューを見てもらう
  • メニューがイメージしづらい ⇒ イラストや写真などでメニュー表を作る、POP
  • Gifト Caféにしかない特徴サービスも作る? ⇒QRコードを読み込むと、特別なYou Tubeチャンネルが見れる的な? お手紙? 折り紙?
  • 素手で作業している ⇒ ビニール手袋を用意

「素手で作業をしているのは、どうなの?」という振り返りをもとに、ビニール手袋を用意することにし、次の年に子どもが食品衛生管理責任者の講習を受けることになりました

お客様アンケートをもとに、端末に「メニューの注文と会計システムが合わさったソフト」を、子どもが入れました

小泉先生が発表する「Gifト Caféの取り組み」の完成度の高さに、筆者は感嘆しました。

シンポジウムの模様は、アーカイブをご覧いただけます。 動画はこちら
※ 「Gifト Caféの取り組み」 の話は2:11:43~あたりです。

子どもは、やらされることを求めていない

小泉先生は、こう言います。

子どもたちは、カフェの名前を『Gif Café』と、名付けました。どんな気持ちなのでしょうか? 

彼らは自分たちで選択をしたら、責任を持ってやってくれる人たちです。それは、彼らのGifト Caféの運営の仕方を見ていて思いました。子どもたちは、自分たちで学びを選択したい人達なんです。

個別最適な学びと協働的な学びがなにか? は、子どもが自分で決めることなのではないでしょうか?

「大人の役割ってなんだろう?」と、小泉先生は講演の最後を「問い」で締めくくっていました。そんな問いを自分に向けることができる大人になることが、ひとまずの目標なのかもしれません。

小泉雅彦(こいずみまさひこ)
ギフテッド・L発達援助センター主宰。ギフ寺住職。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位修得退学。専門は特別支援教育、認知心理学。

「ギフテッドシンポジウム in 鹿児島」レポート記事(全5回)
第1回 日本社会がギフテッドを受容するための課題とは
第2回 ギフテッドと発達障害を見分けるポイント
第3回 ギフテッドの特徴「過度激動」を理解するポイント

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