成長が早い人の共通点とは? 若手教員と「ロールモデル」について
人は、何の手がかりもないところから伸びていくのは難しいものです。スポーツでも、芸事でも、上達の早い人にはたいてい「この人のようになりたい」と思える存在=ロールモデルがあります。教員の仕事も同じです。授業、学級経営、保護者対応と、仕事の内容が多岐にわたり、いずれの場面でも正解が一つではありませんから、「行動や考え方の模範となる人物」を設定し、まずは真似をしてみることから始めると、確実な学びと成長につながります。今回は、そんなロールモデルのよさをご紹介していきます。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

目次
早く伸びる人の共通点
若い頃、ある授業名人の公開授業を見て、衝撃を受けたことがあります。板書の一行で視線が集まり、問いかけの一言で教室の空気が変わる。その鮮やかさに圧倒されました。それ以来、わたしはその実践を何度も真似しました。気づけば、その方は自分にとって特別な存在になっていました。
教職は、覚えることが多く、難しい判断を求められる場面も尽きません。だからこそ、成長の初期には「誰を見て学ぶか」が大きな意味を持ちます。
尊敬できる先輩、影響を受けた実践家、考え方に共感した教育者。そんな手本となる存在が、ロールモデルです。
管理職の立場で若手教員を見ていると、早く伸びる人には共通点があります。それは、「あの方の授業を見て勉強になった」「あの先輩の言葉かけを取り入れてみたい」と、学びの対象が具体的だということです。
ロールモデルを持つと、成長はどう変わる
ロールモデルを持つことには、大きな意味があります。5つに分けてご紹介します。
1 目標が具体的になる
「よい教員になりたい」と思うだけでは、前へ進みにくいものです。何を目指せばよいのかが曖昧だからです。
しかし、「あの方のように発問を工夫したい」「あの先輩のように落ち着いた学級をつくりたい」と目標が具体化すると、今日やるべきことが見えてきます。
授業記録を取る。
板書を見直す。
言葉かけをメモする。
一日を振り返る。
実践を整理する。
教材のことを考える。
こうした小さな行動が積み重なり、力になっていきます。伸びる人は、やる気だけで進んでいるのではありません。努力の向け先がはっきりしているのです。
2 遠回りが減る
教職には、先人が積み上げてきた知恵があります。
うまくいく授業の流れ。
学級が落ち着く言葉の選び方。
保護者との関係をこじらせにくい伝え方。
そうしたものは、長い実践の中で磨かれてきました。
もちろん、若手教員の試行錯誤そのものも大切な学びです。ただ、すべてを自己流で乗り切ろうとすると、必要以上に遠回りをすることがあります。
先に歩いてきた人の実践を学ぶことは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、先人の知恵を借りながら、自分の歩幅で前へ進む賢さだと言えるでしょう。
3 苦しいときの支えになる
教職には、うまくいく日ばかりではありません。
授業が空回りする日もあります。伝えたつもりのことが伝わらず、落ち込む日もあります。学級の空気が重く感じられる日もあるでしょう。
そんなとき、ロールモデルがある人は強いです。
「あの人なら、こんなときどうするだろう」と、自分の中にもう一つの視点を作り、自分との対話によって具体的に解決策を考えることができるからです。
ロールモデルは、単なるお手本ではありません。迷ったときに立ち返ることのできる、心の座標軸のような存在でもあります。
4 将来の姿が見えやすくなる
若いうちは、十年後、二十年後の自分を思い描きにくいものです。
このまま仕事を続けて、自分はどんな実践者になれるのだろう。そんな不安を抱くこともあります。
でも、年齢を重ねた先輩の姿に魅力を感じられると、将来への見通しが生まれます。
授業で信頼を得ている人。穏やかな語り口で集団を支えている人。保護者や地域との関係づくりがうまい人。学校全体を落ち着かせている管理職。
そうした姿は、あなたの未来図に具体的なイメージを与えてくれます。ロールモデルは、今の努力と未来の自分をつなぐ橋でもあるのです。
5 不安が和らぐ
教育には、算数の問題のような「これこそが正しい」という唯一の答えがありません。
だからこそ、迷いが生まれます。この指導でよかったのか。もっと別の言い方があったのではないか。そう問い直す場面は、日常の中にいくつもあります。
そんなとき、信頼できる手本があると、「この方向で大きくは間違っていない」と思えることがあります。
もちろん、誰かのやり方をそのまま当てはめればよいわけではありません。それでも、実践を参照できる基準があることは、大きな安心につながります。
教職は、ときに孤独になりやすい仕事です。
だからこそ、学ぶ相手の存在が不安を和らげてくれるのです。
